脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

糸島便りー喜寿同窓会に引き続き

2024年11月06日 | 私の右脳ライフ
「山内恵介って知ってる?糸島の出身なんだよ」
誰にとっても故郷は特別な場所。今回はその思いをひとしお感じた旅でした。
(確認したら再生ができません。画面下部左端の「coverひろし」ならどんな歌かわかります。そして晴れの日の糸島巡りができます。2024年9月25日リリースですって)
糸島富士

九州入りして3日目。
入院中の友人のお見舞いを予定していましたが、コロナのせいで「お見舞いは家族だけ。10分間」と言う厳しい規則のため、あえなく消滅…
北九州市戸畑区と言う地方の町で育ったので、小、中、高校が同窓という友人がいます。お見舞いに行きたかった友もそういう繋がりの友人でした。
「捨てる神あらば拾う神あり」で、その仲間が「今注目されてる糸島へ連れていっちゃる(連れていってあげる)」と言ってくれました。
糸島市のイメージキャラクターいとゴン

楽しみにしていたのに、11月にしたら記録的と言われるほどの大雨予報。でも誰からも計画変更の言葉が出てこないところが北九州気質なのでしょうか。
雨中のドライブ。「ほらあれが福岡ドーム!」

「野球と言えば西鉄ライオンズ。ホークスなら南海ホークス」と声には出さずに、長い年月を噛みしめていました。
高速から見える右前方のきれいな山を「あれが可也山(カヤサン)別名糸島富士」と運転しながら古澤さんが教えてくれました。古澤さんは中学校の同級生。一緒に生徒会をやったような気がするのですが。
「天気が良ければねえ…」と言いながらも「一応、糸島観光王道の芥屋の大門(ケヤノオオト)と二見ヶ浦は外せないなあ」と友人二人が話してくれています。
私は雨が降っていても車から降りて近付きたいタイプですが、あまりの雨に言い出せないと思っていたら、「ちょっと行ってみようか」と言ってくれるではありませんか!雨の中本当にありがとうございました。

芥屋の大門は日本最大の玄武岩洞。天気が良ければ観光船で中に入れるとか。柱状節理は伊豆のものとは少し違います。
せっかくの景勝地ですから、看板をあげておきましょう。綺麗ですね!天気だとこの先の展望台からの景色もこんなにすてきです。途中はトトロの森といわれてるんですって。

海岸に近づいたり離れたりしてドライブを続けて次のスポット、二見ヶ浦に到着。
ここも言うまでもなく大雨(笑)なので駐車場からパチリ。「いつもだと駐車場に入るのに待つくらいだよ」雨でいいこともあります。

帰ってからちょっと復習をしてみたら、伊勢の二見ヶ浦は朝日をのぞみ、糸島の桜井二見ヶ浦は夕日のスポット。白い鳥居も神々しいものでした。
実は希望を一つ伝えてみたのです。
伊都国歴史博物館に行ってみたいのだけど…」
幸いというか雨だったので、むしろ喜んでいってみようと言うことになりました。きっと意味があると思うのですが、巨石を配した旧館玄関。何が展示されているかと期待が高まります。

ちょうど、伊都国歴史博物館開館20周年記念の「吉備と伊都国 巨大墳丘墓と大鏡」展が開催されていて、早くから開けた両所ですが、その歩み方の違いなどを知るようにという説明から始まりました。
吉備の王墓である楯築墳丘墓 の出土品がたくさん展示されていました。
立派な銅鐸

デザイン性のある分銅型土製品

伊都国は朝鮮半島からの入り口であり、瀬戸内海の真ん中に位置する吉備は交通の要衝だったということはすぐにわかります。




常設展に移動するところに、素朴な展示がありました。ほんとにこの程度の船で移動したのでしょうか?あの玄界灘を?

常設展。伊都国

平原遺跡の鏡などの出土状況を再現した原寸大の模型が展示室の真ん中にありました。

その前にビデオで伊都国の成り立ちを学べるようになっています。私たち3人並んで勉強しました。





そして圧巻の銅鏡群。全部国宝!












装身具のような細かいものの展示もありましたが、こんな大きいものも。三雲南大路墳丘墓の棺は当時としては最大級だったとか。伊都国が発展していた別の証拠でしょう。

「見応えがあったね」と言い合って出口に進むところで雨が上がって靄がかかっているようなちょっと幻想的な景色が飛び込んできました。手前の農業用ハウスは意識に上らなかったのです。
糸島市街の山はみな低いのですが、西側には背振山系が広がって、その向こうには吉野ヶ里遺跡がある!北部九州はいち早く開けたところに間違いありません。

先ほどみた伊都国展示場の模型をみても、住みやすさが実感されます。

ランチについては、小学校からのクラスメート藤吉さんが「角屋食堂にしよう」と提案してくれていました。勿論なんの異存もありません。
よほど美味しい玄界灘の魚でもいただけるのかと思っていたら「いやあ。普通の駅前食堂。昭和の香りがぷんぷんすると思うよ。NHKの『おむすび』でおじいさんをやっている松平健がこの食堂で食事をするシーンを撮ったんだよ」こういうノリが大好き。私も負けず劣らずのミーハーですから。

店横の看板には、唐津街道前原宿の文字が。
店内は確かに昭和!

この裏側が撮影場所だったと店員さんが教えてくれました。

チャンポンをいただきました。

我が家ではごくごく普通の夕食に作られていました。その母の味を思い出しながら美味しくいただきました。
雨中とは言え充実した旅の道連れお二人。

「すぐそこだからちょっと唐津街道見てみよう」と誘ってくれて、傘をさして唐津街道までちょっと歩きました。何度も言いますが、私はこう言う旅が好き。

雨は降ったのですが、それすら思い出を深めてくれたような気がします。
筑前前原(ちくぜんまえばる)駅まで送ってくれて、三者が三様に別れました。
「今度はいつ会えるかなあ…元気でいましょうね」
空港行きの地下鉄が乗り入れていて、乗り換えなしで福岡空港へ直行です。

どこか九州らしい車内。先日東京で副都心線に乗った時、車両間のドアがガラスで驚きましたがこの車両もガラスでした。

藤吉さんが「戸畑高校の記事が出てるから」と渡してくれた新聞を見たり、雨中の写真を眺めているうちに無事に空港到着。

もちろん家にも無事につきました。が、その翌日は九州の大雨がどんどん東に移動して山陽新幹線や東海道新幹線が運休してしまうと言うニュースが飛び込んできました。確かに記録的な大雨だったんですね!
それにしたら上手に遊びました。
ドライバーを引き受けてくださった古澤さん。 
「お天気が良かったらお寺にも白糸の滝にも連れて行って…」と思ってくれているのがよくわかりました。ありがとうございました。そして雨の中の運転お疲れさまでした。また!

北九州便り-火野葦平旧居

2024年11月02日 | 私の右脳ライフ
久しぶりの故郷で、ちょっとした要件がありました。残りの時間は遊んでくれるという同級生八丁さんからのありがたいお話で「お任せします」と甘えることにしました。
1。火野葦平の旧居は隠れたスポットだからぜひ!
2。前回の帰省の時、皿倉山に登って洞海湾を見せたけど、あの逆、若松側から南側を見なくっちゃあ片手落ち。

要件を片付けるために戸畑区内を車で回ってくれましたが「え〜ここなの?」とか「どう考えても逆な気がする」など連発しながら要件終了。
「若松に行くのに、渡し船に乗りたくない?」
「もちろん乗りたいけど。自転車しか乗せてもらえないでしょう?」
「大丈夫。若戸大橋で行ってピックアップするから」
運賃は市内の人は50円。私たちは100円。乗船時間は3分と聞きました。

びっくりしたことに多分船長さんは若い女性。戸畑側の渡船場に着船した方向から動き始めた途端に180度回転して舳先を若松側へ変えてしまいます。そして若松の渡船場に着くまで3分。きっと操船には技術を要すると思います。頑張ってくださいね。
赤い若戸大橋と船を写真に同時に収めるのは、難しかったのです。

戸畑側には日本水産、若松側には上野海運というクラッシックな建物があり、往時の繁栄が偲ばれました。
船着場から歩いても行けるところに、河伯洞(河伯はカッパの意)と名付けられた火野葦平旧居はありました。
街並みがちょっとオシャレでどこか共通項を感じるものがありました。後で聞いた話ですが、この一帯は、八幡製鉄を支える、筑豊の石炭の運搬や鉄鉱石の輸入、もちろん輸出や輸送でしょうか。とにかく大きな富を築いた人たちのいわばお屋敷街だったそうです。

門構えにも風格がありましたが玄関を入ってびっくりしました。

一枚板を横遣いにした廊下、庭に向かう梁は屋久杉の一本材で4間か5間もあるものです。
直ぐに「案内しましょうか」と係の藤本さん登場。

廊下から手入れのされた庭も素敵。ちょうどマユハケオモトが開き始めていました。
「あら。マユハケオモトが!」とつい声に出てしまったら、説明してくださっていた藤本さんが「茎が平べったいところから厚みが出てきて、蕾もふくらんでくるのですよ」
さあ、そこから楽しい説明が始まりました。
「火野葦平はこの庭で動物を飼いました。ゾウ、キリン、ライオンのどれでしょう?」
「ゾウは大きすぎるし、キリンは背が高すぎる。ライオンしかない…」
「大当たり!ライオンといっても大阪のキグレサーカスで生まれたライオンの赤ちゃんだったのでネコみたいなものでしょう?家族みんなで可愛がったようですよ。葦平が亡くなった後に死んでしまったらしい…」
「だいたい1,000円で家が建つと言われた時代に11,450円かけたそうです。葦平の印税を使ってお父さんが作ったのです」
さあ、お座敷に入ります。
しめ縄が張られた床の間。床柱もいわれがありそうだし書院の壁も見事なものと見ていると、詳しい説明が始まりました。

「床柱は鉄刀木と書いてタガヤサン。とても読めませんがなぜこういう当て字なん
でしょうね。黒檀、紫檀と並ぶ三大唐木の一つ。とにかく硬くて重くて水に沈むそうですよ」
帰宅後検索してみたらいろいろ発見がありました。
Wikipediaを貼っておきます。
タガヤサン

南方特産ですがなんと蛇結茨(ジャケツイバラ)の仲間だということがわかりました。ここ伊豆でも目を凝らせばみつけることができるジャケツイバラ!
今年5月に書いたブログ記事のはじめに近所に咲いた蛇結茨の写真を載せていますので、興味ある方はご覧ください。
「2040年に認知症高齢者は584万人に」

名前の由来は「フィリピン語のtambulianが変化したもの」らしいです。

書院の袖壁も見事な細工でした。
藤本さんが「欄間を見てください。黒柿と言って柿渋が固まって景色を作るんですね。それを生かしながら木工品をプラスして作った欄間です」
上から、刀、兜、河童、富士山。

葦平のお父さんは刀が好きだったらしく、下の写真の真ん中にある箪笥の中身は全て日本刀だったというお話もありました。

箪笥の引き手。
この箪笥の側面に発見。奥に床の間が見えます。


奥の間にはアイアンアートの展示がありました。
北九州は鉄の都なのです。
トイレもお風呂も意匠を凝らしたものでした。天井に注目!


いよいよ書斎。



葦平は1960年、この書斎で自死…
戦中に大ヒットした兵隊三部作などもかえって深い傷になっていたのでしょうか?
玄関脇のお部屋は、前列右から二人目、葦平(後列左端)の妹さんの子である、あの中村哲さんのコーナーでした。

個性的な玉井家の人々。左端ヒゲの男性が父、玉井金五郎。その右は、不本意ながら大学を中退して故郷に帰らされ事業を継ぐように言われた頃の葦平。

下の写真は、九州の文壇人を招いた宴席の記念写真だそうです。
自死を選ぶような一面と九州の文壇をひとまとめにするような豪放さが葦平にはあったと思いました。

一方で、庭の河童と遊ぶのも日課だったとか。


私たちの戸畑高校校歌と応援歌は、こんな火野葦平さんが作ってくださったのです。


最後の最後に、玄関の上り框の亀の細工に驚かされました。
藤本さん 小松さん 
長い時間、楽しませていただいてありがとうございました。

それから、もう一つの目的遂行に。
「高塔山展望台から皿倉山を見る」





洞海湾には小さい入江や岬がたくさんあってびっくりしました。
山頂には釘を打たれたお地蔵さまが安置されていました。悪戯をするカッパを封じるためにお地蔵さまに釘が刺さっている間は、悪戯をしないという約束を取り付けたという伝説があるそうです。実は河伯洞のアイアンアートの作品の中に全く同じテーマの作品がありました。葦平はこの伝説を「石と釘」という作品にしたそうです。



若松を堪能して、若戸大橋を渡って、戸畑へ帰りました。
八丁さん。素敵なアイディアのミニトリップありがとうございました。今度はいつご案内いただけるでしょうね〜
どうぞ体を大切に楽しくお過ごしください!

by 高槻絹子




















北九州便りー喜寿同窓会

2024年10月31日 | 私の右脳ライフ
戸畑高校18回生の喜寿同窓会がありました。
古希同窓会は90数名の参加者だったのです。あれから7年。卒業後ほとんど60年。
幹事さんたちはハラハラしたようですが、蓋を開けると予定参加者73人という、嬉しい想定外が起きてしまいました。私を含め健康でないと参加できないと、まずは感謝の気持ちが湧き上がってきました。
今回お世話していただいた幹事団の代表として石田さんのご挨拶から会は幕を開けました。垂れ幕は例年通り幕田さんの作品です。
あちらこちらで、お話が盛り上がりいいムード!
喜寿同窓会に参加する人たちは、皆さん生活を楽しんでいます。
幹事の皆さんを筆頭に、民生委員とかボランティア活動とか。頷ける生活ぶりです。
「卓球にはまってるの。夫と一緒に週4回」とT中さん。
「息子一家と2週間フランスに行って帰ったばかり。この歳でね〜」と笑っていたのはO田さん。
「隣に娘一家がいてね。孫の塾の送迎を任されてる」と話してくれたN井さんは、ご主人を見送った寂しさをしみじみと語ってくれました。でもちゃんと役割を見つけて前向きに生きてくれてます。だってこの同窓会に出席してくれたんですものね!
国際的に活躍している幕田さんが、じゃんけん勝ち抜き組への景品をその場で三枚も揮毫してくれました。写真はその「龍」「和」「楽」のうちの「楽」

また、船越さんはお仲間とライブ演奏を。BGMに懐かしい曲が流れました。つい口ずさんでいる私に選曲の妙を教えてくれましたね!ありがとうございました。

お決まり、応援団演舞も。
校歌や応援歌の合唱も、胸に迫ってくるものがありました。
この二つの曲は火野葦平作詞、小関裕司作曲。
当時売れっ子だったお二人に依頼した経緯はわかりませんが、作詞は精魂込めて作ってくださったと聞きました。



二次会にも参加して、名残を惜しみました。
おしゃれなライブハウスです。

駅前ビルの最上階にあって、屋上を取り込んだおしゃれなお店でした。

一次会と言い、この二次会といい本当に幹事の皆さんありがとうございました。
2024年10月30日の小倉の夜景は、いつまでも心に点り続けると思います。




写真を担当してくださった萩さんにスペシャルサンクスを。
FBの「戸畑高校18回生の会」のカバー写真も古希から喜寿集合写真に早速変更完了。
たくさんの写真をFB「戸畑高校18回生の会」にあげてくださって!200枚くらいもあったでしょうか?スナップ写真のみんながイキイキと表情豊かに写っていて、どの写真もここに転載したいくらいですが、昨今は色々厳しいので…
一枚だけ使わせてくださいね。
21歳年下の39回生のT田さんが会場に待っていてくれました。T田さんとの心温まる交流もなかなか得難いご縁だと思います。
「夏の挑戦ー負うた子と遊ぶ」
夏の挑戦③ー負うた子と遊ぶ - 脳機能からみた認知症

夏の挑戦③ー負うた子と遊ぶ - 脳機能からみた認知症

北九州市の戸畑高校天籟同窓会関東支部の会長をした時に、本部同窓会事務局をやってくださっていてお近づきになったT田T子さんとは21歳の歳の差を物ともせず、ずっと付き合...

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「おしゃべりしたくなるので、メールも控えてました。サプライズプレゼントにしたかったので」と持ってきてくれたのは、紫入りのバンダ(蘭)のコサージュ。すぐに胸につけてしまったので写真がないのですが、萩さんが各テーブルを回って撮ってくださった中に見つけました。
二人に感謝を込めて、恥ずかしながら。

by 高槻絹子

















10月の右脳訓練ー石川雲蝶
10月の右脳訓練1ー石川雲蝶 - 脳機能からみた認知症

10月の右脳訓練1ー石川雲蝶 - 脳機能からみた認知症

10月には十日町での仕事がありました。朝6時過ぎに家を出て、熱海、東京で新幹線に乗り換えると越後湯沢駅に9時半に着きます。レンタカーを予約しておいて、念願の越後のミ...

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左脳の働きを失くして、右脳で感じる世界の話ージル・ボルト・テーラーさん(再掲)

2024年10月29日 | エイジングライフ研究所から
昨日新しい友人ができました。音楽家ですから右脳の話で盛り上がりジル・ボルト・テイラーさんの話になりました。
以前に書いたブログがあるとお話しましたから今朝チェックしてみたら、「脳科学者ジル・ボルト・テイラー博士の右脳ワールド」として動画から始めていた記事の動画が、再生不能になっていましたので再挑戦しました。
(クリックしてみてください動画が開きます)

以下はもともとの2016年8月の投稿です.
「右脳と左脳は得意分野が違うーその2」としてMinoru  Hanzaさんのことをブログに書いたのは、6月のことでした。そのMinoru Hanzaさんとフェイスブックともだちになったのですが、さっそくユーチューブを記事にアップしてくださいました。
私はこの「奇跡の脳」は読んでいたのですが、この20分足らずの本人が語る左脳障害の実態に圧倒されました。
いや、訂正が必要です。
左脳障害(失語症)は、様々な左脳障害の方にお会いしていますから、私にとって障害をいくつかのパタンに分けて理解することはそんなに難しいことではありません。むしろ、障害を受けた左脳を、細かく分析的に理解していくという姿勢で仕事をしてきました。
もちろん、左脳は障害があるけれども、右脳の例えば、図形の認知力、構成力、音楽関係の能力、対人関係を円滑に保つ能力をはじめとして、パズルやゲーム、たとえ右手にマヒが残っていてもさまざまな創作活動など、「できること」を実感してもらいながら脳リハビリを指導していくことは、私にとって、左脳訓練にもまして大切な仕事でした。
生活していくときには、そのようなこまごまとした「できる・できない」という観点はたしかに重要です。ですが、それは皮相的なこと。
カラスウリ満開。朝までにはしぼんでしまう…

左脳がうまく機能できなくなった時、つまり右脳で自分や自分の周囲を「わかる」ということはどういうことなのかを、右脳で生きるということはどういうことなのかを、これほど生々しく教えてもらった経験はありませんでした。私はびっくりしながら動画を見ていました。
「右脳は現在を感じ、左脳は過去と未来を考える」まではまだ想像できますが、「宇宙とつながるとか、歓喜に包まれるとか…」になると、考えたこともありませんでした。
カラスウリ今から開花

私のブログの右欄にあるカテゴリー「右脳の働き」にはいろいろな側面から右脳の大切さを書いてきたつもりです。深さが全く違いますが少し紹介しておきます。
結婚記念日―左脳と右脳のせめぎあい
月下美人も一夜花
 
本は読んでいたのです。
活字で読んだときの理解できた内容と、本人が語る中で理解していく内容の、その質の違いにも触れないわけにはいかないでしょう。
ことばで書かれたものは、読者が文字を読み、文章を理解することで 、著者の伝えたい内容を受け取っていくわけですね。
一方、話すという作業も、同じようにことばを使います。
ただし、語る人は、前頭葉と右脳が連携プレイしながら、できるだけ自分の伝えたいことが伝わるように声の抑揚、高低、大小と左脳が選択した言葉や文章を色づけていきます。このことばを彩っている語り手の右脳の思いを、聞き手は、自分の右脳を駆使してわかっていこうとするのです。
このビデオを見てもわかるように、「声」だけでなく、 表情や、体の動きからだって、訴えたいことが強調されて伝わってくるでしょう。
ことばを選択してくるという過程は左脳が機能しなければできませんから、大きく左脳障害を受けてしまった人は、言葉なしのコミュニケーションしかできません。肯くとか、首を振るとか、うれしい表情、悲しい表情、困った表情など表情で表しますね。
それから昔から言われる言葉があります。「目は口ほどにものを言い」。

学生時代に教わったことを思い出します。
人間だけが持っている言語という高等な機能は、左脳が繰るということから、左脳を「優位脳」といい、右脳を「劣位脳」という表現でした。
左脳は、デジタルな情報処理をしますから、小学校の教科で言えば、国語、算数、理科、社会のように言葉で能力が測りやすい教科の担当になります。
それに対して右脳は、音楽、図画工作、体育などのようなアナログ情報をもとにした教科を支えます。
日本の社会は、学歴主義がまかり通ってきましたから(昨今は少しは変化してきたようですが)入試に有利な左脳教科を重視してきたことは否めないでしょう。
ホラ、ここからも左脳が優位脳という考え方が社会にしみわたっているといえますね。
「左脳は仕事や勉強、右脳は趣味、遊び、人付き合い。よく遊びよく学べの遊ぶのは右脳、学ぶのは左脳」などと講演では説明しています。

昔のように定年退職したらそろそろ人生のお迎えも来るような時代から、90歳代も珍しくないような長く生きる時代になりました。脳の機能を持たせようと思ったらどうしても右脳に働いてもらわなくてはいけないのです。
むしろ、第2の人生に入ったら、仕事の左脳よりは遊びの右脳の方がはるかに大切な働きをしていきます。右脳が豊かな人たちがどんなに人生を豊かに楽しく生きているかは、周りを見渡せばいくらでも見つけることができるはずです。
今回のジル・ボルティ・テーラーさんの動画から、もっと根源的な働きを右脳は担っていることもわかりました。右脳を劣位脳というような考え方は、文字通り過去のものにしなくてはいけません。
ここまで書いて、もう一言。
ジル・ボルティ・テイラーさんの右脳に対する解説には本当に感動したのですが、右脳や左脳を駆使する脳の司令塔である「前頭葉」に対する言及がない・・・残念です。

by 高槻絹子

認知症治療薬のメモ

2024年10月28日 | エイジングライフ研究所から
このブログでは、認知症治療薬に対しては懐疑的というよりも否定的な投稿を続けてきました。
対象はエーザイがアリセプトの特許切れの後に発表したアデュカムマブや最近のレカネマブでした。
ヤマボウシ

ところが10月25日のニュースで「英医薬品・医療製品(MHRA)は、23日米イーライリリー社の早期アルツハイマー病治療薬ドナネマブを承認した」と知りました。「ブルータスお前もか!」と思いながら続けて読むと「英国の国立医療技術評価機構(NICE)は、患者の利益が比較的小さく費用に見合わないとして、公的医療制度での使用に否定的な勧告案を示した」
「おやま。またまたブルータスお前もか!」副作用だけでなく、効果そのものも疑問視されていることと、あまりにも高価という点は、いち早く認可したアメリカでも指摘されています。
レカネマブとドナネマブの違いについては国立長寿医療研究センターの記事に詳しい解説があります。
アルツハイマー病の新しい治療薬(中編)ドナベマム

~マブという舌を噛みそうな薬名についてもちょっと解説しておきます。
アミロイドβのような特定のたんぱく質に対する抗体を作って、そのたんぱく質を排除する薬を抗体医薬といいますが、その薬の末尾は~mab(マブ)という表現をされます。すべてこの種の薬は高価なのです。


1999年に初めてこの種の薬がアミロイドβ排除に有用だとわかり、一斉に研究が進みましたが、残念なことに髄膜炎という重篤な副作用が見つかりあえなく中止。
さらに大手製薬会社で新薬の研究にしのぎが削られたのですが、次に出てきた結論は「アミロイドβを排出させることはできるが、認知機能は改善しない」。
ファイザー社はバピネウズマブ、イーライリリー社はソラネズマブ、ロシュ社はガンテネレマブ。(~マブのオンパレードでしょ?)全部が撤退…
フジバカマが咲きましたがアサギマダラは来ません。

皆さんは記憶にありますか?
今はエーザイのレカネマブが脚光を浴びていますが、ちょっと前は同じエーザイのアデュカヌマブがさっそうと登場したのです。
「今までのアリセプトはいわば対症療法だったが、アプローチが根本的に違う画期的な認知症にさせない薬(ではなく遅らせるですが)」という触れ込みだったはず。
このアデュカムマブは、米食品医薬品局(FDA)に2020年7月申請。2021年6月に条件付き承認されました。ところがFDAの下部組織の末梢・中枢神経系薬物諮問委員会がほとんど全否定、反対の委員が職を辞すというドラマチックな展開になりました。

日本では2020年12月厚労省に申請。2021年12月に継続審議。承認見送りという経過になっています。
この顚末に対する株価の変動を見てください。株価は正直です。
シロバナフジバカマ

アデュカヌマブはひっそりと表舞台から消えさって、次なる役者はレカネマブ。
アデュカヌマブはアミロイドβがある程度固まったものに対して抗体が働きかけて、固まりを排出する仕組みです。
それに対してレカネマブは、アミロイドβが固まる前に排出させることができるのが最も違う点です。だからより早期が対象。アミロイドβが溜まっていないことをアミロイドPETか脳脊髄液検査で確認する必要があるのです。
どうもレカネマブの方が有効っぽい印象が強いでしょう?
ちなみに、アデュカヌマブもレカネマブもエーザイとバイオジェン社の共同開発です。
ハイビスカスローゼル(ハイビスカス茶)

何度もこのブログで言っているように、認知症発症の原因がアミロイドβならば、創薬開発も意味があると思いますが、エイジングライフ研究所の主張は全く違います。
脳には正常な老化がある、それを器質的に見れば、アミロイドβによる老人斑もできるでしょうし(加齢とともに顔にもシミができます)アミロイドβに疑問を持つ人たちは神経原線維変化が犯人ではないかというのですが、神経原線維変化も増えてくるでしょう。
そういう加齢とともに目で見える形で起きてくる変化ではなく(従来は死後剖検。最近ではアミロイドの量は血液で測定できるようになってきています)、機能的に見直してみると、正常老化の道筋をたどっている人たちの脳の働きと認知症になっていく人たちの脳の働きはできなくなる機能に差があります。

繰り返しますが、それは器質とは無関係です。
老人班があっても、萎縮があっても脳の機能が万全な人がいます。
きれいな脳をしていても働きが悪い人もいます。
その差を生むのは、脳の使い方です。イキイキとその人らしく生きているかどうか、楽しい変化のある暮らしぶりをしているかどうかが認知症になるかならないかのカギだと私たちは思っています。
2021年6月に書いた記事をコピーしておきます。
「ナンスタディ」という有名な 研究があります。これは1986年に始まったノートルダム教育女子修道会 の75歳以上のシスター(678名)の追跡調査で す。現在も継続中。
<1>修道院に保管されている修道女の個人記録や利用記録を提供すること
<2>年1回、身体能力と精神能力の詳しい検査を受けること
<3>死後、脳を取り出して解剖すること
ここからいくつもの仰天させられる情報が飛び出してきました。
解剖結果からアルツハイマー変化と表現される、老人斑、神経原繊維変化、萎縮。それに脳の重さが記録されました。本にまとめられた時点で300例を超えていたそうです。
「100歳の美しい脳」デヴィット・スノウドン著

*アルツハイマー変化は脳重量・萎縮の状態・アミロイドβ沈着状態からみます。
*ステージというのがアミロイドβが沈着している状態です。0が最小、増えるとともに数値があがっていきます。
*青欄は状態が良好、赤欄は状態がよくないことを表しています。
82歳の例のようにアルツハイマー変化がほとんどなく、絶対ボケてるはずがない脳を持ちつつ、重度の認知症をきたした例。91歳と?歳の例のようにアルツハイマー変化が大きくても、全く認知症がない例。さらに100歳という超高齢でありながらアルツハイマー変化がなく、認知症状も皆無であった例。
これは実証研究ですが、どう考えますか?
脳のアルツハイマー変化と認知症の発症には関係がないということにならないでしょうか?
少なくとも一直線に、アミロイドβが認知症の原因とはいいがたい。

ちなみにもうひとつ。2022年6月に発表されました。「サイエンス」は世界最高峰の科学雑誌です。
「Science」は、2006年に発表され、その後のアルツハイマー病の研究に大きな影響(アミロイドβ原因説。引用論文は2200報!)を与えた論文に、改竄された内容が含まれている可能性があるという調査結果を発表した。
認知症の原因究明からいうと、天地がひっくり返るような発表に思えますが、おおきなニュースになってないのはなぜでしょうか?
どうして専門家たちはいまだにアミロイド説から自由になれないのでしょうか?

by 高槻絹子


参考にしたサイトです。
国立長寿医療研究センターの記事は、専門的すぎますが、知識欲は満たしてくれます。歴史的な経過などはよくわかります。残念ながらアミロイド原因説に乗っかった上での解説です。

人生はワクワク

2024年10月26日 | 私の右脳ライフ
今朝、いつものようにFBをチェックしました。
鈴木義人さんの投稿が目に入りました。
静岡県伊豆市戸倉野343-1でカフェグリーンポケット、別名石窯焙煎コーヒー研究所を楽しみながらやっている友人です。利き珈琲は必須。ランチも極上で、特製オムビーフカレーと自家製燻製プレートで毎回真剣に悩みます。
投稿は、山法師の実が色づいてきたこととそれが南国フルーツのマンゴーのようにおいしいというお知らせでした。
マンゴーのような味というのですから、「どこかで見つけて一ついただいてみようっと」心に決めました。
ところで、夫からランチのお誘いがありました。
最近の私たちのブーム、南伊東の鮨ダイニングかま田でめでたく意見の一致を見ました。

夫はいつもの穴子天丼。私は鮨パフェ。前回訪問時に初めて気づいたメニューです。

このたくさんの食材を見事なテクニックでパフェに仕上げてくれます。

板前さんの美的センスを見てください。

パフェでしょう?

「ごちそうさま」と店の外に出て、目が点!
今朝、心に留めた景色が目の前にありました。

見送ってくださっているスタッフに今朝のFBの記事をお見せして「一ついただいていいですか?」とお願いしました。

帰宅後、味見。
実食!
渋味も苦味もなく、確かにマンゴーのような食味でした。新しい世界が広がりました。
積極的に生活しようとする姿勢は、小さなことの積み重ねで人生をワクワクさせてくれますね。

by  高槻絹子












人生はいろいろ

2024年10月22日 | 私の右脳ライフ
酷暑のせいか、夏の花のはずの月下美人が開花。


10月19日は戸畑高校天籟同窓会関東支部の総会と予定帳に書き入れたのは、去年10月22日総会の日。会場は恒例の銀座マリオットホテルからバトゥール新宿に変更でしたから、Google mapを使って行き方をチェックしていました。
さらりと書きましたが、実はこういうチェックは大好きなんです。
まず会場のホームページに入ってアクセス方法をチェック。地図でどこにあるのか把握して、電車で行く時は最寄駅の確認、知らない駅だと路線図をみて、知ってる駅との関係を調べます。
地方はこれでうまくいくのですが、首都圏は難しい!
最初は新しい地下鉄についていけませんでしたが、そのうち次々に実現していく私鉄の延長や地下鉄の乗り入れが複雑すぎて難しいのです。
それと路線図上では乗り換えになっていても、一駅歩くというようなことや、その逆のホームの向かい合わせで乗り換えできる駅など、細かい情報まで追いつくのは大変です。
今度の会場の最寄駅は東新宿ですが、新宿駅や東大久保駅、西武新宿駅からでも行けそうでした。
Google mapで検索してみた結果です。
上京するときは熱海から新幹線が定番ですが、まあいろいろな行き方を教えてくれています。
一番上を開いてみたら、熱海から東海道線で横浜。そこで東横線に乗り換えたら、なんと乗り換えなしで東新宿直通!渋谷から地下鉄副都心線に乗り入れているのです。副都心線に乗るのは初めてでした。東新宿の後は池袋経由で和光市まで一本!そして池袋からは有楽町線と同一路線とのこと。埼玉県、東京都、神奈川県にまたがる線が一本化したというニュースも承知していましたが、初めて実感しました。
横浜から地下鉄みなとみらい線で元町中華街まで直通していることは何度か乗って理解済み。ただし、横浜は通過した状態で乗っていました。
何十年ぶりかの東横線横浜駅は最近の新しい地下鉄駅に特徴的な地下深い駅に様変わりしていました。横浜駅で乗り込んだ電車は、かつて知ったる東横線車両とは様変わり、モダンな印象でした。今まで紫色の吊り輪や車両ドアが全面ガラスというのはみたことがありません。

スムーズに会場到着。先輩にご挨拶して、同期生と盛り上がり、娘のような後輩とも久しぶりに顔を合わせて元気を確認しました。
毎年、福引大会は結構盛り上がります。私は後輩の井上さんが経営しているグローバルフルーツのオレンジ一箱が当たりました。もともと世界中から旬のフルーツを輸入してホテルやレストランに卸すという会社ですが、最近はそのレベルの高いフルーツを通販で買えるようになりました。だからワクワクです。
同期の幕田魁心さんは高名な書家ですが、毎年色紙を提供してくれます。なんと今年は同期生の吉武さんが引き当てました。うれしい笑顔が並びました。

幕田さんはスピーチも。

毎年胸が熱くなる応援団の演舞。

O崎さん、パソコン担当ともにお疲れさまでした。

これまた恒例の二次会。
会場は同期生、銀座の毛利バーグラン
伝説のバーテンダー毛利さんは同期生です。毛利さんが作るモーリマティーニを求めて世界中からお客さんが来ます。

楽しい時はすぐに過ぎ、私は後輩二人と一緒にホテルで一泊しました。
十分におしゃべりを楽しんで、二日目の目的田中一村展

後輩のお知り合いの方が、奄美大島の田中一村を見出し世に広めた方で、二人で心を込めて作品を追っていきました。時々「この作品好き」「素敵」「素晴らしい」などなど自由に右脳全開した時間でした。
東京都美術館のレストランミューズは上野精養軒直営店ですから美味しく軽食をいただいて、上野駅でお別れ。
後輩の一人は、山手線で新大久保、西武線に乗り換える。もう一人は銀座線上野駅から東陽町。私は東京駅へ行き新幹線。と見事に三者三様。山手線逆方向で帰る後輩が、私の進むべきホームまで送ってくれました。独立独歩の私にはあまりないことでちょっとびっくりしましたが、とっても嬉しかったのですよ。
近所に咲いていたブットレア

ここで報告記終了したかったのですが、追加があります。
新幹線に乗り込んだ時にちょっと膝を捻ったようで、車内に入ろうとしたら「あれっ膝が痛い…」
座席を触りながら自由席まで行き、熱海駅でそろそろ乗り換えて、城ヶ崎海岸に迎えに来てくれた夫の車に乗り込む時には「どういう体勢なら乗れるんだろう」という状態。
日曜日の夕方でした。「骨折はないけど、筋かなあ」と勝手な自己判断して検索したらRICEの処置をすることがわかりました。
  • Rest:安静
  • Ice:冷やす
  • Compression:圧迫
  • Elevation:挙上
とにかく保冷剤で冷やしながらタオルでグルグル巻きにして休みました。
せっかくの楽しく充実した東京旅がとんでもない結末になってしまいました。
月曜日朝一番に整形外科受診。
  • ボックスセージ

診断は「半月板がいたんだのでしょう」そういえばここ1ヶ月くらい左膝が不調だったというと「ダメージがあったので、小さな刺激が大きな負荷になった」安静にして痛み止めと湿布という対応を教えていただきました。それからまる二日。
なんということでしょう!8割方よくなっているという感じなのです。
全く人生はいろいろですね。

by 高槻絹子









レカネマブ 世界では疑問視されています。

2024年10月18日 | エイジングライフ研究所から
けっこう長い間悩みながら、レカネマブ投与が本格化してきたことに対してこのブログで疑問を表しました(10月16日)。そうしたら昨日のネットニュースで以下の記事に遭遇。
[東京 17日 ロイター] - エーザイ(4523.T), opens new tabは17日、米バイオジェン(BIIB.O), opens new tabと開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」について、オーストラリアの医療製品管理局(TGA)が早期アルツハイマー病の治療法として推奨しないとの初期の審査結果を示したと発表した。
ニューヨークランプミュージアムで。2024.9.28

欧州ではレカネマブは否定的だということは、もう少し前からはっきり表明されていました。
[7月26日 ロイター] - 欧州連合(EU)の欧州医薬品庁(EMA)は26日、エーザイ(4523.T), opens new tabと米バイオジェン(BIIB.O), opens new tabが開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」について、販売承認しないよう勧告した。認知機能低下を遅らせる効果が、脳腫脹などの重篤な副作用のリスクに見合わないとした。
エーザイとバイオジェンは再審議を求めると表明。ただ、当局にどのような情報を提供するかは明らかにしなかった。
欧州委員会はEMAの見解に沿った決定を下すことが多い。

さらにフランスでは2018年から認知症治療薬は保険適応を外していたことは知ってる方もいるでしょう。
フランスの保健省は6月1日、アルツハイマー型認知症治療薬の保険償還を8月1日から停止すると発表しました。 対象となるのは▽ドネペジル(アリセプト)▽ガランタミン(レミニール)▽リバスチグミン(イクセロン/リバスタッチ)▽メマンチン(メマリー)――の4剤(カッコ内は日本での製品名)。2018/06/07 

そもそもレカネマブを承認している国は、2か月前の情報では世界で8か国だけです。
レカネマブは、英国のほか、米国、日本、中国、韓国、香港、イスラエル、アラブ首長国連邦で承認を取得し、米国、日本、中国で発売されています。2024/08/22

なぜ、日本ではレカネマブが認知症治療薬としてこんなに脚光を浴びるのか、どう考えても理解できません。前記事で書いたように東京都のHPでは特設サイトまで立ちあげている…
上記の記事を読んでみると、脳出血や脳浮腫という副作用の大きさが、認知症発症予防の効果を超えてしまうというのを否定の理由として挙げられています。
レカネマブ推進者としてよくマスコミで解説されている東京大学大学院神経病理学分野教授の岩坪威先生の発言。(m3.com2023年10月10日 要約)以下岩坪先生の発言は青字で表記してあります。
「レカネマブ投与群では、脳の浮腫や滲出液貯留(ARIA-E)が12.6%に、微小出血(ARIA-H)が17.3%に認められました。プラセボ群ではそれぞれ1.7%、9.0% 」
実はアメリカでは2名の死亡例もあるということです。(因果関係は一応否定されています)

ここでもう一度、1.5年の投与で発症予防ができたというエーザイ側の主張をおさらいしておきましょう。
CDR(Clinical Dementia Rating:臨床的認知症尺度)を用いてその効果を評価しています。
CDRは 「認知症の重症度を評価するためのスケールの一つ。このスケールの特徴は、認知機能や生活状況などに関する6つの項目を診察上の所見や家族など周囲の人からの情報に基づいて評価する『観察法』です。それぞれの項目は『健康』な状態から「重度認知症』まで5つの段階に分類されています。評価表に基づいて分類することで認知症の程度だけでなく、特に障害されている機能を把握し、予後の見通しを立てるのに役立ちます 」
6つの項目の詳細は記憶、見当識、判断力・問題解決、社会適応、家庭状況・興味関心、介護状況の6分野です。
これが全体。

レカネマブは疑わしいと軽度が対象。上から記憶、見当識、判断力・問題解決、社会適応、家庭状況・興味関心、介護状況の6分野。

健康(CDR=0)、認知症疑い(CDR=0.5)、軽度認知症(CDR=1)、中等度認知症(CDR=2)、重度認知症(CDR=3)の5段階で評価します。
まったく問題がなければCDRスコア0点。最重度の場合はCDRスコアは3×6=18点になります。
数字で表されるのでとても客観的なようですが、あくまでも観察もしくは家族などからの情報で評価する「観察法」なので、適切な評価かどうかは難しいところがあります。
子細に見てみると症状の分け方そのものにも判断が難しいところがあったります。
健康から認知症疑いへの評価になると、1分野で0.5点CDRスコアが上昇します。6分野全体的に認知症疑いになってしまうとCDRスコアは0.5×6=3点になります
さて、レカネマブを投与したグループとプラセボグループのCDR評価による比較が、有効であるという根拠として提出されています。
岩坪威先生の発言。(m3.com2023年10月10日 要約)
「認知機能低下の抑制効果は、18カ月間で見られた認知機能の悪化量(CDR-SBスコア)は、レカネマブ投与群の1.21に対し、プラセボ群は1.66。つまり、投与群でも認知機能低下の進行は食い止められなかったが、プラセボ群での低下と比べると、悪化量は投与群で27.1%小さいことが示されたことになる。このことから、レカネマブの投与によって、認知機能低下のスピードが3割弱遅くなったと解釈できます 」
レカネマブを投与してもCDR評価は1.21悪化した。
レカネマブを投与しないとCDR評価は1.66悪化した。
つまりレカネマブ投与した効果はCDR評価で言えば1.66-1.21=0.45あったという結論だといっているのですね。
投与しなければ1.66になるところが0.45少なかったから
0.45÷1.66×100≒27.1%
この数字をもとに認知症になるスピードを約3割遅らせることができるとマスコミでは宣伝されています。

この治験は北米、欧州、アジアの235施設で早期アルツハイマー病(正確に言えばアルツハイマー型認知症ですが)当事者1,795人(レカネマブ投与群:898人、プラセボ投与群:897人)でスタートしています。
大規模で、客観的な調査の印象が迫ってきます。投与期間は1年半。3か月ごとの計測で最後は1,471人でした。15%くらいは減るものなんでしょうか?

続けて0.45の差について。
「認知機能の低下が軽い方々(各項目の点数が0.5から1以内)を対象にして、平均で1つの項目にMCIと軽度認知症レベルの違いに相当する差が出た、ということが大きな意味を持つ 」
もちろん有意差検定などは行われていると思いますが、前に掲げたCDRの表を見てください。「0.45というのは6分野のうち1分野だけ見ても段階の評価は変わらなった(どの分野も認知症の疑いから軽度認知症の症状に移行しなかった)」ということです。実際は投与群で1.22、プラセボ群で1.66増加したのですから、言い換えると投与群でも2分野で低下し、プラセボ群では3分野低下していますが。
数字だけが「有効!有効!」と独り歩きしているような気がします。
岩坪先生は「患者やその家族がレカネマブの効果を実感することは難しい。症状の進行スピードが抑えられ、『日常生活の中のいろいろなことについて、より良くできる(ではなく、できていることができ続ける。岩坪先生のお考えだと進行するが前提ですから)時間が増える』ということは、大きな意味を持つ 」といわれています。
私は使ったことはありませんが、臨床の場面ではCDRは2~3の点数評価の変化があるときに、改善や低下と理解します。

さらに続けて「投与期間について」
「レカネマブを投与していても、認知機能はゆっくり低下し、やがて中等症に至る。軽度認知症段階と比べて、残った神経細胞の数が一段と少なくなる中等症レベルまで進むと、レカネマブでAβを除去したとしても有効性が期待できにくくなる。中等症レベルになったところで、投与の見直しや別の治療への切り替えを考えることが必要になる可能性がある」
6分野すべてが、認知症の疑い(CDR=3)から、6分野すべてが中等症になる(CDR=6)という時点まで待つとして、1年半投与してもCDRが1.22進行したのならばCDR=3になるには3.7年かかるということになります。
1分野でも、CDR=0.45の変化が大きな意味を持つという解説を踏まえれば、CDR=3.5になることで方針変更の可能性も考慮すべきということになります。それには0.6年で到達します。つまり投与を始めて1.5+0.6=2.1(年)でレカネマブ投与の意味はなくなる…

私たちの主張している、脳機能からみる脳の生活習慣病としての認知症という発想からは、正常者からの予防活動も指導できるし、MCIよりもクリアに認知症の超早期段階も捕捉できるので、早期発見早期治療につなげることができるのに。と今日もまた切歯扼腕してしまいました。


いよいよレカネマブ投与が始まりました

2024年10月16日 | エイジングライフ研究所から
ブログの更新ができませんでした。遅れるときは遊びすぎてブログが書けないという状況なのですが、今回はちょっと違います。
友人たちが「新しい薬、すごいんでしょ」とか「今度の薬は、働き方が違うので、認知症を治せるんでしょ?」とか言ってくるのです。
サラっとニュースに目を通すとこういう結論になると思います。よく読めば、「認知症が治るのではなく、進行を遅らせることができる」と具体的数字をあげて書いてあります。その数値すら私たちには懐疑的です。懐疑的というか筋が通らないのですよ。
何度も何度も、このブログの中で声をあげてきました。確かに小さな声ではありますが…

世の中の大きな流れとして、認知症は投薬で対応できるという考えが決定的になってきてしまいました。
東京都のHPには認知症抗体医薬「レカネマブ」について正しく知ろう!というサイトが立ち上がっています。関心がある方は目を通してみてください。かなり専門的な説明もありますが、わかりやすく説明しようとなさっていることがうかがえます。でも普通に動画を見てよく理解できる人は少ないのではないかと思いました。
いま東京都で、レカネマブを投薬できる病院は55病院。なおかつ、かかりつけ医の紹介状が必要な場合がほとんど。
事前のチェックでアミロイドPET 検査か腰椎穿刺が必要。CDRかMMSE検査も必須。2週間に一度通院して1時間かかる点滴で投与される。もちろん一番問題にすべき副作用の脳出血や脳浮腫のことにも言及してあって、きちんと説明されています。が、情報量が多すぎて意味を理解するところまで行ける人は少ないかもと思われます。
福祉局高齢者施策推進部在宅支援課が担当ということで、電話をかけて聞いてみました。
質問1.予防のための投薬なので、その期間は?
質問2.費用は保険適応で結局いくらかかるのか?


質問1は「1年半」予防は継続的なものだと思いますが、1年半後は予防は必要ないとでもいうことでしょうか?治験の期間が1年半ですが何か関係があるのでしょうか?本来この質問はエーザイに投げかけるべきものですが。
質問2に関しては「ごめんなさい。病院で聞いてください。事前検査で入院するところもあり、日帰りもあるらしい。そうすると金額は全くわかりません。とにかくまずかかりつけ医に相談してからです」


この費用に関しては、高額医療制度(厚労省のサイト)があるので、薬価が高い高いと喧伝されている割には個人負担は実は多くはないのです。でも問題は国全体としての経費という発想が必要ですよね。
「公的医療保険を使用しても、70歳未満で3割負担の場合は約99,000円の費用となります。 高額療養費制度を利用することにより、自己負担額は57,600円になり、4回目以降は多数回該当の制度により、上限額が44,400円となり更に負担が軽減されます。」これは医療費月額330,000円が基礎の数字です。
(事前検査などは含まれていない)
レカネマブとして検索をかけてみると、ほんとうの問題点以外はいろいろよくわかります。
AIの回答
「認知症治療薬「レカネマブ」の薬価は、1人あたり年間約298万円です。これは、200mg2mL1瓶が4万5777円、500mg5mL1瓶が11万4443円という薬価を基に算出されています。
レカネマブは、アルツハイマー病による軽度認知障害や軽度の認知症の進行を抑制する効果があります。投与には健康保険と高額療養制度が適用されます」
もう少し詳しく見ると
「薬価は200mgが4万5,777円/バイアル、500mgが11万4,443円/バイアル。用法・用量は、10mg/kgを2週間に1回、約1時間かけて点滴静注で、患者が体重50kgの場合、年間約298万円になる。(114,443円×52/2週=2,975,518円)」
体重が75kgだと、約450万円(300万円×75/50㎏)。」

どういうわけか、国の医療費全体という考え方は少なくて、結局自己負担がいくらかだけを解説してあります。もう少し当事者たる高齢者がしっかり考えるところだと、調べれば調べるほど思いました。

もっと問題は、本当にアミロイドベータが認知症の原因かどうかという議論がなされていない点です。私たちは口を酸っぱくして認知症は脳の使い方としての生活習慣病といい続けてきていますし、これからもそこはゆるぎない主張です。
今回ちょっと、アミロイドβ説が破綻しているという立場のサイトを見つけてみました。大学。専門家。臨床医など様々な立場からの発信です。黒字が結論です。

アルツハイマー病の超早期細胞死の解明と新たな治療標的を発見(東京医科歯科大学)

本研究を通じて、細胞外アミロイド凝集を最上流の原因と考えるアミロイド仮説を訂正する必要性が強く示唆されました。
責任著者がアミロイド・タンパク質形成と記憶障害との関連を示した研究論文の図が操作されていたことを認めた。

アミロイド仮説の失敗(可知記念病院、精神科ドクター)
「アルツハイマー病の原因はアミロイドβではない!」と言ってしまって良いのではないか。


声が上がっているのは事実ですが、一般の人たちに声が届いていないのもまた事実。
そんなことを考えていると、あまりにも蟷螂之斧(とうろうのおの。無力という意味です)の気持ちになってしまって、なかなか書けなかったのです。


by 高槻絹子




コメント 





夏の思い出②-チームラボプラネッツ

2024年10月05日 | 私の右脳ライフ
韓国からの「娘」一家を、前から体験させたかったチームラボプラネッツへ連れて行きました。
何度か勧めたのですが、その魅力を伝えきれなくて実現してなかったのです。
ホテルが汐留でしたから、ゆりかもめに乗って乗り換えなしで行けるので、今回を逃す手はないなと私が一番盛り上がっていたかもわかりません。
2019年8月30日に一人で行っています。
夏の思い出ーチームラボ プラネッツ - 脳機能からみた認知症

夏の思い出ーチームラボ プラネッツ - 脳機能からみた認知症

上京のついでに、興味があったチームラボプラネッツに行ってきました。ここは…と説明がしにくい…パンフレットから引用します。「BodyImmersive」というコンセプトの超巨大な...

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今回読み直してみたら、初めての時の方が興味津々、記録も取らなくっちゃあと意気込んでいたように思います。
とにかくチームラボは、なかなか説明ができないのです。体験あるのみ!
3人が3人とも「来てよかった。高槻さん(私のことをそう呼びます。娘は当たり前のようにおばあちゃんですが)が行きなさいと言っていた意味がわかった」という感想でした。
写真は前回の方が雰囲気が伝わるような気がしますので、興味がある人は前の記事をご覧ください。
一緒に楽しむ人がいると、写真を撮るよりも楽しい気分で満足するところがあるみたいです。

最近の展覧会のチケットはスマホで買ってQRコードを見せるシステムが多くなりました。
ちゃんと買ったのに見つからなくてドキドキすることがあったのですが、教えてくれました。
スクリーンショットを撮っておくといい!確かに。若い人といると自然に知識が身につきます。

この入場券の背景になっている場面は、前回の時にはなかったプログラムです。2018年7月7日〜2027年末という会期が決められた展覧会ですが、進化し続けているのですね。
若い娘と一緒になって楽しみました。



私は2度目の体験ですが、でも、ちゃんと声が上がりました。



Parkさんは理系の人ですから、小声で解説してくれます。1回目よりは少し成り立ちがわかったようなところもありました」
思ったよりも狭かった。鏡や光を工夫して境界を曖昧にしているのです!
新しい展示は、生きた花に風を当てて無限に動かしています。入場人数を減らして、その自然の中に入り込むのです。身を屈めて潜り込むその方法もなんだかとってもアナログっぽくて、デジタルの行き着いた先にアナログが待っていた!とちょっと感慨深かったですよ。

向こうの世界をこちらから眺めている。
あちらの世界では歩くことも寝そべることも自由です。







目が慣れたら、一つ一つの花が大きく迫ってきました。





もう一つの新しい展示もいわば自然回帰。光と霧で別の世界に誘われる…




お台場にあったもう一つの美術館、チームラボボーダーレスが、麻布台ヒルズに移りましたから本当はそちらに行きたかったのですが、定休日。
チームラボボーダーレスの進化ぶりを確認したくて、今年の初めから狙っているのですが、誰も一緒に行こうとは言ってくれません(笑)
一人で行くのもよし、心許せる友人と行くのもまたよし。
今度はチームラボボーダーレスに行ってきます。

by 高槻絹子








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