海洋の真っ只中で、難破したとしよう。
とりつくしまもなく、ただひとり。波にもまれただようのみの、心細るに陥ったとき。
何かを思う。
秘めたる心身の強弱を露呈するのはこういうときだろう。
難破するような事態に関わった自分の行動を悔やむかもしれない。
身の不幸を嘆くかもしれない。
途方に暮れるかもしれない。
改悛の情に浸るかもしれない。
郷愁の数々に涙するかもしれない。
つらつらと去来してはくすぶる想念に悩みは尽きないだろう。
騙しは効かず、泣き言も効かず、叱咤も効かず。聞くのは己の内なる声のみ。
そんな夢を見た。
知識と、感情と、志と、夢と。
大地は美しく、僚船美しく、トビウオ美しき。放屁さえもが美しい。
心強きも助くるは、美しきもの。