前回記事でもお知らせした標記の催しに行って来ました。行って来たと言っても、参加出来たのは21日の全体会だけで、翌日の分科会には行けませんでした。本当は両日とも参加したかったのですが、実は直前まで日程を一日ずれて覚えていて、その勘違いに気付いた時には、既に次月の勤務シフトが組まれていて、有休取得のタイミングを完全に逸してしまいました。おまけに全体会の方も、こちらも当日直前まで所用で塞がっていて、一時は参加を諦めていました。しかし、何とか初日の全体会だけは参加する事が出来ました。以下はその参加報告と感想です。(写真は左上から時計回りに、全体会登壇者、WSF統一ロゴ、通行証、コーヒー販売コーナー)
当日は大阪・扇町の北区民センターに13時開演で、二人の司会で始まった。二人のうちの一人は、市民団体代表の藤永延代さん。おおさかパルコープの理事を務めた事もある人で、私もこの人の名前は聞いた事がある。もう一人は、安原さんという地域労組の人。この人についてはよく知らない。
その次に、最初のフォルクローレの演奏の後、実行委員会代表として、橋下徹相手に府知事候補として戦った梅田章二さんが挨拶。「大人しく聞いていてはいけない、立ち上り歩き回り喋りながら聞くのが社会フォーラムの流儀」との事。そのせいもあって、講演中も会場は常にざわついていたが、それが全然苦にならず、逆に催しに色を添えていたのだから、不思議なものだ。
13時半から14時過ぎまでリレートーク。
まず、補完通貨研究所というNGO団体の人から、パワーポイント(PP)を使っての、連帯経済や補完通貨の話。フェアトレードに関する非常に重要な事を話されたのですが、如何せん、話が端折り気味でPP画像も文字だらけだったので、話についていけなかった人も多かったのでは。
次いで、気候変動ネットワークの人が地球温暖化に警鐘を鳴らしていた。今後は、平均気温が1度上昇する毎に、300kmづつ赤道に近づく計算になる。温度上昇を2度以内に止めるには、全世界で5割、先進国だけでは8割ものCO2削減が求められる。
その後は、「パレスチナの平和を考える会」から、BDSキャンペーン(対イスラエル・ボイコット)の提起。果物のスウィーティーやアハバというコスメ商品などの、パレスチナから奪った入植地で採れた農産物を輸入・消費しない・させない取り組み。今ここで起こっているのは「暴力の連鎖」なぞではない、イスラエルによる一方的侵略だ。それを問わない「ニセ中東和平」の枠組みなぞナンセンス。
「地域労連おおさか」からは失業・貧困問題。「普通に結婚・子育て・生活出来ない」「働けば不当労働行為にぶつかる」、そんな現状の中で、「我慢した挙句にうつ病か過労死に至る」か「切れて辞めてしまう」かの、二つの選択肢しか見えなくさせられている。しかし、どうせ「切れる」なら、労働法を学んで「正しく切れよう」。若者ユニオンによる模擬団交の取り組みで、ブラック会社の社員も続々加入。全労連と全労協の共闘も進展している(郵政労働者ユニオンなど)。
14時からは海外ゲストの発言が続く。最初に南米エクアドルから。子どもの半数が栄養失調、8割の国民が社会保障から除外され、債務支払いの自転車操業に追い込まれていた、かつての状態から、先住民の運動によって、新自由主義反対を掲げる新政権を誕生させた。そして、ヤスニ・プロジェクトによって、石油乱掘から国立公園の自然を守り、CO2削減を目指す取り組みへ。
途中でフォークソングと休憩を挟んだ後、15時頃から、タイ・フィリピン・韓国NGOの報告。この社会フォーラムは、大阪以外にも世界41ヶ国で同時開催されている、との報告。しかし、もうこの辺になると、少々疲れが出てきて、おまけに休憩中に買ったパンフレットに見入っていた事もあり、あまり話が聞き取れず。
奄美島唄の演奏の後、16時前から再びリレートーク。
市民メディアネットの人から、韓国など海外の動き。いくら資本にメディアを握られ、「売らんかな」の情報ばかりが巷に溢れても、市民もそれに対抗してコミュニティメディアを立ち上げていけば、大手メディアも全く無視出来なくなる。日本でも、そんなコミュニティラジオ局が、京都三条ラジオカフェを初め17局ある。大事なのは、批判的視点とともに、自分自身も発信源となって、世界と繋がる事。
シングルマザーズフォーラムからは、女性差別とパート差別との関係。今まで陰に隠れて見えなかったものが、貧困問題の顕在化と共に見えるようになってきた。それでも依然として、「離婚は我が儘」などの自己責任論が吹聴されるが、これなぞ典型的な精神的・経済的ハラスメント。暴力は何も肉体的なものだけとは限らない。
農民連の代表からはWTO・FTA農政への批判。民主党農政は、自由化推進の矛盾を所得保障(税金で穴埋め)という飴で誤魔化すものでしかない。本質は自民党農政と同じ。APEC単位でFTAなんてやられたら、国内食料自給率はゼロになる。
小学校養護教員からは学校の貧困問題。相対的貧困率、OECD平均8%に対し日本では13%で世界第二位、一人親世帯では何と50%。かつての中流幻想、今や見る影もなし。共働き貧困家庭では親も働き尽くめで過労死寸前、とても教育どころではない。親も子も、病気になっても医者に診てもらえない。「餌がもらえる犬猫に生まれたかった」という作文を、子どもが書くまでの状況が広がっている。
16時15分過ぎからはフリートーク。発言者も、エスペラントの会、報償費(官邸機密費)返還訴訟に取り組む市民団体、AALA、非核日本の会、郵政労働者ユニオン、みどり関西、ATTAC京都・・・と、多士済々。書籍販売コーナーには、山口県上関原発反対の座り込みの記録や、風力発電の危険性に警鐘を鳴らすもの、セクシャル・マイノリティ関連など、私が今まで知らなかった事も多い。いずれも非常に興味を覚えたものの、時間と金の持ち合わせがなかったので、次回の機会に回す。買ったのは先のパンフとフェアトレードのコーヒーだけだったが、署名は出来るだけした。
再びフォルクローレの演奏。数多くの演奏の最後を飾ったこれが一番上手かった。その後、17時前に、沖縄からのピースリレー行進団がメッセージを携えて登壇。名護市長選勝利の歴史的意義。今までの「飴とムチ」が次第に効かなくなっている。ヒロシマ・ナガサキ議定書の内容に沿って、2015年に核廃絶を目指す。特別法(特定の自治体に適用される法律)制定に際しては住民投票を経なければならないという、憲法95条に基づく民主的住民自治の実現を。
17時10分から閉会挨拶と諸連絡。社会フォーラムは、特定の綱領・規約に基づく組織運動ではなく、参加型の社会運動だ。謂わばお祭りのようなもの。「参加と平等」がキーワード、その中で民主主義を学んでいく。本日は約450名の参加で成功裏に終了した。明日も終日別会場(エル大阪)で分科会があるので、通行証(葉書大で首からかける)を忘れないように、との注意喚起。終了後は参加者全員で会場の椅子を片付け、有志で梅田までデモ行進(私は参加出来なかったが)、という日程でした。
以上が全体会の参加報告ですが、それを踏まえての感想を二つほど。本当は他にも色々書きたい事はあれど、冗長になるのを避ける為に、敢えて二つだけに絞ります。
一つは、数年前の「9条世界会議」と同様に、今までの運動では考えられなかった程の、参加の広がりが見られる事です。パルコープの人や府知事候補の梅田さん、地域労組やAALA(アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会)が音頭を取っている事からも、この運動への共産党系組織の力の入れようが偲ばれますが、決してそれに止まるものではありません。それは、それ以外にも、郵政労働者ユニオンやジュゴン保護キャンペーン、全労協、イラク平和テレビ、メキシコ先住民運動連帯関西、みどり関西などの「非共産党」系組織も、広範に加わっている事からも明らかです。それどころか、会場の外ではアナキスト・グループ(自由労働者連合)まで街宣に加わっていました。それが、前回記事でも触れた「おおさか社会フォーラム憲章」の5原則に沿いながら、ごく自然に行われるようになっている事に、非常に感銘を受けました。
こんな事を書くと、新左翼や無党派市民運動などの非共産党系左翼の方から、「何をまだそんな事に拘っているのか」と、逆にお叱りを受けるかも知れませんが、それでも「昔の共産党」と比べると、大きな変化なのです。勿論、これは「フォーラム形」の運動だからこそ出来る事なのでしょうが。反動攻勢を打ち破っていく為には、「フォーラム形」とは別に「組織型」の運動も必要なのは分かっています。しかし、得てして後者が「民主無き民主集中制」に陥りがちなのは、北朝鮮や「いずみ生協」の例からも明らかです。今までは、こういう取り組みが余りにも為されなさ過ぎたのでは、と思います。
もう一つは、この社会フォーラムの運動と比べると、今の日本政治の後進性はもはや覆うべくも無いという事です。この間、巷に流れたニュースは、鳩山邦夫の自民党離党であったり、与謝野・升添・枝野・渡部などの自・民「反主流派」の動きであったり、生方幸夫・民主党副幹事長解任劇だったりでしょう。もうウンザリです。鳩山邦夫なんて、一体幾つ政党を渡り歩いたのよ。「どっちについたら得か」と損得勘定で動いているだけのくせに、何を「坂本竜馬」気取りでいるのか。これら名前の挙がった与野党政治家は、生方だけ少し毛色が違うものの、後は全て、いずれ負けず劣らず「元・自民党」系ではないですか。小沢・民主党幹事長なぞ、その最たるもので。
一連のニュースが流れた時は、ブログでも取り上げようと書き始めたものの、余りの沙汰に、もうバカらしくなって止めました。後は前回記事にも書いた通り。鳩山政権・民主党の支持率低下は、「反日・反米」が原因ではない。寧ろその逆で、「反自民」「対米従属・格差社会からの脱却」などの選挙公約が、いずれも口先だけだったからに他ならない。
それが何ですか。やれ「平沼新党」がどうの「みんなの党」がこうの、「小沢」がどうたら「反日」がこうたらとか、そんな「ネトウヨ」レベルの話しか出来ず、現実の貧困な労働条件や低福祉には何も言えずに「下見て暮らせ傘の下」で鬱憤を晴らし、在日米軍の治外法権には何も言えずにアジア人の「在日特権」ばかり言い募る、そんな「自民党なき自民党政治」「自民党を別の名に言い換えただけの保守反動政治」から、もういい加減に脱却すべき時に来ている。
まあ、そうやって、自民党はますます衰退すると共に、「ニセ反自民」の党が次々に登場した挙句、やがて「ニセ」では誤魔化せなくなる時が必ず来ます。これ以上、ネオナチ・靖国右翼や新自由主義者どもの好き勝手にはさせない。
(参考資料)
・おおさか社会フォーラム(OSF)公式ブログ: 翌日分科会の報告も有。
http://osaka.socialforum.jp/
・WSF大阪連絡会: WSF(世界社会フォーラム)運動の解説有。
http://www.geocities.jp/wsfosaka/
・ATTAC(アタック)関西: トービン税についての解説有。
http://attac-kansai.sakura.ne.jp/index.html
・Drop the Debt ! ジュビリー関西ネットワーク:
途上国の債務問題に取り組むNGO団体。OSFにもエクアドル代表が参加。
http://d.hatena.ne.jp/Jubilee_Kansai/