雨宮智彦のブログ 2 宇宙・人間・古代・日記 

浜松市の1市民として、宇宙・古代・哲学から人間までを調べ考えるブログです。2020年10月より第Ⅱ期を始めました。

新・本と映像の森 130 佐藤貴美子『銀の林』新日本出版社、1998年

2018年04月25日 14時59分21秒 | 本と映像の森


新・本と映像の森 130 佐藤貴美子『銀の林』新日本出版社、1998年

 270ページ、定価本体1900円

 これは小説です。主人公は名古屋の設計事務所に勤める中森晶(しょう)と池田文雄の2人。

 二人の恋愛と仕事上の建築トラブル、そして現実の「名張事件」がからみあって物語は進行していく。

 晶は38才、独身、ひとりぐらし。

 文雄は23才、独身、おばあちゃんと2人で住む。

 流れのなかで2人それぞれにあるいは共同して発揮する人間性と主体性に、ボクは強く共感します。

 晶は名張出身で名張との縁も深い。偶然、2人は救援運動に係わるようになり、事件のナゾを追い始める。

 「名張事件」は1961年に三重県名張市で女性5人が毒で死亡し、容疑者として逮捕された奥西勝さんが死刑囚とされ、2015年獄中で89才で亡くなりました。

 奥西さん本人も、この『銀の林』は「ノンフィクションの部分が8割位、私が体験した記憶と照合しても確実です。」(『救援新聞 1999年2月5日 (4)面』)と書いています。

 < 目次 >

  1章  年下の男
  2章  姉の謎
  3章  偽証
  4章  結婚
  5晶  バブル
6章  国民救援会(1)
7章  国民救援会(2)
8章  現場
9章  削除キー
 10章  雨戸を開けたのは誰
 11章  12人の怒れる男
 12章  片手落ち
 13章  母
 14章  「女」
 15章  名古屋拘置所
 16章  「ひそかに情をつうじ」
 17章  銀の林

 「名張事件」を知るには最高の最初の1冊。小説・フィクションとしても1級だと思います。

 誰でもがもつ「奥西さんが犯人でないなら、では真犯人は誰なの」という疑問には、どう答えるのでしょうか。

 ボクはぼんやりと浮かんできたように思いますけれど、考察はまた別の機会に

 ところでこの小説のテーマを一言で言え、と言われたら「女性の苦しみ」と答えると思います。

  < 訂正 4月26日 >

 犠牲者を4人と書きましたが5人でした。訂正します。