2ndカヴァの方が断然いい例外的な作品。1stはスタジアムにプラカードの人文字で”FIRST PLACE AGAIN ・・・・”と描かれたもの。
オリジナル・カヴァでは結び付かないレイモンド・チャンドラーのハード・ボイルド作品の主人公、探偵フィリップ・マーロウの名セリフの一つ、「男はタフでないと生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」を何故か思い出す。
本作の4人は全員、リーダーではなく脇役ばかりの人達である。デスモンドにしてもリーダーは、やはりブルーベック。
その彼が「フィリップ・マーロウ」になったデスモンドの代表作。
バック・カヴァにサブ・タイトルとして“An ‘After Hours’Session With Paul Desmond And Friends”と書かれている。確かに、デスモンド、ホールのコラボレーションを軸に4人の名手達によるリラックスしたプレイが全編に亘って聴かれるが、もう少しシビアな聴き方をすると、デスモンドのasにDBQの時と違っていつになく鋭さを感ずる。
「強かさと優しさ」、デスモンドのasの神髄が本作に秘められている。
必ず話題に挙げられる‘Greensleeves’は演奏時間が短いのがちょっと残念ですが、他の6曲は、演奏時間が充分に用意されており、デスモンドの正に泉に如く湧き出る美しいアドリブが心ゆくまで聴かれる。
企画性を持たせず、セッション風に仕上げた所に本作の成功があります。
母体がDBQとは言え、時代と共に変わることを望まず、忠実に己のスタイルを守り続けたデスモンドのリーダー・ラスト作”PAUL DESMOND”(ARTISTS HOUSE)。
”LIVE”(HORIZON)の後、追悼盤の形でリリースされた音源で録音時期(1975.10)はほぼ同じです。
ヘップバーンへのオマージュとされるブルーベックとの共作”Audrey”は何処かしこ長年の想いを切々と訴えている様で、聴き応えがあり、飄々としたイメージとは違う素顔を覗かしている。晩年を飾る名演の一つとして記憶されるでしょう。
1年半後、天に召される。
なお、このレコード、カートリッジによりビッカードのgが歪む箇所があり、例えば、SHURE V15typeⅤでは歪みません。歪む場合、カートリッジを色々試してみる必要があります。
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