風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

長梅雨や客来ぬ店主にぼやきあり 【季語:長梅雨】

2020年06月20日 | 俳句:夏 天文
友人がやっているバーも
長雨の影響を受けているようです
客足も悪くお店の売り上げも今ひとつ

さえない空模様は
外に出かけようとする気持ちを
萎えさせるものなのでしょうか

そんな友人のお店に貢献しようと
足しげく顔を出したりしているのですが
客が来ないよというぼやきが止まない
ここ数週間です

カラス二羽デコイとなりぬ梅雨の町 【季語:梅雨】

2020年06月13日 | 俳句:夏 天文
朝になっても
前の夜から降り続いた雨は
やんではいませんでした

空には重い雲が居座ったまま
外に出るのも億劫に感じられます

それでも出かけなければいけないと
いつもの仕度をして
傘を持って玄関を出ました

そうしてエレベータのところまで歩いて行くと
大きなカラスが二羽
廊下の塀のところにとまって
身を硬くして雨宿りをしていました

人には驚くことがないのか
僕が近づいても飛び立つこともなく

じっとして動かない様は
まるで模型の鳥のようです

こうして間近でカラスを見ると
やはり大きいものだと関心しつつ
時間のない僕はエレベーターに乗り込みました

走り梅雨チューしてた子は高いびき 【季語:走り梅雨】

2020年06月06日 | 俳句:夏 天文
その日は朝から雨が降っていました

体力を持て余している子供たちを
外に連れて行きたいと思いつつも
雨が止む気配も無く
一日家で遊ばせることにしました

本を読んだり抱っこしたりと
ずっと構うことを強要され
外で遊ばせている方が
まだ楽かも知れません

大分智恵がついて来たせいか
色々なことが出来るようになりましたが
チューと言ってキスするのも
ここのところの技です

そんな遊びにも飽き
やることもなく眠くなったのでしょうか
やがて二人とも布団に横になり
眠ってしまいました

さっきまでの騒ぐ声は消え
寝入り端の鼾が
部屋に響いていました

陽の漏れぬ欅の影も夏の色 【季語:夏の色】

2020年05月30日 | 俳句:夏 天文
その日は暑い一日でした
陽射しが随分と強く感じられ
その下を歩いていたら
汗が額に浮かんできました

しばらく歩いて行くと
大きな欅(けやき)があり
その木陰に休むことができました

葉が生い茂り重なり
その欅の下では
木漏れ日も落ちて来ることはなかったのですが
そんな欅の影も夏めいていて

影なのにどこか明るく
感じられていました

夏空は恋しき日々の墓標かな【季語:夏空】

2019年07月27日 | 俳句:夏 天文

新幹線に乗ると
子供がたくさんいたので
もう夏休みだと気がつきました

夏の思い出は自分にも沢山あって
故郷で遊んだ少年の日の思い出は
まだ鮮やかに記憶に残っています

その時に見上げた空の色と
同じような夏空を見ると
二度と戻らないものへの郷愁なのでしょうか
胸に恋しさが湧きます

空には失くした日々が
静かに眠っているようで
その青き墓標に立ち尽くします


梅雨曇り恨みがましき目の子供 【季語:梅雨曇り】

2019年06月22日 | 俳句:夏 天文
その日は朝から曇っていて
今にも雨が降り出しそうでした

天気予報を見ると
やがては雨になる予報です

外に出かけるのが好きな子供たちですが
不幸にも双子用の乳母車は
傘に収まりきらず
雨の時は散歩を控えています

散歩中にも雨が降りそうで
出かけるのを躊躇していると
それで不機嫌になる子供たち

ほら外は雨が降りそうだよと
窓の外を見せると
それでも納得がいかないのか
恨みがましそうに
空を見上げていました

泣き虫の子もあやされて薫る風 【季語:香る風】

2019年05月18日 | 俳句:夏 天文
その日は朝から暖かでした

部屋の換気をしようと
幾つかの窓を開けると
風の通路ができたのか
カーテンを膨らませて
暖かな風が勢いよく吹き込んできました

その風がよほど気持ち良かったのでしょうか
あやしても泣き止まなかった子供たちが
急に笑顔になりました

そうして風が入ってくるたびに
笑いながら風をつかもうと手を動かします

子供たちに大人気の風に負けた気分で
ちょっと嫉妬を感じながらも
僕も子供と一緒に
心地の良い風を楽しんでいました

赤子(こ)の爪を切る目は細し青嵐 【季語:青嵐】

2019年05月11日 | 俳句:夏 天文
前の晩に子供に
顔をつかまれたのですが
爪が痛くて思わず声を上げてしまいました

自分の顔も引っかき傷で一杯にしていたので
昼寝の合間を狙って爪を切ることにしました

もともと手先が器用ではない自分に
小さな赤ん坊の爪を切るのは一仕事です
指を傷つけるわけにもいかず
一本一本の指の爪を
慎重に切って行ったのですが
小さな指先なので
思わず目も細くなってしまいます

そんな僕の姿が可笑しかったのでしょうか
窓から入ってきた強い風が
僕の細い目をなぞっていきました

夏霧に迷い溶け込む白き翅 【季語:夏霧】

2018年08月11日 | 俳句:夏 天文
山道を進んでいたら
濃い霧が立ち込めてきました

せっかくの高原の景色も
その白さに隠れてしまい
見えなくなって行きます

せっかくの機会なのにと
残念に思いながら
少し未練がましく
遠くの方に目線を送っていると

霧と同じような色をした紋白蝶が
ヒラヒラと行ったり来たり
迷ったように飛んでいます

それは急に立ち込めた霧の白さに
自分の羽との境目が分からなくなり
とまどっているといった風情でした

白壁に静かなるもの炎天下 【季語:炎天下】

2018年08月04日 | 俳句:夏 天文
照りつける陽射しが
すべてを黙らせてしまうような真昼時でした

僕も車から降りると
小走りするように
訪れた温泉宿の
風の通り抜ける部屋に逃げ込んだのですが

日陰を求めていたのは
僕だけではなかったようです
見ると温泉屋の白壁には
糸とんぼが羽をピクリとも動かさず休み
太陽を追い過ごそうとしているようでした