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豆腐一つ満足に届けられなくて何が物流最終戦争かよ

2013年10月27日 22時01分59秒 | 一人も自殺者の出ない世の中を
週刊 東洋経済 2013年 9/28号 [雑誌]
クリエーター情報なし
東洋経済新報社


 阪急阪神ホテルズやリッツ・カールトン大阪で食品表示偽装事件があったと思ったら、その次はヤマト運輸のクール宅急便やファミリーマートの物流センターで、本来なら冷蔵や冷凍で配送されなければならない商品が常温で仕分けされていた、という事件が報道されています。
 今更言うまでもない事ですが、この手の商品は「コールド・チェーン」と言って、出荷してから荷物がお客に届くまでの間ずっと、冷蔵なら0~10℃、冷凍ならマイナス18℃以下に保ったまま配送しなければならない事になっています。そうしないと、一旦商品の温度が上がって冷蔵や冷凍でなくなってしまえば、ドリップ(肉汁)が出て風味も落ちて売り物にならなくなるし、食中毒の原因にもなりかねません。中には「フローズン・チルド」と言って、出荷時は冷凍でも店に着く頃には解凍してちょうど陳列できるようにした商品もありますが、それはあくまでホンの一部の例外にしか過ぎません。

 そんな事は、スーパーやコンビニなど流通業界に携わる人にとっては、もはや常識なのに、何故この様な事が起きたのか。
 ヤマト運輸の社歴も少し調べてみましたが、この会社、元々は戦前からある路線便の運送会社で、別に食品輸送だけを専門にしてきた訳じゃなかったようですね。それが、1976年の宅急便サービス開始を機に急速に事業を拡大し、1982年には今のヤマト運輸に社名を変更、1988年からはクール宅急便も手掛けるようになります。そして、海外進出も果たし、郵政民営化の波に乗ってメール便事業にも参入し、今や押しも押されぬ宅急便のリーディングカンパニーにまで成長しました。
 しかし、光が強ければ強いほど影も濃くなる。リーディングカンパニー必ずしも労働者にとっての優良企業ではない。ヤマト運輸も御多分に漏れず、急成長の陰で、ドライバーがサービス残業で過労運転を強いられたり、営業ドライバーが月110時間以上もの残業を強いられ過労死させたりと、正に典型的なブラック企業でもありました。社内には正社員ドライバーで組織された労働組合もありますが、この組合も会社べったりの御用組合で、残業時間の上限を決めた三六(さぶろく)協定を組合が会社と締結しても、それは紙の上だけで、実際にはその上限を超える分は全て「ただ働き」にされているようです。

 そんな会社ですから、今回のクール宅急便のクール偽造事件でも、社長が謝罪会見で、「保冷コンテナを開けた後5分間で全ての荷物をトラックに積み替え、荷物が外気に触れる時間を30秒以内とする」という内規が守られていなかった、今後はそれをきちんと守らせるように徹底する、と述べたようですが、それが守れるような会社ならこんな問題なぞ起こりません。初めから守れないようなルールを形だけ作って、それで誤魔化してきたからこそ、ここにきて一気に問題が表面化してしまったのでしょうが。
 「コールドチェーン」なんだから、本当は常温で「コンテナの開け閉め」なぞ一切してはいけないのです。「何分以内なら良い」という問題ではないのです。本来なら出荷前の段階でお届け先別に仕分けまで完了していて、後はドライバーがそれをコンテナごと積み込み、途中でもコンテナごと仕分けする形で、そのままお客に届けなければならないのです。しかし、実際には小口の商品も数多くありますから、途中の仕分け作業は必ず発生します。ならば、何故その仕分け作業用の冷蔵設備を用意して、そこで仕分けをさせないのか。
 勿論、幾ら冷凍商品でも、マイナス25℃の冷凍庫では細かな仕分け作業なぞ出来ません。冷凍庫の中では、幾ら厚手の軍手をしていても手がかじかみボールペンも凍って使えなくなるし、電子端末も誤作動を引き起こしたりしかねません。だから、冷凍商品の仕分けに限っては、別に0℃前後の予冷庫で、時間を区切って作業する事になります。そして、仕分けが終わればまた元の冷凍庫に戻します。それが、「コールドチェーン」本来の仕分けスタイルです。

 資本金500億円、年売上高1兆719億円余、従業員数121,525名、事業所数8,478店(以上2004年度、ヤマト運輸公式HPより)で、海外にも数多くの子会社を持つグローバル企業のヤマト運輸に、営業所の片隅に仕分け用の作業設備一つ作れない筈はありません。その必要な投資もせずに、責任を作業員個人にだけ擦(なす)り付けて、形の上だけの「ルール順守」でお茶を濁そうとしても、そうは問屋が卸しません。儲けに見合うだけの社会的責任を、このブラック企業にはきっちり取らせる必要があります。「物流最終戦争」(週刊 東洋経済9/28日号)とか息巻く前に、きちんとやるべき事をやれと言うのだ。
 これは何も、ヤマト運輸や阪急阪神とかのホテルだけに限った話ではないでしょう。予算や権限がないのを口実にして、必要な改善も怠り、それを何でも従業員個人の能力や「やる気」の問題にすり替え、「ルール順守」などの道徳論・精神論に逃げ込もうとするのは、どこの会社も同じですね。ウチの会社も含め。

(参考資料)

・クール宅急便、常温で仕分け ヤマト運輸、荷物27度に(朝日新聞)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131025-00000005-asahi-soci
・扉開けっ放し・箱は常温で置きっぱなし クール宅急便(同上)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131025-00000009-asahi-soci
・クール宅急便、200カ所で常温仕分け ヤマト運輸(同上)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131025-00000043-asahi-soci
・送料無料は「労働タダ」ではない ヤマト運輸の「当日配送」に密着した(日経ビジネス)
 http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130924/253728/?rt=nocnt
・ヤマトの意志が示すもの(ヤマト運輸HP)
 http://www.kuronekoyamato.co.jp/recruit/shinsotsu/will/strength/
・ヤマト運輸での労働時間改竄(かいざん)の実態(Internet Zone::WordPressでBlog生活)
 http://ratio.sakura.ne.jp/archives/2007/11/12004537/
コメント (3)
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