風吹く豆腐屋

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「蜜柑むき」

2010-03-28 23:05:35 | Weblog
村上春樹の短編に、パントマイムを勉強している女の子が登場する話があります。

その女の子が披露してくれたのは「蜜柑むき」でした。
主人公はその巧みさに感心し、才能があると褒めます。


「あら、こんなの簡単よ。才能でもなんでもないのよ。
要するにね、そこに蜜柑があると思い込むんじゃなくて、
そこに蜜柑がないことを忘れればいいのよ。それだけ」



ちょっと印象的な一節じゃありませんか?
この前、新聞のコラムで川上未映子もこの話を取り上げていました。
ほかの作家に与える影響力も強いんだろうなぁ・・。

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話が変わりますが、今手元に吉野家のたまご無料クーポンがあります。

期限が3月で切れてしまうので、早く使ってしまおうとさっき行ってきました。
(牛丼と卵の組み合わせ、結構おいしいですよね?)
ところが、うっかりして卵を注文し忘れてしまいました。
卵を注文したときに初めてその分の料金を無料にできるクーポンなので、これでは使えません。

本末転倒とはこういうことを言うのでしょう・・

牛丼が出てきたときにようやくそれに気づきましたが、追加注文しませんでした。
バイトの女の子煩わせるのもなんか悪い気がしたし、
まだ3月が終わるまでに数日あるしなぁ、と思って。


ただ、食べ終わった空の器を見て思いました。

本来、そこには卵があったはずでした。
でも、食べ終わった容器からは、それが牛丼+卵だったのか牛丼単品だったのか分かりません。
見た目にそう大きな差があるわけではないから。

・・じゃあ、そこに卵がなかったことを忘れられないだろうか。
蜜柑がないことを忘れてしまったその女の子のように。
そうすれば、使ったはずのクーポンが財布に入っているのをみて、
なんか得した気分になれるかもしれない・・

 

・・そんなことを考えました。
たった50円分のクーポンをめぐって。




考え終わった後で、一体どんだけ自分はケチなのかと、少々自己嫌悪に陥りました。