「鉤」という字がある。この一字ではどう見ても「はり」とは読めない。
「コウ」「かぎ」ほかに「さぐる」という動詞があるそうだが、「はり」とは読まないだろう。
ところが頭に「毛」がつくと「けばり」になる。
「はり」も「針」も、真直ぐなものを想像する。
真直ぐな針では魚が引っかからないから、「けばり」に「毛鉤」を当てたのはわかる。
しかし、「つりばり」は、曲がっていても「釣り針」と書く。
「釣り針」は餌をつけて針の部分を見せなくし、「毛鉤」は自身を餌のように見せるという違いかと、変な理屈を思いつく。
だが、魚は字を読まない。
字は読まないが、形は読んで、その場所に棲む虫と形の違う毛鉤には飛びつこうとしないと聞いた。
それらしい形をしていれば何でも飛びつく人間よりも、魚の目は選択能力が優れているようである。