脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

認知症の一次予防としての小布施町「脳のリフレッシュ教室」交流会

2025年02月28日 | 認知症予防教室
上のスライドは、小布施だけでなく普通の講演でも使います。
データは厚労省が2023年に発表した介護保険負担金が年間11兆円を超えたというニュースで、毎年消えていくこの大変な金額をわかってもらいたくて作りました。
最近話題の認知症を先送りできるという触れ込みのレカネマブは、いろいろ探してみるとだいたい1年半先延ばしにできればいいのではないかという見通しらしいです…
私たちの認知症治療薬に対する考え方は、このブログでもなんどもお話ししていますが、結論は「認知症に効く薬はない!」
2024年10月に書いた認知症治療薬のメモをお読みください。

そろそろ25年間に及ぶ小布施町の認知症予防活動の一端を報告します。
2025年2月。「脳のリフレッシュ教室」交流会が、開催されました。

幕開けは東町上町。演目は思いがけない早口言葉でしたが、会場もノリノリ。用意されている早口言葉を撮っている人がいます。練習しようと思ったのか、誰かと楽しもうと思ったのか。このような関わり方ができることがすごいと思うのです。聴衆をその気にさせた企画もいいですね。

北部。ステージも熱がこもってますが、会場のノリに注目。このノリが交流会の特徴です。多分教室で「ノリは自分の脳を喜ばせる。右脳が元気になれば前頭葉もいきいきする」ということが身についたのですね!
富士山のデザインもみな違う。ここにも北部の面目躍如たる一面が表れています。

栗ヶ丘福原。教室は企画できる人は企画し、指導できる人は指導して、とにかく教室が楽しく運営できることが目標です。譜面台に飾りが!真剣な表情も楽しげな表情もいいですね。

以下は動画ですが、腕が悪くて申し訳ありません。上の3地区は不出来で使えません(汗)
中町中央IMG 0365 
K田さんは趣味の域を超えてませんか?皆さんもちゃんと追いついていらっしゃる。舞台に向かって左から二番目の教室最長老のI川さんは93歳か94歳と伺いました。可愛いマイクを持っている皆さんも可愛い。
都住IMG 0371
ステージの皆さんはハンカチがピン!となってますね。そして会場もハンカチを取り出して参加してくれる人、ハンカチなくても しっかり真似している人…で一体化してますね。
伊勢町IMG 0373 
これも初登場。笑いヨガ。最初のビックリムードはすぐ消えて、T野さんのお声かけで元気をもらって皆さん楽しまれたようですね。
「脳のリフレッシュ教室」というのは、正常な人が正常なままでいるための認知症予防教室の名前として、小布施町で名づけられました。
小布施町でこの認知症予防活動が始まったのは2001年の私の講演からで、最初の教室が始まったのは2002年。介護保険のスタートが2000年なので、この事業に取り組まれた当時の在宅介護支援センター長の冨田房枝保健師さんの慧眼、先を見据えた力に敬服です。
それから各地区で教室が開かれ、2007年からは全教室参加の交流会が始まりました。最近は少し教室数を少なくしているようです。
コロナで3年間は交流会が中止されましたから今年は15回目だったのでしょうか?

当初は文字通り各教室の趣向を楽しみ、最近では年齢を重ねられた皆さんが、何か一つ工夫を足しながら一生懸命に取り組んでいらっしゃるのをみて胸が熱くなることもしばしばです。カテゴリー「認知症予防教室」にたくさん記事をあげています。当初の頃の交流会の様子も見てください。
消しゴムマジックで私の右脳訓練。
世の中の大多数を占めるアルツハイマー型認知症といわれるタイプの認知症は、正常な社会生活を営んでいた人にだけ、徐々に起きるものです。
言い換えれば、たとえ現在は世の中で言われるような認知症(夜中に騒ぐ、徘徊する、家族のこともわからない。家庭生活全般に介助が必要、粗暴行為や不潔行為etc)になっていても、「3年前は?5年前は?10年前は?」と確認すると必ずその人らしい社会生活を送っている時まで至ります。
生活習慣病の予防(認知症の本体は脳の生活習慣病!)

一晩で認知症になったりしません。必ず小ボケ(社会生活にトラブルが起きる)中ボケ(家庭生活に支障が起きる)大ボケ(家庭生活に介護が必要)の経過をたどるものです。
ということは認知症の発症予防や回復を図ろうとするならば、できるだけ早期に発見することが大切ということです。そのためにはどうしても「脳いきいき度チェック」と名付けられた脳機能検査が必須ということを小布施町ではここ25年お話しし続けてきました。
もともと「脳のリフレッシュ教室」は脳の機能が正常な方を対象にしています。
初めて参加するときには正常であることの確認が必要になります。そして継続参加中にはその時々の脳機能を「脳いきいき度チェック」で年2回確認してきました。一番長く経過観察ができた方たちは20年間!なんと20年経っても脳機能が改善している方がいるというその信じられない成果については稿を改めてまとめます。

夕食は蔵部(クラブ)
HPを検索してビックリ。銀座に進出しているのですね。


小布施 寄り付き料理 蔵部|寄り付き料理 蔵部 銀座

小布施 寄り付き料理 蔵部。寄り付き料理 蔵部 銀座。ランチ・ディナーあり。長野県上高井郡小布施町大字小布施。東京都中央区銀座。

小布施 寄り付き料理 蔵部|寄り付き料理 蔵部 銀座

 


世の中にはデイサービスや認知症予防のために介護予防の観点から様々な高齢者に向けた企画があります。
認知症発症の原因をアミロイドベータの蓄積とする厚労省や専門家の方々であっても、一般の方であってもとにかく高齢者を集めて、楽しい時間を確保してあげれば元気でいられるという実感や感想を持っている人はたくさんいます。ただしその場合、客観的な指標がないのです。あくまでも実感や感想にとどまっています。
小布施町が一線を画しているのは
1.脳機能という側面から認知症を理解
2.そのための脳機能検査の実施
3.自主活動での継続
の3点です。
教室に参加することで生じる脳機能の推移を客観的に知ることができるのです。
「脳のリフレッシュ教室」は原則的に歩いていけるくらいの小さなコミュニティで「自主活動」として行われます。理由は簡単。この「脳のリフレッシュ教室」は「健康な脳を保つこと」が目的ですから「自分でやり続ける」しかないのです。知識として納得するのは左脳。色彩や音楽を楽しく感じるのは右脳。実際は左脳も右脳も使う時には必ず前頭葉の関与があるのです。「何かを実行すること」そのものが前頭葉の出番を用意して前頭葉のいきいきさを保つことにつながります。
お膳立てしてもらったアクティビティを楽しむことも悪くないのですが(一番悪いのは何もせずに居眠りすること)、地域の仲間と一緒に自主的に企画した教室なら前頭葉機能の関与の度合いが違います。
各地区には不思議なほどリーダー格の方がいらっしゃいます。その方たちが楽しそうなこと!交流会のたびにうれしくなります。
カフェ珈茅

参加する地域包括支援センターは脳機能検査とそれに基づく生活指導と年間スケジュール作成にあたってのアドバイスが担当。とはいえ小布施町のように右脳充実、前頭葉全開のこんなに頼りになる相談相手もなかなか見つからないと思います。スタッフの手作りゲームが魅力的なこと。

皆勤賞の賞状の文言それにつながる記念品の選び方にも、さすがの前頭葉と毎回脱帽。動画のところどころに映り込んでいるスタッフの皆さんからは「愛情」が感じられます。
1月に選出された大宮新町長さんはご多忙で、田中副町長さんからのご挨拶と皆勤賞授与で交流会は始まりました。

先に紹介したお楽しみの出し物が続き、私の講演。
何十年ぶりに行った母校の徽音堂に、中島千波作のステンドグラスを発見。小布施町に美術館があります。


そして今年も様々な工夫がありました。役場の若手の男性職員が交流会の最初から顔を見せていました。取材をしていましたが、高齢者の皆さんがこんなにも元気な姿を見せてくれる小布施町を実感できてきっと喜びや希望を感じてくれたものと思います。(後ほど客観的なデータもお見せします)
それだけですまないところが包括スタッフの前頭葉!
記念品授与を担当。

来年度とさ来年度の発表地区の抽選も担当。

こうして関与してもらうことで、高齢者は喜び、この若い方たちも元気をもらったはずです。
こういう工夫は前頭葉の関与なくしては起こり得ません。

考えてみれば、平均年齢は80歳に届こうかという皆さんに「左脳・右脳・前頭葉」と平気で伝えられる町になっているのですね、小布施町は。

ふろく
田中副町長との話の中で、講演会で「年間11兆円にも上る高額な介護費用について説明し、この認知症予防活動は自分、家族、小布施町、長野県ひいては国にまで貢献していると話します」といいました。その説明に使うスライドを紹介しておきます。
大宮新町長さんは子育て支援に力を入れていくとおっしゃっているようですが、元気な高齢者でいてもらうことが、その必要条件になるのではないかと思います。


by高槻絹子





高齢者の自動車事故は前頭葉機能低下が原因(再掲)

2025年02月03日 | エイジングライフ研究所から
高齢者の運転に関して、17年前の記事を再掲しました。二つ前の記事です。
今日は直近の記事を上げておきますので、高齢者と運転について考えていただきたいと思います。
特に「(続)高齢者の危険運転」の後半に紹介した田中亜紀子さんの主張「法に定められた『運転免許取り消し方法』」は、高齢者の運転を心配していらっしゃるご家族がどう対処すべきかの今後の指標になるのではないかと思います。
(2024年6月)


高齢者による自動車事故のニュースが度々報じられています。今までブログにたびたび書いてあるように、高齢者の自動車事故の原因としては前頭葉機能低下が最も考えられるところです。突然の脳卒中発作や心臓病なども皆無ではないでしょうが、その確率よりも問題にすべきは前頭葉の機能低下です。(一番上の記事が直近で2022年。一番下の記事は2008年のものです)






最近の花を紹介します。
ブーゲンビリアの花

ブーゲンビリアの全体像

テレビの声が飛び込んできました。最近多発している高齢者による運転事故を受けての特集のようでした。羽鳥慎一モーニングショー6/11。
お話をしているのは自動車教習所の指導員歴35年の方。3万人以上に免許更新や安全教習をなさったとのことです。
おもしろいほど、小ボケの人たち(前頭葉機能には支障が起きているが、世の中で一般的に行われる認知検査には合格する脳機能レベルの人たち)が運転するときの特徴を言い当てています。
高齢者の免許更新については、警察庁のHPの中に解説図があります。

75歳以上の高齢者の免許更新については、この改正された制度で自分が受けてみて感じたことを書いてあります。
免許更新時の認知機能検査(75歳以上)の問題点
ここに書いたように検査そのものが的外れであるうえに、実に簡単にクリアできるような採点方法になっています。さらに上図をよく見るとわかるように、この検査はできるだけ合格させる方向で組み立てられています。この簡単すぎる認知機能検査で「認知症のおそれあり」に該当した高齢者でも医師によって「認知症でない」とされたら、免許更新の道は残っています。
最近の高齢者の事故では「認知機能検査には合格していた」と付け加えられることが多いですよね。検査そのものが安全運転の基準を満たしていないということでしょう!
(続)高齢者の危険運転の後半を読んでください。今のように完成された認知症だけを認知症と診断していたら、そのドクターが糾弾されることになる可能性があります。このアプローチも大切かもわかりません。
ベニガクアジサイ

実車指導、運転適性検査、講義の三本立てで免許更新はできるのですが、一番免許更新の可否にかかわりそうなのは実車指導ですね。実車「指導」であって、車を運転させてその人の運転能力の合否を決めるわけではなく、ただ乗るだけ…つまりどんな運転をしても全員合格です。
テマリテマリ

この実車指導時のエピソードがおもしろい。(実車指導時は指導員のかたと免許更新希望者は複数名乗ります)
一時停止を無視。
「しっかりと待ってください」と指導。
「あそこで停まっても周りが見えず、停止線の位置がおかしい」

左折時、対向車線に出る。
小回りするように注意。
「いつもの車と違うからうまくできないだけ」

同時乗車している免許更新希望者の実車指導後
「運転が怖かった。カーブのスピードが速すぎ。交差点でふらつく。一時停止無視」などと正しい感想を言う。
自身も同様の運転をするので指摘する。
他人事。
ウズ

もう一つのエピソードは認知機能検査の時のことでした。
テスト実施について解説するときに、適切なタイミングでうなづきながら聞いているので理解していると思って、開始の合図をすると
きょとんとして「何をするんですか」という。
この指導員の方が感じる「これはなにが起きてるのか!」という違和感がとてももよく伝わってきました。
名前不明の色が魅力的なアジサイ

小ボケの方の家族が、症状を説明するときに
「何かしゃべるとおかしくない。それどころかもっともだというようなことも言えるんです。でも…やってることはどこか前のおじいさんorおばあさんと違うというか、前ならしなかったようなことをしたり、絶対するはずのことをしなかったり…」といいながら、同時に「この違和感はわかってもらえなさそう」というアピールを感じることはよくあります。
そのようなときには、日常生活の具体的なシーンのことを聞きます。
着衣、食事(作法も炊事も)、入浴、トイレ、掃除、片付け…その時「車の運転で最近気がかりなことはありませんか?」と質問すると、家族はとても具体的に訴え始めるのです。
車を運転するには、前頭葉機能のうち、最も早期に低下し始める注意集中・分配力が必須です。家族にはその変化がわかりやすいのでしょう。
多肉植物(紅輝殿?)の花

「流れに乗れなくて、マイペースで走るのでスピードが遅すぎて怖い」
「慣れた道なのに、どこを走っているのか、わからなくなってる時がある」
「ブレーキをかけるタイミングが変わって危ない思いをよくする」
「フラッシャーが遅い」
「左や右に寄りすぎる」
「半ドアのことが多い」
「駐車場で車をたびたび探す」
「ぶつけた時に、ブレーキをかけた後にそのまま進んで傷を大きくしてしまう」
「自宅の駐車場でたびたびぶつける」
「事故を起こしたときに対応ができない」
ヒペリカムの花と実




先の指導員の方は続けて
「免許更新の時ぎりぎりで合格している。運転技術が危うい高齢者がいる」というふうに言われました。そういう高齢者もいるし、指導員として厳しくみても合格!といえる高齢者もいるということですよね。もちろんその間も。
ぎりぎり合格者のぎりぎりを生み出すものが前頭葉機能がうまく機能していない結果だとは思われてないような。それこそが認知症の早期状態とは思われてないような。
世の中の趨勢というか権威ある方々はこのレベルを認知症の始まりと思っていないのですから、致し方ないのかもしれません。でも、ここまで気が付いているのですからかなり残念なことだと思いました。

by 高槻絹子



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