本と映像の森 259 クラーク・バクスター共著『時の眼』早川書房、2006年
「2001年宇宙の旅」からの「スペース・オデッセイ」シリーズ(3001年までいきます)の著者、巨匠アーサー・C・クラークさんと新進作家、スティーヴン・バクスターさんによる連作の第一作です。そして「スペース・オデッセイ」または「モノリス」の物語の別バージョン、または著者たちが言うには「直角編」「同様の前提を異なる方向から検討するもの」だそうです。
「2001年」は第6部まであり、全47章、「時の眼」も第6部まであり、同じ全47章です。しかも、冒頭は「2001年」がアウストラロピテクスの父親「老いた者」と息子の「月を見る者」で始まって、次の場面への転換は地球上から宇宙ステーションへh向かう宇宙機です。
「時の眼」は、アウストラロピテクスの母親「探る者」とその娘「つかまる者」ではじまり、次の転換はアフガン上空で飛行する国連ヘリです。
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2037年6月8日、「パキスタンとアフガンの国境上空」にいた国連平和維持軍のヘリに乗っていた3人、イギリス人ビセサ(女性)、アメリカ人ケイシー(男性)、アフガン人アブデイカディル(男性)が不時着したのは、同じ場所だが、時間は1885年だった。
1885年に、そこで、大英帝国軍に従軍していたイギリス人記者ジョシュとアメリカ人記者ラディが、軍の駐屯する砦の前の空中に浮かぶ「金属の球体」を見た日、空から2037年の国連軍ヘリが降りてきた。
その砦の兵隊は、その日、「猿人」、200万年前のアウストラロピテクスの「(仮名)探る者」(女性)とその娘、まだ幼児の「つかまるもの」を捕まえた。
2037年のその日、宇宙ステーションから地球に帰還しかけていた宇宙船の3人も1885年に飛ばされ、同じ年からの3人と協力して事態は明らかになっていくが…。
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もちろん、空中に静止している「金属の球体」は、1辺が1(1の2乗)対4(2の2乗)対9(3の2乗)である「モノリス(石碑)」の機能をもつ「後継者」です。でも「直角篇」なのに完全な「球」とは…!
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最初は「タイム・スリップ」の物語かと思ったのですが、違いました。もっと大規模なものです。プロットはフレッド・ホイルさんの「10月1日では遅すぎる」と似ていますが、ずっと上質だし、人物造形もよくできていると思います。
世界はどうなったのか?主人公たちはどうなっていくのか?
以下、ネタバレはおもしろくないので本をお読みください。浜松市立中央図書館にて借りましたので、11月10日に返します。ぼくの評価は AAA です。
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「2001年」(書籍のです)の結末、「47 スターチャイルド」(次作から「星の子」は消えましたが)の言葉と、「時の眼」の「46 つかまる者」の猿人の幼児(娘)のセリフが同じです。
「…つぎに何をすればよいかわからないのだった。だが、そのうち思いつくだろう。」「…つぎになにをするか迷っていた。だが、なにか考えつくだろう」
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第2作完結編の翻訳が出ているのかどうか調べてみます。
なお、事前にモンゴル帝国の歴史、アレクサンダー大王遠征の歴史、バビロニア王国の歴史を読んでおくと、二重に楽しめますね!