風のささやき 俳句のblog

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鎮魂歌 【詩】

2023年01月19日 | 
「鎮魂歌」

見渡せる限り
甘い香りを漂わせる
黄色の花畑だった

大気が優しい蜂蜜色をして
蜜蜂の舞う透明な羽音が
空気を少しだけ震わせていた
(そのたくさんの羽が
 反射する微かな光り)

あなたはこちらを
振り向くこともなく
歩いて行かれた

すべてを終えた
安らかさで編んだ
白い清楚な服に身を包み
花畑から続く蒼い空へ
黄色の花を敷き詰めた坂道を
(僕らにはその坂道を
 歩みだすことが許されていなくて)

もうその姿は見えなくなる
僕らの声は世界を区切る
うねる風の壁にさえぎられて
あなたの耳にはもう届かない

あなたは微笑んでいかれたのかしら
あなたの踏み入れた
新しい土地の蒼穹に吹く風は
あなたの憂いを持ち去って

水晶のように澄んだ心には
オーロラが映えるだろうか
それはあなたが地上で摘んだ
沢山の思い出がとけ合った色合い
とても綺麗だと今更ながら気が付いて
そんな風にあなたが一生懸命に生きた証

やがて ご褒美のように
懐かしい声もする
飴玉を頬張るように
口の中が甘くなる
(それとわずかの酸っぱさと)

あなたをずっと
待っていてくれた人たちの
その聞きおぼえのある
また聞きたかった声が
確かに耳に届く

あなたの頬も甘く濡れ
まるですずらんの花の中に
ためていた朝露のように
きれいな涙で

あなたの息づかいが
聞こえない毎日を
この場所にひたむきに
僕らは暮らして行きます
時折はあなたが
教えてくれた歌を口ずさみながら

すこしでもあなたの高さに届くように
あなたの手の温もりに報いるように
その優しい眼差しに
再び会うことができるように

僕らの面影は
あなたは花篭に
携えていかれましたか

いつしか思い出してくれる時があれば
ひときわ輝き出して
あなたを微笑ませてくれますように


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