自分にとって「ジャズ喫茶の大名盤、人気盤」と言えば、‘COOL STRUTT'IN’でなければ‘MOANIN'’、‘SIDEWINDER’でもなく、‘AT THE GOLDEN CIRCLE / O・COLEMAN’。ざっくり言えば、ジャズ喫茶に行く度に、いつも流れていた思い出が強い。そう言う時代にJAZZを聴き始めた。随分、前に一関のベイシーを訪れた時にも流れ、驚いたぐらいです。その、コールマンに一番、インスパイヤーされたジャズマンと言えば、同じasのマクリーンを置いて他にはいない。共演までするほどですから。
前作”LET FREEDOM RING”で見せた新生マクリーンを更に推し進めた作品。カヴァ写真に映るマクリーンの険しい表情が、これから始まる新しい航海への並々ならぬ決意を物語っているようです。その決意のほどは、‘LET FREEDOM RING’と本アルバムとの間に、かって、「幻の名盤」と謳われ、後年になって発表されたドーハムが参加した「4116」の他に、S・クラークが入ったカルテット盤”TIPPIN’ THE SCALES”をボツにしている点でも窺い知れます。裏を返せば、‘LET FREEDOM RING’から本作への道程は、必ずしも平坦な一本道ではなかったワケです。
そうした試行錯誤にケリを付けたのが、マクリーンがボストンで見つけた録音当時、僅か17歳の天才ドラマー、ANTHONY WILLIAMSの存在。その辺りの経緯は、マクリーン自身が書いたライナーノーツに載っている。
この作品の特異性は、楽器の編成。通常であれば、tbではなくtp、vibの代わりにpとなる。つまり、マクリーンはモード、或いは、フリーといった演奏手法上のアプローチの他に、グループ全体のサウンドの変化をも狙っている。そして、出て来たサウンドは、青白くクールに、しかも、以前よりもエモーショナルに燃え上がっている。
A面、B面、それぞれ1曲ずつ、マクリーン、モンカーが書き下ろしている。モンカーの二曲は‘FRANKENSTEIN’、‘GHOST TOWN’と、なにやらお化け屋敷を連想してしまい、本作へのイメージと重なり、とっつき難いかもしれませんが、御心配無用。
‘LET FREEDOM RING’ほどの衝撃度はありませんが、本作の充実度は高い。ただ、隙が無いか?と言えば、そうでもない。けれども、ウィリアムスのドラミングが全て埋め尽くしている。TOPのマクリーンのオリジナル‘SATURDAY AND SUNDAY’ではbのカーンと刻む細かなビートはそれまでのドラマーとは違うリズム感を生み出しているし、‘FRANKENSTEIN’では3/4拍子とは思えぬテンションが漲っている。
ここが、単なるスタジオ・セッションではなく、マクリーンが新たに結成したレギュラー・バンドの強みだろう。
マクリーンはライナー・ノーツの最後で、同じバンドで直ぐにでも次作を録音したい、とコメントしている。結局は実現しなかった(ウィリアムスがマイルス・グループへ移籍)が、マクリーンの心情は、正に‘ONE STEP BEYOND’、万年青年マクリーンの新たなる本当の挑戦が始まった。
"Bluespirits20100630”
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