新・本と映像の森 128 瀬名秀明『インフルエンザ21世紀』文春新書、<再録249>
「2013年04月14日 20時59分34秒 | 本と映像の森
本と映像の森 249 瀬名秀明さん『インフルエンザ21世紀』文春新書、2009年12月20日第1刷発行
中国で鳥インフルエンザ(H7N9型)の人への感染が拡がっています。今日14日現在で、これまでの上海市周辺から北京・河南省へも広がり、感染者は55人で、死者は11人です。
それで、これまで読んだ本数冊から、これが最良だった本を紹介します。
著者の瀬名秀明さんは「パラサイト・ィブ」で有名な作家、瀬名さんが30人以上の医師・科学者・ジャーナリストにインタビューし、2009年のブタインフルエンザ「パンデミック」に始まり、ウイルスと人のかかわり、パンデミックにどう対処するのかをリアルに追求した本です。
瀬名さんは、大学で薬学研究科博士号をとっていて、この本の作者としては最適の方です。
ノウハウものではありません、もっと深い、一人ひとりに考えることを求める本です。
そして専門家のプラスマイナスも教えてくれます。つまり「専門家」といえども、その問題について熟知しているわけではないということ。
いくつか、重要な概念をあげておくと、
① ウイルスの構造。糖や脂質。これが遺伝変異をおこすことで、突然、人への感染が始まります。
② ウイルスの種類、高病原性鳥インフルエンザウイルスは「H5N1」です。香港カゼは「H3N2」です。
③ WHOの「フェーズ」概念。いまのところ、中国の国境を越えて、地域を越えて世界に拡がっていないところからも、「人から人への感染」は起きていないとされています。
そして、だいじなのは、たんなる「医学的」「生物学的」対応ではなく、「社会的」「政治的」対応をどうするのか、人間と人間のマンツーマンでの対応をどうするのかが、求められているというのが、瀬名さんのいちばんの主張だと思います。
だから、専門家だけに頼るのではなく、専門家と共に、専門家と手をつないだネットワークを構築することが、インフルエンザウイルス問題だけに限らず、原発問題でも、いろんな問題でも全て求められているのだと思います。
いまのテレビやネットの「ニュース」では、そういう解明が欠落しているので、自覚した個人が自分で探さないといけない、そういう社会的段階です。
「ウイルス」の問題を追っていくと、「生命とは何か」「生命の進化の謎」までいくのですが、「本と映像の森」で追っかけていきます。」