脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

8020運動 歯が先か脳が先か

2009年11月25日 | 前頭葉の働き

東京の歯医者さんへ検診に行きました。
下の写真は、廊下に展示してありました。現在97歳男性のものです。2009_1118_144100p1000233_3

「うちの病院には、最高齢97歳の患者さんもいます。つい先日も葛西からおひとりで検診にいらっしゃいましたよ。敬老の日に表彰されたそうですが 、他の方はほとんど寝たきり。この方だけが 文字通りかくしゃくとしていらして皆さんから賞賛されたそうです。」

歯医者さんですから、言葉が続きます。
「インプラントしたうえで、入れ歯をおつくりしていますが、手入れを良くされるので見事に持っています。タクワンでもお煎餅でもしっかり召し上がるんですよ」

「こうして自分の歯で食べることができる人はボケませんね!この方も、いまだ現役で詩吟の先生をしていらっしゃるんです」

これは「卵が先か鶏が先か」です。
食事がきちんと摂れるということはプラス要因には間違いありませんが、きちんと「自分の噛める歯」で食事が摂れる人は必ずみんなかくしゃくとしているかどうか?です。
97歳でも詩吟の先生ができるような人なら、歯の管理を説明してその重要性を理解してもらえたら、「自分の噛める歯」を維持することはそんなには難しくはないはずです。
「脳に良い」のは詩吟の先生をやり続ける生活態度のほうが重要な要因だと思います。

ベトナム料理教室(フエ風まぜごはん)2009_1119_164400p1000234

8020運動はご存知ですね。
8020推進財団が「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」と呼びかけているものです。

この標語は「歯の手入れをきちんとして、80歳になってもちゃんと噛めるようにしておこう」と言い換えるべきだと思います。20本あっても、奥歯が全滅している場合や上下どちらか噛みあわせるべき歯がない場合などは、食べるという行動に大きな制約が生じます。

食欲は、基本的な意欲の現れですから「しっかり噛んで、味わって、おいしくいただく」ことができる場合とできない場合の、QOLの差は非常に大きいでしょう。

自分の歯にこだわるよりも、良く調整された入れ歯であっても構わないではないですか。使えることが何よりも大切だと考えないといけません。
歯周病の予防も、当然必要です。 2009_1119_164400p1000235ベトナム料理教室(揚げ豆腐のヌックマムねぎ浸し)

こうして並びたてていくと、何よりも大切なのは「食べる」ということを「自分の人生にどのように位置づけるか。そのためにはどのような努力が必要なのか」を理解する能力ということになります。
まさに前頭葉機能が「自分の歯」に対して正常に判断できる状態かどうかが鍵ということですね。

つまり、小ボケになる前に将来を見据えて歯の健康計画を練っておく必要があります。

ベトナム料理教室(ハスの実のチェー)2009_1119_164500p1000236

また「噛むことそのものが、脳を刺激する」ということが言われます。

それはその通りでしょう。

でも、時を忘れるほどに熱中している時に脳が受ける刺激と、単純にただ噛んで食べる行為から脳が受ける刺激が、比較できるほどの等質さを持っていると考えられますか!

脳は重層的な構造を持っていますから、たとえば意欲といっても脳幹が受け持つ意欲は生命維持に関するようなレベルです。
辺縁系になると本能レベル(心地よさの追求どまり)。大脳皮質になって初めて論理的だったり情緒的だったりということが起きてきます。
最終段階は、自分らしさの根源である前頭葉機能が関与する意欲、その人でしか起きえないような意欲が見られてきます。

「脳にとって良い」どのレベルの話なのかを考えながら聞いてください。


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