ことばと詩 5 恩田陸 草取り 20190405金
「私たちはいったいどうすればいいんです?
私は力なく隣の男の顔を見た。彼はこちらを見ない。煙草をくわえ、前方をじっと見ている。
「毎日を大事に暮らすことさね。しっかり目を開けて、耳も掃除して、目の前の隅っこで起きていることを見逃さないことだね。そうすれば、あんたの背中には草は生えない。草の生えない人間が、世界に生えた草を取ってくれる。」
私は思わず自分の背中を見ようと首をひねった。背中をさすってみる。なんともない。ホッと安堵の溜め息を漏らす。」(p188))
≪ 恩田陸『光の帝国』集英社文庫、2000年、「草取り」p188より ≫
「心の草取り」については、ボクの読書歴で鮮明な記憶がある。80年代のことである。平井和正さんの角川文庫版『幻魔大戦』十何巻で主人公のひとり井沢郁江が「心の雑草取り」について語るシーン。
それ以来、ボクは心の掃除ということにかなり気を配るようになったと思う。現実の肉体的清潔には、昔からあまり気をつかわないが。ごめんなさい、則子さん。