アフガン・イラク・北朝鮮と日本

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まんが蟹工船

2008年02月23日 01時11分32秒 | 一人も自殺者の出ない世の中を
蟹工船 (まんがで読破)
小林 多喜二
イーストプレス

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・小林多喜二「蟹工船」について(白樺文学館・多喜二ライブラリー)
 http://www.takiji-library.jp/
・ハケンと志位和夫のGJ=専門編集委員・山田孝男(毎日新聞)
 http://mainichi.jp/select/seiji/fuchisou/news/20080218ddm003070128000c.html
・2/8 派遣法改正し"労働者保護法"に 志位委員長が質問/衆院予算委員会(全編)(YouTube)
 http://jp.youtube.com/watch?v=6I_NTfz3RNs
・働くナビ:「名ばかり管理職」その広がりの実態は。(同上)
 http://mainichi.jp/life/job/news/20080218ddm013100107000c.html
・連合:マクドナルド店長の管理職問題、各国労組と連帯へ(同上)
 http://mainichi.jp/select/today/news/20080218k0000m040062000c.html
・連合:「日雇い派遣禁止」の運動方針決める(同上)
 http://mainichi.jp/select/today/news/20080125k0000m040161000c.html

 <なぜ、日本の若者は暴動を起こさないのかという言葉をよく聞く。暴動はすでに起こっている。散発的に、暴発という形で。すでにひきこもりと呼ばれる百万人が、労働を拒否して立てこもっている。ニートと呼ばれる八十五万人が、無言のままにストライキを起こしている。そんなふうにも見えないだろうか。>―以上は雨宮処凛著「生きさせろ」(太田出版)の中の一節ですが、事態は既にもっと先の、誰もがその姿を目にする事が出来る所まで進んでいるのではないでしょうか。
 日雇い派遣の過酷な労働実態を告発した共産党の国会質問の様子が、YouTubeの動画に流れ「2ちゃんねる」でも話題になる。今までサービス残業を強いられてきた「名ばかり管理職」が起こした不払い残業代返還訴訟の原告勝訴判決を機に、各企業で是正の動きが広がり始め、今もって是正に踏み出そうとしないマクドナルドに対しても、連合の会長が対抗キャンペーンを提唱する。

 そんな中でイーストプレスという出版社から出たのが「蟹工船 まんがで読破」という漫画文庫。あの小林多喜二原作の同名のプロレタリア小説を漫画にしたもので、これが結構若者の間で評判を呼んでいるのだそうです。私もそれを聞きつけて、少し買って読んでみました。
 確かに読み応えがありました。<蟹工船は「工船」であり「航船」でないため航海法は適用されず純然たる「工場」であるにも関わらず工場法(注:今の労基法の前身に当たる法律)の適用も受けられなかった―これほど都合よく「勝手にできる」場所はない!>というくだりなど、正に現代の偽装請負の手口と全く同じじゃないですか!グッドウィル・フルキャストなどの派遣企業が、派遣と請負の間のグレーゾーンを悪用して、労基法無視の働かせ方をしているという、偽装請負の手口と。
 なるほど、これを読んだ今の若者が「これは決して昔話なんかじゃない、現に自分達の身の回りでいつも起こっている事じゃないか」と思う気持ちがよく分かります。会社の意を受けた冷酷無慈悲な主任監督・浅川が、己の出世の為に雑夫(蟹漁師兼缶詰工)たちを極限まで追い立てている様子も、成果主義賃金体系の下で競争に追い立てられ過労死が頻発している今の労働現場とそっくりじゃないですか。

 当時の周旋屋(口入屋)に騙されて集められた荒くれ男達と、現代の派遣企業によってトヨタやキャノンの工場に送り込まれてきた労働者達。表向きの求人条件と実際の待遇が全然違うのも、集まってきた労働者達が、最初は労働法の知識も団結の経験も一切無くて金・酒・女にしか関心がない所も、今と全く同じ。それが浅川や雑夫長(胴体ばかりデカい浅川の提灯持ち)たちによる無謀な搾取や、保険金の算段優先で僚船のSOSをも見捨てる惨い仕打ちの中で、「このまま黙っていたら最後にはみんな殺される」とストライキに立ち上がる。

 狡猾な浅川はそれに対して、団交に応ずると見せかけて代表メンバーを護衛の駆逐艦に引き渡してしまう。それまで軍隊は国民を守るものだと思い込んできた労働者達も、ここで初めてそれが国民の運動を弾圧する為のものである事を知る。このくだりも、今の沖縄米兵少女暴行事件や、この前の衝突事故でも全容解明や行方不明者の安否よりも己たちの保身に汲々としているのが見え見えのイージス艦乗組員や防衛省幹部たちの行動とダブって見える。

 しかし労働者達は諦めきれず、二度目のストライキに立ち上がる。最初のストが失敗したのは代表メンバーだけの戦いにしてしまったからだと気付いた彼らは、今度は全員が代表団として浅川たちと対峙する。これではたとえ乗員全員を軍隊に検束させても、働き手を失いオケラで帰港する事になるだけで、浅川たちの出世も覚束なくなる。劃してストライキは成功する。―これが、この漫画の大まかなストーリーです。原作の小説の方も、昔買って読んだ新潮文庫版がまだ自宅に残っていたので、ざっと読み直してみましたが、大まかな粗筋は漫画と同じでした。

 私は、今でこそ、ワーキングプアながらもバイトに関しては労基法が一応は守られている会社に勤めていますが、かつては日雇い派遣や個人請負に近い形のバイトも経験した事が何度かあります。流石にこの蟹工船ほどムチャクチャな現場はありませんでしたが、それでも其処ではそれなりに嫌な思いを味あわされました。
 チラシのポスティングのバイトでは確か、日給制で昼休みはチラシ配付の合間に銘々勝手に取るとだけ聞かされていたのに、蓋を開けたら「誰が勝手に昼飯食べて良いと言ったんじゃ、45分昼休みに取った? アホかそんなモンはチラシ撒きながら15分ぐらいでパンでもかじって済ませておくんじゃ」と言われた事もありましたね(そこは即行で自分から辞めてやった)。

 また、社員が次の作業指示をロクスッポきちんとしないので、仕方なく他のバイトと少し壁にもたれて立っていたら、いきなりどやしつけられたりした事もありました。おまけに其処は、ある日なんか集合場所に来たら誰も居なくて、呆気に取られてたら急にその会社から私の携帯に電話がかかってきて、「本日は親企業の都合で作業は中止になったので帰っても良い」と。そういうのが翌日も続いて、それで私がいい加減頭に来て今後の予定はどうなっているのか問い詰めたら、雇用主の癖にまるで「自分達も被害者だ」みたいな口ぶりでしたので、貰うもの(給料)だけ貰った後はもうそんな会社とはオサラバして次の仕事を探し始めたり。そういう経験もしてきましたので、この漫画に書いてある事は、もうその通りだと思いました。

 ただ、少し違和感を感じた所もありました。それは、主人公の雑夫・森本たちの繰り出した蟹漁ボートが遭難して、ソ連の艦船に拿捕されて沿岸の民家で一時保護され、そこで中国人と思しき人物による共産主義の赤化(オルグ)を受けた後に元の蟹工船に戻って来る場面です。オルグといっても資本主義や搾取がどうこうとかいう大上段な話ではなく、ただひたすらカタクトの日本語で「金持ち威張る貧乏人いつも苦しむこれダメみんな力合わせて変える日本もっと良くなる」と続くのです。それが奴隷状態の雑夫達の心に響き一筋の灯明を点す事になるのですが、この場面も何だか今のソ連の実態を考えると、余りにも勧善懲悪過ぎるというか。

 この部分については、後で「あとがき」に補足として、
(1) 共産主義も理想通りには行かなかった。(ソ連・中国・北朝鮮の人権抑圧)
(2) それでも少なくとも労働者の心の中に点った希望については間違いではなかった。(今の日雇い派遣の実態を見れば資本主義万能論がいかにデタラメかよく分かる)
(3) 寧ろ今やその希望の灯は、単なる左右のイデオロギーを超えて、当時の蟹工船だけでなく全世界に広がっている。
(4) その希望の灯を絶やさない為には、レーニンや毛沢東といった「代表団」任せ(頼み)にするのではなく、人民自身が自分の頭でモノを考え民主的に物事を決めていく事が重要なのだ。
―という事を付け加えれば、更に普遍性のある内容の漫画になるのでは。蟹工船が示した実態は、何も戦前日本に限った事ではなく、今の日本や欧米や中国・北朝鮮・第三世界全てに共通するものなのですから。

 あと、資本家側の一部の人物の描き方が型通りなのも、少し気にかかりました。鬼監督・浅川のキャラは、まあ彼の役柄を考えたらこの程度で妥当かという気もしますが、蟹工船オーナーの冷血資本家・須田の人物像は、まるで「嫌韓流」作家の描く韓国・朝鮮人みたいで、少し抵抗を感じました。もっと有効な冷血無慈悲ぶりの描き方があるのでは(例:闇金ウシジマくんとか)。しかしそれ以外では、この手の漫画の中では、なかなか良い出来栄えなのではないかという気がします。
コメント
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