アフガン・イラク・北朝鮮と日本

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イージス艦衝突事故で問われる日本の民度

2008年02月25日 09時37分11秒 | 戦争・改憲よりも平和・人権
・イージス艦事故:船の進路は?あたご乗組員は「緑灯視認」(毎日新聞)
 http://mainichi.jp/select/jiken/atagocollision/news/20080220k0000m040184000c.html
・漁協側が会見、自衛隊側説明に反論(TBS)
 http://news.tbs.co.jp/20080221/newseye/tbs_newseye3785551.html
・イージス艦の回避義務濃厚 漁船左舷を直撃 海保調査(朝日新聞)
 http://www.asahi.com/special/080219/TKY200802210357.html
・事故状況説明図
 朝日新聞によるもの
 http://www.asahi.com/special/080219/080222a.html
 毎日新聞によるもの(記事添付画像)
 http://mainichi.jp/select/jiken/graph/atagograph0802/5.html
・海上交通のルールとイージス艦事故(チラシの裏にでも書いとけ)
 http://writeinthebackofads.seesaa.net/article/85291376.html
・イージス艦事故:衝突の12分前、清徳丸の灯火を視認(毎日新聞)
 http://mainichi.jp/select/jiken/atagocollision/news/20080221k0000m040104000c.html
・イージス艦 混雑海域、なぜ自動航行?(朝日新聞)
 http://www.asahi.com/national/update/0223/TKY200802220333.html?ref=rss
・複数の乗組員「よく覚えていない」(TBS)
 http://news.tbs.co.jp/20080222/newseye/tbs_newseye3786671.html
・イージス艦事故:不明の哲大さん、野宿者支援に魚届け続け(毎日新聞)
 http://mainichi.jp/select/jiken/atagocollision/news/20080221k0000m040172000c.html
・「クライン孝子の日記」2008年02月21日付エントリー
 「軍艦の前をちょろちょろした方が悪いのでは!」
 http://www2.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=119209&log=20080221

 2月19日に千葉県野島崎沖で起こった海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故ですが、これはどう考えても、「あたご」側に事故の主たる責任があるのは明らかでしょう。ここで改めて事故の概要について、添付画像の図解も参考にしながら確認しておきます。

(1) 事故は「あたご」が「清徳丸」の左舷にぶつかって起こりました。「清徳丸」の船体が左舷側から真っ二つに割れて沈んだのが、その何よりの証拠です。海上衝突予防法では、自船の右舷側に相手船の存在を確認した方が、右に針路を回避する事になっています。今回の場合は、「あたご」から見て右舷側の位置に「清徳丸」が航行していたのですから、回避措置を取るべきなのは「あたご」の方でした。

(2) しかし「あたご」は右に針路を回避しませんでした。だから「清徳丸」僚船の「金平丸」は、「あたご」がそのまま直進してきたのに驚いて、当初左に避けようとしていたのを慌てて右に避け直したのです。そして「清徳丸」は、左に避けようとした事で却って「あたご」と衝突してしまったのです。

(3) 「あたご」側が衝突直前に見たと主張している「清徳丸」の右舷灯(緑灯)についても、その信憑性に疑問が投げかけられています。両者の位置関係からすれば、「あたご」から見えていたのは、本来「清徳丸」の右舷灯ではなく左舷灯(赤灯)だったと考える方が、遥かに理に適うからです。この証言を巡っては、「あたご」側が意図的に嘘をついているか、若しくは他の僚船の緑灯を「清徳丸」のものと誤認しているかの、どちらかではないかという疑いが、漁船団の方から投げかけられています。

(4) その他にも、当初衝突2分前に初めて「清徳丸」の存在を確認したとされていたのが、実際は少なくとも12分前には確認していた事や、千葉県野島崎沖という海上の難所を自動操舵(自動運転)で航行していた事もマスコミで報道されて初めて明らかになるなど、総じて自衛隊・防衛省側の証言の方に齟齬が目立ち、証言内容も二転三転しています。

 以上がこの事故の大まかな構図です。これでは誰が見ても、自衛隊・防衛省側の方に、より大きな過失があるのは明らかでしょう。しかし世の中には、この程度の常識すら持ち合わせていない人が少なくない様なのです。この期に及んでもまだ「自衛隊は何も悪くは無い、悪いのは軍艦の前をちょろちょろ航行していた漁船の方だ」なんて事を堂々とネットで言い募る人が居るのですから。
 この人の理屈によれば、「自衛隊は国防という大任務を負っているのだから、漁船の方が文句なしに道を譲るべき」なのだそうです。しかも何と江戸時代の参勤交代の例まで持ち出してきて、「お殿様が一番偉いのだから大名行列に道を譲るのは当然だ」なんて事まで言い出すに至っては、もう開いた口が塞がりません。この人の人権感覚はもう封建時代のそれと全く同じです。
 他にもまあ「漁船の横暴」とか、言っている事が余りにも酷すぎる。同じ事を行方不明になった漁師のご家族の前でも言えるのか。その漁師さんはその人が言われるような横暴な人物でない事は、上記の毎日新聞「野宿者支援に魚届け続け」の記事からも明らかです。
 憲法9条がなくなり有事法制が出来たら一体どんな世の中になるか、これでよく分かります。これでは北朝鮮の先軍政治と殆ど変わらないじゃないか。

 流石にこんなムチャクチャな発言に対しては、同じ右派からも批判が多く上がっているようですが、ここまで酷くなくとも、この様な「お上言いなり」の事例は、他にも私達の身の回りにあちこちで見られます。年金問題や拉致問題などで、下っ端の公務員や朝鮮・中国人が相手の時はムチャクチャ嵩にかかった物言いをするくせに、国家権力や財界中枢が相手となった途端に、猫をかぶった様に大人しくなり、お上の弁護を買って出るような人が、私の身の回りにも結構いますから。
 例えば今回の事件でも、「軍事優先」をあからさまに口にしなくても、「小回りのきく漁船の方が道を譲るべきなのでは」という形で、そういう意見が出てきたりします。しかし、漁船も集団で延縄を仕掛けたり魚群を探知していたら、おいそれと簡単に針路変更などは出来ません。つまり、回避の困難性については一概にどちらが重い軽いと簡単には言えないのです。
 そしてより本質的には、あくまでも、「法律に照らし合わせてみて、どちらに回避義務があるか」という事に尽きます。その他の「回避の困難性」云々というのは本質的な要素ではなく、仮に考慮に入れるとしても、せいぜいが過失相殺や情状酌量の材料にしかなり得ないでしょう。

 ここまで書いて思い出したのが、1933年の大阪・天六で起こった有名なゴー・ストップ事件です。この事件は、交差点の赤信号を無視した兵士とそれを見咎めた交通整理の警官との間の諍いが、とうとう軍人と警察の対立にまで発展したというものです。軍人も警官の双方とも「天皇陛下の赤子」として譲りませんでしたが、最終的には警察の方が折れる事で決着を見ます。この事件を境にして、以後は軍部以外には誰も軍人の非行を見咎められなくなったという、戦前の軍事ファシズムへの傾斜を象徴する出来事でした。
 その当時と比べて、今の日本はどれだけ進歩したでしょうか。1988年の「なだしお」衝突事故の教訓が全く生かされなかった事や、かつてイラク日本人拉致事件被害者や北朝鮮拉致被害者家族会に加えられた醜いバッシングの事を思うと、日本人の「お上言いなり」意識は昔も今も全然変わっていないのでは、という気がします。しかしその一方で、水俣病を初めとする公害病患者や、ハンセン病患者、薬害肝炎患者、原爆症認定患者の人権回復過程を考えると、日本の民主主義の成熟ぶりもまんざら捨てたものではないな、という気もするのです。

 そこで再び今回のイージス艦衝突事件に話を戻します。先のクライン孝子氏の様な「大名行列に道を譲るのは当然」といったムチャクチャな論理はもう論外ですが、その他にもマスコミの論調を見ていると、漁船にかぶせ切れなかった罪を、今度はイージス艦「あたご」の見張り員個人だけに押し付けて、それで済まそうとしているような気がして仕方がありません。
 確かに見張り員個人の責任は大きいです。仮にそこで見逃しがあったとしたら、その責任は徹底的に追求されて然るべきです。しかし、問題は其処だけにあるのでしょうか。当時「あたご」の周囲を航行していたのは「清徳丸」だけではありません。同じ船団の「金平丸」「康栄丸」なども航行していました。これらの船団の存在は、かなり早くから「あたご」も確認出来ていた筈です。左右と後ろを監視していた見張り員も含め、艦橋(ブリッジ)には10人ぐらいの乗員がいたのですから。

 今回の事故でより問われるべきなのは、何故そんな中を直前まで、緊急停止も回避も出来ない自動操舵の状態で航行していたのかという事ではないでしょうか。もっと言えば、千葉県房総半島野島崎沖という、毎日大小合わせて数百隻もの船が行き交う海の交差点で、今まで海難事故も多発している、そういう海域を、何故そんな状態で航行していたのかという事ではないでしょうか。
 若し「こちらは軍艦なんだから、殿様なのだから、海上衝突予防法など関係ねぇ」などという気持ちが本音としてあったのなら、それこそ思い上がりも甚だしいと思います。パトカーや消防車などの緊急自動車ですら、緊急出動時以外は信号を守ります。況してや当時の「あたご」は緊急出動もしていなければ、海上衝突予防法でそう定められていた訳でもありません。こと海上航行に際しては、法令上では他の船舶と全く同じ扱いになっている筈です。

 ここは是非、徹底的な情報開示と真相究明が求められます。ことは人命に関わる問題なのですから。それがあってこそ初めて、今後の対策も立てられるし、責任者に対する厳正な処罰も可能となるのです。その際に考慮されるべきなのは、あくまでも「海の交通法規に照らしてどうだったのか」―この一点に絞られます。その他の「軍艦なのだから」云々は一切関係ありません。そんな事を言っているようでは、「海の男」「プロ」として従事する資格はありません。
 そういう意味では、今回の衝突事件では、日本に法治主義や文民統制、ひいては民主主義がきちんと機能しているか否かが問われていると言っても過言ではないでしょう。この前のパキスタンの総選挙でも、ムシャラフ軍事政権による司法介入を人民が許さず、「テロも独裁もNO!」の意思が明確に示されました。翻って日本ではどうか。ここでまた仮にゴー・ストップ事件の愚を繰り返す様な事にでもなれば、今度は日本の民主主義の成熟度(民度)そのものが疑われる事になるでしょう。
コメント (3)
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