脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

映画「母なる証明」の痴呆(チメ)役者に異議あり  

2009年11月08日 | 正常から認知症への移り変わり

今日は、渋谷で「母なる証明」を見ました。
ミニシアターで上映中の韓国映画です。先日読んだ映画評では、「殺人事件の容疑者となった息子を救うため、真犯人を追う母親の姿を極限まで描くヒューマン・ミステリー」「ウォンビンの5年ぶりの復帰作」ということでした。
私は韓流ドラマはパスしていましたので、もちろん、前半の文句に魅かれて見に行ったのですが。

今日の写真も、先日の旅友M嶋さんが送ってくださったもの。感謝!P1020278 P1020303

ウォンビンが知的障害を持つ一人息子役でした。
息子を救おうとするその母の心理のひだを細かく追っていくストーリーは、ポン・ジュノ監督が自らシナリオも手がけたということで、よく練られていてハラハラドキドキの展開が続きました。
あらすじはこの公式サイトの作品紹介欄に前半だけが掲載されていました。その他、関係者プロフィール、コメント、2009年カンヌ映画祭関係などなども掲載されていましたので興味ある方はご覧ください。
最後の意外な結末からは、確かに人間というものの深みを訴えようとしていることが伝わってきました。

以下の話は映画とは無関係・・・

被害者になる女子高校生の設定は、祖母と二人暮らし。その祖母が「チメ」というのです。

もう10年以上も前、私は韓国でボケ予防の講演をしたことがあります。
当時日本では、「認知症」ではなく「老人性痴呆」と言っていました。
韓国では、全く同じ字で発音だけが「ノウインソンチメ」と教えてもらって「よく似てる」とびっくりしたことを思い出しました。P1020385

ちなみに韓国でも、エイジングライフ研究所の主張する「チメは、脳の使い方の問題。趣味なく、交友もなく、もちろん生きがいといって何もない。そのうえ運動もしない。
60歳を超えて、そのようにその人の前頭葉の出番がなくなるような生活になってしまうと、脳は老化を加速していき、次第にチメが完成されていく」という説明がとてもよく理解してもらえました。
韓国社会も大きく変化しているようですが、それでも儒教的な「ねばならない」文化や、極端な学歴偏重主義に見られるような左脳優位の考え方が根強いからこそ、理解されたものと思っています。

映画に戻ります。
そのおばあさん役の演技なのですが、後半の山場のひとつ、母役との絡みの場面で、とても「チメ」とは思えないのです。
まず表情があります。「目」が生きています。反応が機敏です。動作もテキパキとしていて、孫娘の稼いだお金で「マッカリ(韓国のどぶろく)」を飲んでは、フラフラほっつき歩くという設定と一致しません。
「チメ」というよりも「性格の偏り」ならばよくわかります

居眠りもせずに一生懸命見たのですが、どこか理解しきれてないところがあったのかと、そのおばあさん役の演技に戸惑ってしまいました。
母役も息子役も迫真の演技でした。もちろんそのおばあさん役も迫真の演技なのに、「チメ」とは遠ざかるばかり。残念な気がしました。

この映画に関しては私の理解不足もあるかもしれませんが、世間一般の「ボケ」の理解、特に早期の「ボケ」に関してはまだまだ不足しています。

これはある方から聞きました。P1020616_2
テレビかラジオからの話のようですが、「認知症の始まりは記憶の障害。趣味やボランティアなどでどんなに生き生き暮らしていても、約束の日を間違えたり、伝言が伝わらなくなったりしてくるとそれは認知症が始まったことになる」

とんでもありません。
「趣味やボランティアなどで生き生き暮らしていれば」ボケません。
(もしこういう状態が起きたとすれば、一番考えられるのは側頭葉性健忘です。マニュアルCを参照してください)

「趣味やボランティアなどでどんなに生き生き暮らしていても、その生き生きした生活をやらない状態が続けば、だんだんボケてくる」

これがボケはじめの必要十分条件、大原則なのです!


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