風のささやき 俳句のblog

訪問ありがとうございます
オリジナルの俳句を中心にご紹介しています
詩や短歌も掲載しています

夜に 【詩】

2020年09月24日 | 
「夜に」

夜の一時頃に
目を覚まして窓から覗くと
街はひっそりとした寝息を
月明かりの闇の中にたてていた。

明かりがついているビルも
今日は見あたらずに
人が通る靴音の
高い響きの気配さえ
街灯の下に今日はない。

大きな黒い蜘蛛が
足をのばして
地面に這いつくばるように
街は眠っている
家の中では
うごめく小さな人間達が
疲れはてた肢体を
狭い床の上に投げ出して。

昼間見た
あの奇妙な仮面も今は
すっかりと取り外されて
この夜には誰もが
一匹の動物となって
こくこくと
むさぼるように眠る
荒々しい寝息だけを
枕元に吐き出しながら
頭の中に
腐りかけて花開く
青ざめた夢の数々で
満たされない心埋めて。