TYPEⅢとⅤを持てば必要十分とずっと思っていたが、心の何処かで「不遇」と呼ばれるⅣが気になっていた。「不遇」とは価値、才能、実力等々が相当にあるのに、何故か世間で認められない状態(地位、境遇)を示すとなれば、谷間にひっそり咲く花かどうか、自分で確かめるのも一手かな。
先日、ガラス越しで目の前に(シェル付きで)。1週間経ち、ルーペを持参して出掛けると、まだ残っていた(笑)。要所をチェックすると驚いたことにボディにかすり傷一つなく、ブラシ、スタイラス・チップも未使用に近いNM 状態でした。使用期間が短かく保管状態が良かったのだろう。他に気が付いた所はシェルとの取り付け方が自分とは違うやり方で綺麗だった。自分はボルトをカートリッジ側から差し込みシェル側でナットで締める方法ですが、その逆でちょっと面倒ですが、ボルトの余りが見えなくて見栄えが良く、仕上がり感も完璧です。
シャンパン・ゴールドのシェルは何メーカーか分かりませんが、恐らくMg素材で造り自体もしっかりしている。こちらも傷一つありません。リード・ワイヤーはFRのOFCリッツ線ですね。余計な色付けが無く安心感あるタイプです。現時点で手を入れる所はどこもありません。
さぁ、音出しを。音が馴染んでくるまでちょっと時間が掛りましたが、納得がいく音が出てきました。高域に独特の光沢感を持つⅢ、緻密な質感を持つⅤのような一言で言い表せるキャラは直ぐ思い浮かばず、そこが「不遇」に結びついているのだろう。ただ、V15シリーズのレベルをキープしているので、何かしら手を加えれば好結果が期待できます。シェル付きで推定市場価格をかなり下回っており、随分、お買い得でした。
音出しに選んだ一枚は敢えて大の苦手のグリフィンを。あの、忙しく、猪突猛進していくプレイを聴くと3分ともたない。
けれど、ここでのグリフィンはまるで別人だ。その訳は、曲目をフォークソング、ブルースとバラードに絞り、各曲の演奏時間をほとんど5分以内にしている点とpにB・ハリスを配し、無用なブローイングを避けたところでしよう。中でも”Black Is The Color”、”251/2 Daze”、”Oh Now I See”での深みのあるソロは今までのグリフィンのイメージとまったく違います。18番と言える”Hush-A-Bye”のうす味のグリフィン節も心地よい。ラスト・ナンバー”Ballad For Monsieur”はリトル・ジャイアントと異名を取る男の隠れたデリカシーな一面を浮き彫りにしている。
ただ、コアなグリフィン・ファンは本作を認めず「ウケ狙い」としてネガティヴな評価をしている。色々な聴き方を楽しめる一枚ですね。
グリフィンの出色のソロ以上に驚くのが、tsの「音」のリアリティ。バラード曲”Oh Now I See’では、最低音まで、締まった「音」が実に生々しい。エンジニア、RAY FOWLERの手腕、恐るべし。