雨宮智彦のブログ 2 宇宙・人間・古代・日記 

浜松市の1市民として、宇宙・古代・哲学から人間までを調べ考えるブログです。2020年10月より第Ⅱ期を始めました。

新・本と映像の森 255 フランク・ディケーター/著、中川治子/訳『毛沢東の大飢饉 ー 史上最も悲酸で破壊的な人災 1958-1962 ー』草思社、2011年

2019年04月13日 10時35分06秒 | 本と映像の森

 

新・本と映像の森 255 フランク・ディケーター/著、中川治子/訳『毛沢東の大飢饉 ー 史上最も悲酸で破壊的な人災 1958-1962 ー』草思社、2011年

 572ページ、定価本体2800円

 中国と中国共産党を知り理解するために必読の1冊だと思います。

 ふつう文化大革命が中華人民共和国の歴史を分ける分水嶺だと思われていると思うが、そうではなく、この「大躍進」(1958年~1962年)こそキーポイントだとボクは思う。

 これを読むかぎり文革は大躍進の遺恨試合、後半戦にすぎない。

 主な内容は 
 
① 大躍進は中国共産党内の残虐無法な「反右派闘争」によって準備された。
② 大躍進は工業での「鉄鋼土法」・農業での「密植・深耕」など命令過多・粗製濫造・浪費による経済破綻をまねき、推定4500万人の餓死・暴力・殺人に至った。

 これを証明するのに中国の公式文書記録によったこと。

 「とりろめもないスピーチ、歴史におけるみずからの役割への固執。過去に受けた侮辱をくよくよと思い悩むことも多く、会議で感情的に威嚇するやり方に長け、何よりも顕著だったのは人命の損失に無頓着だったことだ。いずれも、彼が入念に培ってきたイメージとはかけ離れた姿だった。
 毛沢東が大躍進の立案者だったことは周知の事実である。これは、その後に起きた惨劇の主たる責任は毛にあるということを意味する。毛は、仲閒たちと駆け引きし、彼らを丸め込み、ときには苦痛を与えたり迫害したりして、みずからのビジョンを必死になって推し進めようとした。」(p14~15)

 「このユートピア・パラダイスを追求する過程で、農民は共産主義の到来を告げる巨大なコミューンに組み込まれ、すべてが集団化された。農村部に暮らす人びとは仕事と家、土地や財産や家畜を奪われた。集団化によって誕生した共同食堂で各人の働きぶりに応じて供給されるわずかな食料は、党が発するあらゆる指令に人々を従わせる武器となった。・・・・・・大躍進という名の実験は、数千万人の命を奪い、この国がいまだかって経験したことのない悲劇的な結末をもたらした。
 これに匹敵する、たとえば、ポル・ポトやアドルフ・ヒットラー、ヨシフ・スターリンが引き起こした大惨劇に比べると、大躍進の真の姿はほとんど知られていない。」(p9)

 以下は目次。

第1部 ユートピアを追い求めて
 第1章 毛沢東の2人のライバル
 第2章 競り合い開始
 第3章 階級の粛清
 第4章 集合ラッパの合図
 第5章 「衛星を打ち上げる」
 第6章 砲撃開始
 第7章 人民公社
 第8章 製鉄フィーバー
 
第2部 死の谷を歩む
 第9章 大飢饉の前触れ
 第10章 買い漁り
 第11章 「成功による眩惑」
 第12章 真実の終わり
 第13章 弾圧
 第14章 中ソの亀裂
 第15章 資本主義国の穀物
 第16章 出口を探す
第3部 破壊
 第17章 農業
 第18章 工業
 第19章 商業
 第20章 建築
 第21章 自然
第4部 生き残るために
 第22章 飢饉と飽食
 第23章 策を講じる
 第24章 ずる賢く立ち回る 
 第25章 「敬愛する毛主席」 
 第26章 強盗と反逆者
 第27章 エクソダス
第5部 弱者たち
 第28章 子どもたち
 第29章 女たち
 第30章 老人たち
第6部 様々な死
 第31章 事故死
 第32章 病気
 第33章 強制労働収容所
 第34章 暴力
 第35章 戦慄の地
 第36章 人肉を食べる(カニバリズム)
 第37章 死者の最終集計
 第38章 文化大革命への序奏


 いつかは、創立からいまに至る中国共産党史と毛沢東史の簡単なまとめを書きたい。中国共産党は、いまも毛沢東の呪いから抜け出ていないという話です。

 これから抜け出ないかぎり中国は「社会主義」には行き着けないと思います。