boston acousticsで聴いた今日の一枚
Crescent / John Coltrane (Impulse) * 1964
ちょっとジャズを聴き込んだファンにとって、7月17日は、ただの一日ではない。特に60年代中~後半、モダンジャズ灼熱の時代をリアルタイムで体験していたファンには忘れられない一日である。
当時、「モダンジャズ界の黒い牽引車」として、また、最高峰に位置していたコルトレーンが、1967年の今日、肝臓ガンで急逝。享年40歳。何と言う若さだ。
その前年(66年)、初来日したコルトレーンのステージは異様、異常としか言いようのない壮絶なパフォーマンスでジャズファンを驚かせ、その光景は新聞紙上にも掲載された。よだれを垂らしながらtsを延々と吹き続け、聴衆はぐったりと身をシートにくねらせているシーンだ。
この頃のコルトレーンの演奏について、僕のような三下が説明するには及ばないので、割愛させて頂くにして、このアルバムは、コルトレーンがまだアヴァンギャルドな演奏スタイルに変貌する前の作品。世評ではあまりスポットライトが当てられていませんが、数あるリーダー作の中で大好きな一枚です。
コルトレーンは決して天才ではない。早熟なジャズミュージシャンが多い中、1956年、30歳にしてマイルス・グループの一員に抜擢され、ようやく表舞台に現れたが、当時の評判は「鈍才」であった。だが、その頃、すでに天才肌との評価が高かったロリンズへのライバル心と常にジャズ・シーンをリードしていくマイルスの存在が触媒となり、所謂、化学反応を起こし、その後、10年の間、ただひた走り、ついに「前人未到」の世界に到達したのだ。鈍才だからこそ出来るのであって、天才では到底、為し得ないであろう。だが、その代り、命と引き換えたのだ。
もし、真夜中の国道、バイパスを走っている時、このコルトレーンが流れ始めたら、果たして、そのまま、車を走らせ続けられるでしょうか?貴方は、きっと路肩に車を停め、静かに目を閉じるでしょう。
2曲目、‘Wise One’、マッコイのピアノ・イントロの後、まるで祈るか如く、深く、静かに、どこまでも響き渡るコルトレーンのtsを聴け!