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ダンダリンの効用と限界

2013年10月22日 00時11分27秒 | 一人も自殺者の出ない世の中を
  

 「ダンダリン 労働基準監督官」という新番組がこの10月から始まりました。10月2日から毎週水曜日、夜10時から1時間、日テレ系列(大阪では10ch)で放送しています。段田凛という少々ハチャメチャな女性の労働基準監督官が、事なかれ主義の署長や同僚ともすったもんだしながら、ブラック企業の悪に立ち向かう様をコメディータッチに描いています。番組名の「ダンダリン」もその女性の名前に由来します。このように、今あちこちで話題になっているブラック企業の問題を取り上げたドラマですが、実は私は最初はあまり期待していませんでした。
 何故なら、幾ら労働者の権利を守る役所だと言っても、現実の労基(労働基準監督署)は慢性的な人手不足の為に、労働者の訴えもなかなか取り上げてもらえません。それに、労働基準法や労働安全衛生法などの法律に則った仕事しかできません。しかし、現実のブラック企業には、賃金不払いといった労基法違反以外にも、セクハラやパワハラなどの問題もあるのに、せっかく労基に訴え出ても管轄外だと追い返されてしまう場合も多いのです。特に小泉政権や安倍政権になってからは、構造改革や規制緩和の名の下に、労基法そのものが骨抜きにされようとしています。たとえば派遣労働法の改悪や、経済特区を作ってその中では労基法も適用外にし、自由に首切りやサービス残業ができるようにしようとしている事などがそうです。その中でこんなドラマを放送したって、逆に「アベノミクスはただの大企業優遇の株価対策ではありませんよ」「安倍政権や自民党は大企業だけでなく労働者の事もちゃんと考えていますよ」といった宣伝に利用されるだけだと思っていましたから。

 でも、第2話と第3話を観た限りでは、コメディー・ドラマとしての限界はありながらも、予想していたよりも遥かに為になる番組だと思うようになりました。
 第2話ではセクハラと名ばかり管理職の問題を取り上げていました。飲茶カフェの女性店長が社長からセクハラ被害を受け、勇気を奮ってそれをせっかく労基に告発しても、労基の管轄外という事で有効な対策が取れず、社長は通り一遍の謝罪だけで済む。女性店長は社長から仕返しに目一杯残業を押し付けられても、店長という管理職ゆえにそれを拒む事も出来ず、残業代も支払われないまま一人で夜遅くまで閉店作業をさせられる破目になる。そこに段田が登場し、店長と言っても実は名ばかりで、実際には人事権や業務の裁量権もないただの労働者に過ぎない事を明らかにする。これなぞ、名前だけの管理職を一杯作って、労働者を長時間サービス残業でこき使い過労死させても何の責任も取らない、ワタミやユニクロ、マクド、餃子の王将などで、今正に実際に起こっている問題ではないですか。
 第3話では労災問題が取り上げられていました。労基の土手山課長と同じ大学OBが経営する零細工務店の工事現場で、従業員の転落事故が起こったが、何故か救急通報が遅れた。作業主任者資格を社内で唯一持つ社長が本当はそこにいなければならなかったのに、実際には社長は金策に走り回っていてその場にはいなかった。それがばれて労基から処分されると銀行融資も引き上げられて破産に追い込まれると、社長と従業員が示し合わせていた為に通報が遅れたのです。この辺の展開なども、前の配属先で、備品のドーリーが不足しているのに元請けには遠慮して何も言えず、バイトに本来ならば不要で危険なコンテナの積み替え作業を強いておきながら、労働組合の団交で私からそれを指摘されると「仕事を失っても良いのか」と居直った私の会社の重役の姿とまったく同じです。
 それに対して、土手山が情実に囚われ逡巡する中で、段田は社長がネクタイ締めて革靴だった(現場で作業できる格好ではなかった)事に気付きます。本当はその工務店は銀行からも見限られ、闇金から借金して自転車操業の状態に陥っていたのです。そこで「会社を守ろうとした為に、逆に労働者の命が失われても良いのか」という段田の決め台詞が決定打となって、社長は闇金とも縁を切り、工務店を清算し従業員の転職にも成功します。

 そういう意味では結構面白いドラマです。竹内結子が演じる段田凛が、曲がり角を曲がる時も直角で曲がり、男女差別のパート募集の張り紙を見つけたら、たとえ通勤途上でも遅刻するのも厭わず、ウーと唸り声を上げて雇用者とにらみ合う。それとは対照的な、上司の土手山課長(北村一輝)や真鍋署長(佐野史郎)のやる気のなさ。土手山と元妻との子供の養育費を巡る言い争い。段田の監視役を言いつけられた草食系男子の同僚・南三条(松坂桃李)が、段田に振り回されながらも一人前の監督官として次第に成長していきます。段田とは違い男子から羨望の目で見られている女性監督官・小宮(トリンドル玲奈)も、段田に感化され監督官本来の任務に目覚めていきます。
 その周辺では、元監督官で今は社労士(社会保険労務士)に転身した胡桃沢(風間俊介)や、その上司の相葉(賀来千賀子)が、隙あらば段田を陥れようと近づく素振りも、企業と顧問契約を結ぶ事から、ともすれば経営側の立場に立って動く事の多い社労士という職業の実態がつぶさに描かれていて、非常に興味深いものがあります。
 何よりも、労働基準監督官が、単なるお役所の行政官、事務職ではなく、「労働Gメン」「労働問題の警察」として、強制家宅捜索や逮捕の権限も持っている事が、きちんと描かれているのが素晴らしい。学校では労働基準法の内容も、「1日8時間労働」とか最低限の事を通り一遍に教わるだけで、実際には労基にそれほどの権限がある事なぞ、全然教えてくれませんでしたから。
 多分、そこまで教えたら政府にとっては都合が悪いから、具体的な事は何一つ教えてくれなかったのでしょう。そんな労働基準監督官にも限界があり、あくまで法律の枠内でしか活動できず、法律そのものを骨抜きにされたら一たまりもない。だからこそ、法律が改悪されないよう、政府を監視していかなければならないし、政治に無関心であってはいけないのです。

ダンダリン一〇一 (モーニングKC)
クリエーター情報なし
講談社



 この番組の実際の視聴率は伸び悩んでいるそうです。一週遅れで同じ時間に始まった他局の人気新番組「リーガルハイ」にお株を奪われただけでなく、ブラック企業という深刻な問題を取り扱っている割には、取り上げ方が余りにもコメディータッチという点で一部から失望を買ったからだと言われています。現実はそんなに甘っちょろいものではないよと。
 実は私もそう思います。テーマがテーマだけに、もう少し骨っぽい取り上げ方をされても良かったのではないかと。そうしたら今の半沢直樹の番組のように、もっと注目が集まったのではないか。「クソ上司め、覚えてろ!」「倍返しだ!」のセリフも、この番組こそ最も似合っているのではないか、と。
 でも、その一方で、大企業がスポンサーの民放としては、これが精一杯だったのではないかという気もします。面白おかしく捉えているだけのようでも、案外奥深い所まで捉えているのかも知れません。テレビに不満の方は、是非、原作のコミック(上記参照)も併せて読まれたら良いと思います。私も、この番組を毎回観ていたら翌日早朝からの仕事に響くので、コミック版を買って読む事にしました。
 コミック版では土手山課長や真鍋署長の描き方もテレビとは大きく異なります。その中では、中国人技能実習生に研修名目で、時給400円程度の低賃金で1日16時間も働かせ、トイレの時間も給与から天引きし預金通帳も取り上げ、昔の「女工哀史」さながらの搾取がまかり通っているという話も登場します。まるで、以前実際に広島のカキ養殖場で起こった中国人技能実習生による殺人事件を思い起こさせるような感じで。これをTV番組ではどう取り上げるか今から楽しみです。少なくとも、会社の不幸自慢から一歩も出なかった、小池徹平主演のTVドラマ「ブラック会社に勤めているのだがもう俺は限界かも」よりかは数段マシだと思います。
コメント (2)
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