そもそも美味いのであるが、長いこと口にしながらもどんな味だったか今は思い出せずに啜る酒がある。
昨日がそうだった。
その人柄から気風のいい大人の男たちに愛され、それをこつこつときっちりと還す、そんなメンズバーを創り上げた。
必ずしも順風ではなかった人生を静かに終わらせた人を偲ぶ時、その人の酒の味が思い出せなくなった。
「世の中の 人と煙草のよしあしは けむりになりて のちにこそ 知れ」
勉強になりました、ありがとうございます、福さん、では一杯どうですか?
「はい、いただきます」という返事はなかった。