jazz and freedom and avenger

勝手気ままな戯事日記 暇つぶしに・・・・

YOU'RE MY EVERYTHING / RELAXIN' & HUBーTONES

2020-03-14 | Legacy of Freddie Hubbard

 

ピィ~ッと口笛が走り「ブロック・コード」とマイルスの指示が飛ぶ。「待ってましたぜ、ボス」と言わんばかりにシングル・トーンから切り替えるガーランド、絶妙なタイミングでミュートが囁く。もう、ゾクゾクしますね。マイクの使い方がホント上手く、専売特許、独壇場です。2曲目の”You're My Everything”の話。

2000年頃発売のXRCD盤、値段は3,885円とかなりお高いがその分?、音もいいです。

マイルスの高名なマラソン・セッション四部作は全曲、ワン・テイクと言われ、ヤケに称賛されているけれど、そのワケがI・ギトラーのライナーノーツに書かれており「なるほど」と。それでもバンド全体のレベルが極みに達していた事に違いはありません。

TOPの”If I Were A Bell”に比べると地味ですが、”You're My Everything”の方が他の追従を許さぬミュートの世界は深いと思う。コルトレーンへの味のある受け渡し部分なんかクラブのステージで好評だったやり方を踏襲しているのだろう。スタジオだからといってスタイルを妙に変えなかった所がこのセッションを成功に導いている。”You're My Everything”のイントロは元々2Wayだったのか、スタジオの雰囲気に即応するマイルスの判断力って凄いですね。

右はハバードのBN5作目、”HUBーTONES”(1962.10.10)

RVGエディションの輸入CDで国内RVG盤と音の傾向が異なり全体にやや明るい音調です。好みはこちらです。

当時、若手の作品でスタンダードをTOPに置くのは珍しく、恐らく三ヶ月前のB・EVANSの”INTERPALY”に参加した経験で得た何かを直ぐ反映したのだろう、外連味の無いスタンダード解釈が素晴らしく、マイルスと正反対でオープンtpの醍醐味を堪能できる名演。ハンコック(p)との相性の良さも実感できます。

”THE NEW MAINSTREAM”(新主流派)という呼び方は公式?にはギトラーが”MILES SMILES”(1966年)の中で使ったとされるが、この”HUBーTONES”のライナー・ノーツの中でJOE GOLDBERGが既に表現している。時系列で聴けば1966年は明らかに遅すぎですね。ジャズ・マスコミは何でもマイルス絡みに仕勝ちですから(笑)ギトラーにとって傍迷惑だったのでは。

NYへ上京して名がそこそこ知れるようになった頃、ハバードのステージを聴いていたマイルスから「オレの真似をするな、自分のフレーズを吹け」とアドバイスを受け、ひたすら己のスタイルを追い求め、1974年DB誌の人気投票で常勝マイルスを抜いた事実は決して色褪せるものではない。

BN前4作と肌合いが異なる本作は、12年後を予感させるに充分な出来栄えで、密度が濃い。


LEGACY OF FREDDIE HUBBARD (11) ・・・・・ CONTOURS / SAM RIVERS

2020-02-09 | Legacy of Freddie Hubbard

 

インテリジェンスとパッションが一分の隙なく敷き詰められたクールな傑作。

リヴァースのマイルス・グループの在団期間は短く、確かにショーターへの繋ぎ役だったけれど、心無い人達から「首を切られた」との風評を流され、しかもフリー、アヴァンギャルド寄りのスタイルを身上とし、70年代後半もロフト系の分野で活動を続けたため一部のファンを除き熱心に聴かれていない。

ただ、見方を変えればマイルス・グループに抜擢されたお蔭で無名の存在から一躍表舞台に上り、BNにリーダー作を録音できた事実からすれば、ラッキーと言えるのではないか。

BNの2作目、当時の「新主流派」精鋭達とのガチンコ勝負と思いきや、彼らの瑞々しい感性に交じって、リヴァースはtsの他ss、flを曲によって持ち替え、色彩感を添え驚くほど高い次元で柔軟なパフォーマンスを聴かせる。

リヴァースの暴れん坊ぶり(笑)を制御できたのは、ハバードとハンコックの存在だろう。

特にハバードの卓越したスキルと曲想、曲調に合わせた見事なコントロール(1曲は珍しいミュート)は最早、神技と言っていいだろう。刺激を受けたハンコックもテンション漲る凛としたプレイで応える。

聴き方によっては3人のうち誰がリーダーといってもおかしくないほどのチームワークの良さとその創造性は、ジャズへの真摯な思いを伝えている。

なお、リヴァースをマイルスに推挙したトニーは都合がつかず、代役に入ったチェンバースも役割を充分果たしている。

録音は1965年5月21日。RVGの録音もGoo。

 

BNの作品群の中で、最大にして最高の「隠れ名盤」。


LEGACY OF FREDDIE HUBBARD(10)・・・・・・・ EMPYREAN ISLES / HERBIE HANCOCK

2019-06-29 | Legacy of Freddie Hubbard

 

その昔、「しゃんくれーる」(京都)のレコード・リストは当時、会社の帳簿でよく使われていたしっかりした麻張りのカヴァでルーズ・リーフ方式、そして丁寧にタイプライターで打たれていた。

勿論、レコード・カヴァは載っていなく、初心者の頃はさっぱり判らなかったが、まるでバイブルのような存在だった。

ある日、ペラペラと「H」の頭文字のページを捲っているとコレを発見、所謂、tp(cor)のワンホーン・カルテットというレアな編成に興味が湧き、即、リクエストを。2、3枚後にいきなりtp(cor)の鋭い音が鳴り響いた。カヴァも内容も全く知らなかったが、コレだ、と思った瞬間、体がフリーズしてしまった。

次に録音された”処女航海”に勝るとも劣らない出来なので下手なコメントはもう要らないですね。一言で言い表せば、当時(1964年)の精鋭達4人によるBNというマイナー・レーベルで、そしてゲルダー・スタジオという密室での「完全犯罪」でしょうか。

タモリの言葉を借りると、

「このハバードはJAZZを突き抜けようとしている」とか。アルバム・リーダーはハンコックだが主役はハバードと見抜いている。ライオンにしても主客転倒しないよう敢えてハバードに小型tp(コルネット)を吹かせたのだろう。

ただ、これは伝え聞いたものなので確証を得なかったけれど、少し前に発刊されたジャズ本の中で「タモリが選ぶ名盤20選」の5位にリスト・アップされており、やはり伝聞に間違いは無かった。読み手の顔色を窺ってばかりいる物書き屋達には到底出来ない選ですね。

因みに1位は”MY FUNNY VALENTINE / M・DAVIS”(CBS)、2位”WALTZ FOR DEBBY / B・EVANS”、3位”FOREST FLOWER / CHARLES LLOYD”(いいですね!)

 

6/11付の日経新聞(夕刊)に5月28日、新宿文化センターでのW・マリサリスの来日公演の記事が載った。「チェロキーでの疾走するソロ、圧巻!このステージは感心を越えた感動と楽しさを呼び総立ちで拍手が鳴り止まなかった」と。

この夜、果たしてマリサリスはハバードを越えたのか?

 


LEGACY OF FREDDIE HUBBARD(9)・・・・・ BLUESNIK / JACKIE McLEAN

2019-02-09 | Legacy of Freddie Hubbard

 

マイルスの写真を撮り続け、少し前に「マイルス・デイビス写真集・NO PICTURE!」を上梓したフォトグラファー・内山繁氏によると、マイルスの不可解な、また理不尽とも思える言動は「ボスとしての立ち振る舞い」からだそうで、そうすると「真意」は別のところに、又は真意ではない可能性も無くはない。

マイルスのハバードに対するネガティブな発言の一部がそれなりの立場の方に意図的に?切り取り拡散され、巷で錦の御旗のように利用されたことは残念に思う。

 

まずデビュー間もない60年代前半のジャズ史とハバードのキャリアを照らし合わせると、この男の力量、そして適応力、順応性はずば抜けている。

BNでのリーダー、サイド作の他、例えば、ドルフィーの”OUTWARD BOUND”、コールマンの”FREE JAZZ”、O・ネルソンの”THE BLUES AND THE ABUSTRACT TRUTH”、コルトレーンの”OLE"、Q・ジョーンズの”QUINTESSENCE”、エヴァンスの”INTERPALY”等々、サイドとして話題・人気・名作は枚挙に遑が無い。

これは相手のリーダー、プロデューサーから「あいつなら大丈夫、間違いなくしっかり演ってくれる」と信用・信頼を得ている証拠です。もし、貴方が仕事で新しくプロジェクト・チームを組む際、右腕になる相棒を「テクニック」、「器用」で人選しますか?しかも、「目立ちたがり屋」だとしたら声を掛けますか?答えは火を見るより明らかでしょう。ここが一番重要なポイント。

 

サイドとして素晴らしいアシストをしているアルバムを、

 

 

ジャズのコアとも言えるブルースに再びスポットを当てる機運が高まっていた1961年1月8日録音。一ヶ月後にはO・ネルソンの”THE BLUES AND THE ABUSTRACT TRUTH”も生まれている。

ハードバップに限界、疑問を感じ、O・コールマンの演奏に激しいショックを受けたマクリーン、新しい道への手応えを得たかのよう意欲が充満したプレイを展開している。一方、半年ほど前にBN・初リーダー作を吹き込み、僅か3週間前、コールマンの”FREE JAZZ”に参加したばかりのハバードの50年代のハードバップ臭を些かも感じさせないフレッシュなソロが何と言っても聴きもの。TOPのタイトル曲ではセント・トーマスのワンフレーズを織り込む大胆さと全編に亘り22歳とは思えぬ腹が据わったスケールの大きいプレイでマクリーンの期待に充分応えている。

もう一枚分かり易い事例を、

”THE BLUES AND THE ABUSTRACT TRUTH”で共演したハバードを相棒に選んだ一枚。やや畑違いのエヴァンスの世界にハバードが慣れるまで時間を要したそうですが、ハバードの新しい感性に刺激されたのかエヴァンスは気持ちよく最高にSwingし、J・HALLも弾きまくり、反対にハバードは結構クールに適応。エヴァンスの狙いが見事に的中している。

リリースに関して慎重でハードルが高いエヴァンスがすんなりOKを出した作品。

 

 

反対に、一ヶ月後に録音したZ・シムスとのセッションは「OK」を出さず、1992年までフルサイズで日の目を見ることは無かった。「シムスはゲッツではなかった」と言う方がいるけれど、エヴァンスはゲッツとのセッション(1964年)もリアルタイムでは「ボツ」にしているのでこの説は強引過ぎます。ただ、選曲にハンディが有ったとしてもシムスの適応力に問題があった事は当たらずとも遠からずだろう。

 

話を戻すと、

80年代、ハバードがクラブ出演中、マイルスが楽屋に訪れ、二人仲良く写真に納まっている。この時、マイルスはサイドのA・フォスターに会いに来た、と言ったそうですが、案外、ハバードが目当てだったのではないかな。マイルスはそう言う男だから。

”BLUSNIK”を未聴の貴方、要らぬお節介ですが、是非耳通しを。内容は◎です。  


LEGACY OF FREDDIE HUBBARD (8) ・・・・・ BORN TO BE BLUE

2018-04-07 | Legacy of Freddie Hubbard

 

10年前、惜しくもこの世を去ったハバード、今日、四月七日は 誕生日で生きていれば80歳。

カミさんは友達と奈良へ、静かにハバードを偲ぼうとこの一枚を。1981年12月14日、パブロに吹き込んだ゛BORN TO BE BLUE”。

パーソネルは、FREDDIE HUBBARD (tp)HAROLD LAND (ts)BILLY CHILDS(p)LARRY KLEIN(b)STEVE HOUGHTON(ds)BUCK CLARK (per)

曲は、A面ー Gibraltar、True Colors

   B面ー Born To Be Blue、Joy Spring、Up Jumped Spring

 

幕開けはかって地中海と大西洋を繋ぐ軍事拠点、要衝として知られた「ジブラルタル」をイメージしたハバードのオリジナル。スリルとサスペンスが交錯し、対岸のアフリカ大陸を連想させるエキゾチックな香りも帯びた名曲にして名演。酸いも甘いも噛み分けたスケールの大きいハバードのtpが縦横に駆け巡る。トランペッターを志す若者が聴いたら、誰だって憧れるだろう。

"True Colors”は゛HIGH BLUES PRESSURE”(Atlantic 1967年録音)に初出し、ハバードお気に入りのオリジナル・ナンバーで何度もレコーディングしておりアグレッシブな快演。

本盤は鮮やかなRED WAXです。

 

 

 " Born To Be Blue”、「生まれながらにブルーで・・・・・」と不幸な星の下で生まれた宿命を悲哀感を滲ませつつ深追いせず、むしろ暖かく抱きしめるような包容力に満ちたプレイは見事のひと言。インストものではダントツの名ヴァージョン。密度が濃く深みのある音色も聴きもの。他のプレイヤーではちょっと真似できないでしょう。

ブラウニーの"Joy Spring”、文字通り春の喜びを目一杯tpの音色に乗せて歌い上げている。キレも良くもう何も言うことはありません、パーフェクトですね。

ハバードの人気曲の一つ"Up Jumped Spring”、曲想、曲調はリリカルだけれど、ハバードは思いの外ストレートに攻め、しかも熱くなり過ぎないよう抑制している所がカッコいい。

ベテランのランドもコルトレーン・マナーを上手く消化した渋い味を出し、特にかっての十八番"Joy Spring”ではオリジナル演奏を凌駕しているのでは、と思わせるほどのHOTな好ソロを聴かせる。また、全編に渡りクラークのパーカッションが彩りを効果的に添えている。

ハバードの懐の広さ、深さを秘めた「大人の名盤」。なお、プロデュースもハバード本人がしている。

ハバードを斜めからしか見ない人達は何億年経っても本作の魅力に到達できないだろう。ま、どうでもいい話ですが・・・・・・

 

ハバードを偲んでもう一つ。

72、3年頃、来日していたハバードを京都・三条河原町のジャズ喫茶?、ライブハウス?に聴きに行った。直ぐハバードの顔から汗が吹き出し、ジェスチャーで「何か拭くものを」と、偶然持っていたタオルを投げ渡した。演奏後、サインを求めると、覚えていて「サンキュウ」とバッグのキャンバス地にメンバー全員のサインを。

FREDDIE HUBBARD、GEORGE CABLES、LENNY WHITE、JUNIOR COOK、RUFUS REID

 

 

 

まるで昨日のように思い出される。何年過ぎようとも、いくつになってもハバードは"Evergreen"なんです。


LEGACY OF FREDDIE HUBBARD (7)・・・・・未発表音源 2題

2018-01-08 | Legacy of Freddie Hubbard

昨年終盤、相次いでリリースされたLIVE盤。

 

一枚目は1973年3月10日、ベルギーのゾンデルスコートの教会で開催されたコンサートの音源。

何でも500枚オンリー・プレスとか。

パーソネルは、Freddie Hubbard(tp)、Junior Cook(ts,fl)、George Cables(ele-p)、Kent Brinkley(b)、Michael Carvin(ds)。

収録曲はCTI盤でお馴染みのナンバー3曲と'Breaking Point’となっているけれど、'Breaking Point’は??? 入っているのかな?

 

 

これは要注意なレコード。LP仕様だから33rpmものと決め付けてはいけない。

インポートものだから仕方ないかもしれないが、センター・ラベルの45rpmを見落とすと間延びした演奏に聴こえる(笑)。

それはともかく、クックのtsも頑張っているけれど、ハバードの鮮やかなプレイ、絶好調ですね。

時間の関係で 'Sky Dive’に乱暴なハサミが入っていますが、ま、許せます。

  

 

 

二枚目はドイツ・ハンブルク'Onkel Pö's Carnegie Hall ’で収録された2枚組。

1978年とカヴァに記載されていますが、正確には1979年11月11日のようです。

パーソネルは Freddie Hubbard(tp, flh), Hadley Caliman(sax, fl), Billy Childs(p), Larry Klein(b), Carl Burnett(ds)

 

 

さすが2枚組、緩急、硬軟織り交ぜ、全6曲ハバードの当時の「実像」を克明に捉えている所が肝。

ステージならではのパフォーマンスも聴かせ、「大物ぶり」を発揮している。それに音もしっかり録られている。

この姿が内容を全て語っている。

 

 

2枚のレコード、ずっしり重い。

ハバードから影響を受けなかったtp奏者を見つけることは容易でない。 


LEGACY OF FREDDIE HUBBARD (6)・・・・・ MISTRAL

2017-09-16 | Legacy of Freddie Hubbard

駅前で待ち合わせまでの僅かな時間、書店に。

「僕が選んだ『いい音ジャズ』201枚  オーディオファンも聴いておきたい優秀録音盤」が眼に留まった。

著者はオーディオ・ライターなので、評論家のジャズ本と切り口・視点が異なり、しかもページ端にアクセサリー、音を良くするコツ等々、同時進行で読めるアイディアがとてもGoo。

聴いたことがない作品が多い中、パラパラとめくっていくと本作が現れた。暫く聴いていないなぁ~、「音」の記憶もないし・・・・・

掲載されたメディアはCDで、恐らく高音質リマスター版だろう。

手元にあるのはリアルタイム購入のレコード、システムは今よりかなりプアだった。

 

 
 
EAST WORLD  EWJ-80194
 
 
メイン・パーソネルは

Freddie Hubbard (flh,tp)  Art Pepper (as)  George Cables (p)  Stanley Clarke (b) Peter Erskine (ds)

他に曲によりギター、パーカッション、シンセサイザー、トロンボーン等が加わる

録音データは 

Produce:John Koenig
Co-Produce:菊地洋一郎
Recorded at Ocean Way Recording in Hollywood, CA. September 15, 17, 18 and 19. 1980

Engineer : Allen Sides

 

針が降りる2、3秒の間、これがアナログの堪らない魅力一つ。

 

NHK「ブラタモリ」のエンディングで流れる陽水の「瞬き」を連想させるTOPのS・クラーク作`Sunshine Lady’、浮遊感ある柔らかなメロディと伸びやかで豊潤な「サウンド」にいきなりW・コーストの世界に引きずり込まれる。

この時代の音造りの主流に沿ってハバードのflhとペッパーのasが全体のサウンドの中に包み込まれるように浮び、個人的にはもう半歩ほど前に出てきた方が好み。

そこで、カートリッジの取り換え、SPのアッテネーターの調整、そして電源コードとコンセントの組み換え、等々を。

満点までは行かないものの、現状ではOKレベルまで追い込んだが、高音質リマスターCDをより上のグレードのシステムで聴くと、もっといい結果になるでしょう。

技術的なことは解りませんが、このLPは「76㎝/sec マスター・ハーフ・スピード・カッティング・ディスク」と記載されている。

 

   

 

 

プロデュースはコンテンポラリー・レコードの故L・KOENIGの息子で社長のJ・KOENIGが務め、録音はハリウッド、エンジニアはAllen Sidesだが、実質的に東芝EMIサイドにより制作されている。米国側に「丸投げ」せず、充分な打ち合わせの上、録音に4日間も掛け入念に仕上げている。

メイン・メンバー5人だけのセッションは`I Love You’1曲のみで、残りの5曲は ギター、パーカッション、シンセサイザー、トロンボーン等が曲毎に入れ替わるという力の入れ様です。

制作コンセプトは「旬」。これを読み誤りハバード、ペッパーの2管 バトルを追う「アナクロニズム」に陥ると、本作の存在価値・魅力を見失う。

G・ケイブルスが書いた名作`Blue Nights’、ちょっとルーズで心地よいビートに乗り、各ソロが続くソフィスティケートされた流れはその象徴的なナンバー。エンディングにかけてのハバードのflhはタイトルのイメージにピッタリ、さすがですね。

また、`I Love You’もスタンダードと知らなければ、誰かのオリジナル曲と思い込んでしまうほどスタンダード臭が消され、クール、かっこイイ。ハバード、ペッパー、二人のアスリートのソロもジャージーだ。

 

誰もいなくなった季節外れのビーチ、地平線を眺めながら汗をかいたグラスを・・・・・・・・・

間違っても居酒屋風情を求めるのはNG、「ミストラル」が「空っ風」に。

 

100%、ハバードのリーダー作だが、黒子に徹するペッパーの存在は小さくない。

大名盤、傑作の類ではないけれど、なかなか美味しい一枚。

 

東芝EMIのプロジェクト・チーム、良い仕事してますね~ 


LEGACY OF FREDDIE HUBBARD (5) ・・・・・ THE ALTERNATE BLUES

2017-05-11 | Legacy of Freddie Hubbard

 

 

‘THE TRUMPET SUMMIT’(↓)の続編としてリリースされた一枚。パーソネルと録音日(1980.3.10)はサミットと全く同じです。

ただ、この‘Alternate Blues’というタイトルが‘Alternate Takes’集と見間違えられそうで殆ど知られていない。

でも、聴き所が少なくなく、三人(tp)の各ソロをじっくりと堪能するには本盤のほうが上ですね。

収録されている‘Alternate Blues’ ONE~FOURの4曲は、実はサミットの‘The Champ’の下書きデッサンで、ONE~THREEは途中でNGとなっているが、会話や笑い声、タメ息まで入り、和気藹々のセッションの様子が捉えられ、三人のtpプレイもそれぞれ味が有り、わざわざNGテイクをレコード化した意義、価値は充分あります。ある意味「異質な続編」と言えますね。

で、段々、出来が良くなって行くか、と言うと、そうでもない点が面白い。好みで行けば、本番も含め‘THREE’が一番かな。どうしてテリーは途中で吹くのを止めちゃったのかなぁ。いずれもテリー絡みでNGとなっているけど(笑)。

それはともかく、NG・3テイク、ガレスピーも良いけれど、ハバードのブルース・フィーリングと厚みのある音色が誠に素晴らしい。

所有する本国内盤(ポリドール)はPablo原盤のサミットより、何故か「音」がいいのです。

 

 

残りの2曲の一つが20年近く前、ハバードがB・エヴァンスの‘Interplay’で初々しく吹いた‘Wrap Your Troubles In Dreams’。キャリアの積み重ねが如実に反映され、もうF・HUBBARD SEPTETと化し、当時、人気、実力共にモダン・トランペッター№1の存在感を示しています。

 

ラストは本アルバムの白眉とも言えるバラード・メドレー。

まずハバードが‘Here's That Rainy Day’を大先輩二人の露払いに、続いて、まるで望郷の念を訴えるような哀感籠るテリーの‘Gypsy’、凄くイイです。

そして御大の登場、‘If I Should Lose You’、古いラブ・バラードをセンチメンタルに綴るガレスピー、恐れ入りました!

気障に聞こえるかもしれないが、「大人のジャズ」ですね。

 

なお、‘If I Should Lose You’は他に好きなtp演奏が。

やるせなさを通り越し・・・・・・・・・

次回にでも。


LEGACY OF FREDDIE HUBBARD (4) ・・・・・ SING ME A SONG OF SONGMY

2017-02-11 | Legacy of Freddie Hubbard

 

 

近くのSMのCDショップを覘くとキャンペーン中なのか、ATLANTICレーベルのCDがずらりとディスプレイされ、そのラインナップに、なんと本作が。よくぞこの作品が入ったものだ、と感心した。

ハバードの全キャリアの中で異色作の最右翼。

1968年、ベトナム戦争中に起きた米軍のよる「ソンミ村虐殺事件」を題にした抗議、告発作。

1969年、世界中を震撼させた「シャロン テート事件」への哀悼も含んでいる。

 

当時のハバードのレギュラー・クインテットの演奏をベースに、トルコ人で現代音楽家のイルハン・ミマールオール(ミマログル)がポエム、コーラス、シンセサイザー等々をオーバー・ダビングした作品。 

録音は1970年7月20、8月10日(1971年1月20日説もあり)。1971年にリリース。

 

 

当時、ハバードはCTIと契約を結び、70年1月、既に‘RED CLAY’を吹きこんでいる。恐らく、3者の間で了解済みと思われ、内容はシリアスです。

一部からそうしたハバードの姿勢をポジティブに称える声も挙がったが、「音楽に政治色を持たせる」行為をネガティブに捉える評論家が多く、それほど話題にならなかった。勿論、難解さが一般ジャズ・ファンに受け入れられなかったのも否定できない。

だが、そもそも「音楽に政治色、メッセージを持たせてはいけない」なんてナンセンスな了見だし、我が国の評論家にはまるで「UFO」みたいに映ったかもしれない。ま、ジャズの範疇で捉える事自体、ムリと思う。

作編曲はすべてイルハンの手で行われ、ハバードの演奏は「従」に聴こえるけれど、ハバードでなければ、果して「音楽」として成立ったか、甚だ疑問です。バック・カヴァの写真がその存在価値を証明している。

かくいう自分も、初めて耳にした際、「難解、理解不能」に陥ったけれど、改めてじっくり聴き直すと、現代音楽からフリーな世界を垣間見せながら決してラジカルさを強く押し出さず、むしろ理知的なプレイを聴かせるハバードを見い出した。制作コンセプトを実に良く理解している。クレバーですね。

ハバードは60年代、多くのレコーディング・セッションに呼ばれて、数多くの名作のアシストをしている。つまり、プロデューサー、相手ジャズ・メンから信用、信頼されているワケです。名を出すのは憚りますが、他のtp奏者達では務まらなかったのでしょう。

 

 

 

 

 

 

後の映画、フランシス・コッポラの「地獄の黙示録」を音楽化した感じ、と言うと解り易いかもしれない。といっても、あの映画もなかなか難解ですが・・・・・・・・・・

それにしても、ATLANTICというメジャー・レーベルからよくリリースしたものです。ゲート・ホールドのカヴァ、ピカソの「絵」、ATLANTICは「本気」だったのだ。ハバードのジャズ・シーンの中での「ポジション」が良く解りますね。

 

F・ハバードの「知られざる一面」を刻んだ怪作。 


LEGACY OF FREDDIE HUBBARD (3) ・・・・・FACE TO FACE

2016-12-29 | Legacy of Freddie Hubbard

今年も残す所、僅かになりました。

この一年、拙いブログにも拘らず訪問、また、コメントを頂き、ありがとうございました。

 

ラストに選んだ一枚。  

 

 

パーソネルは、

FREDDIE HUBBARD(tp), OSCAR PETERSON(p), JOE PASS(g), NIELS PEDERSEN(b), MARTIN DREW(ds)

収録曲は、All Blues,  Thermo,  Weaver Of Dreams,  Portrait Of Jennie,  Tippin'

録音は1982年5月24日  N・グランツがプロデュースしている。

 

ピーターソンとハバードのダブル・ネームになっていますが、結果的にハバード色が強いアルバムに仕上がっている。

ハバードとPABLO、そしてピーターソンとの組合せは意外で異色ですね。ピーターソン4というエスタブリッシュ派にハバードが他流試合を申し込んだ形で、互いに顔は大笑いしているけれど、心の中は・・・・・・・

でも、さすが一流のプロの大人達、相手を立てながら自己表現はしっかりとしている。地味ながら真芯を捉えているので聴くほどに良い味が出てきます。

 

ハバードも40歳を超え、一見、畑違いとも思えるエスタブリシュ派との交わりから次の糧になるものを得ようとしたのでしょう。並のトランペッターならば、ピーターソンは言うに及ばず、パス、ペデルセン共にスキルでは右に出る者はいない達人たち、一つ間違えれば飲み込まれてしまうリスクがありますが、ハバードは、胸を借りるつもりでありながら逆に彼等を従えてしまった感すらありますね。それも至極自然に。ハバードが持つスピード感によるものだろう。

 

ハートフルに歌い綴る‘Portrait Of Jennie’、シメを飾る急速テンポの‘Tippin'’での鮮やかさ、この男のtpは・・・・・・・・・・・・

 

皆さん、よい年をお迎えください。