小売業者(”リテーラー”)が、商品販売等の営みに関するデータ(即ち、顧客の購買データや行動データ等の”ファーストパーティ・データ”)を活用することにより、メーカー等の広告主に、広告媒体(”メディア”)(例えば、店内のスペース、小売業者自身のWebサイトや関連アプリなど)の一部を提供し、収益を上げる仕組みを指しているようです。
小売業者にとって、商品の売り上げによる収益の他に、広告事業として新たな収益を得られるメリットがあります。我が国では、2021年頃から(注:欧米ではそれに先んじて)この種の広告事業を展開する小売業者やそれを支援する事業者が登場し、進展を続けているようです。
Webサイト(特に検索エンジン)や電子メール、アプリなどに掲載される”インターネット広告”では、広告配信のために、小売業者でも広告主でもない第三者的な「広告配信事業者」が、”サードパーティ・クッキー”に保持された行動データを基に、インターネット利用者の興味関心を導き出し、それを利用するなどしていました。
”リテールメディア”では、小売業者自身が保有する、顧客の行動データや購買データを活用する点が特徴となっています。インターネット広告で活用していたサードパーティ・クッキー上の行動データの分析から得られる情報は利用しなくてよいため、インターネット広告で問題視された”プライバシー問題(※)”も避けて通れるようです。
上記のようなことも背景にあって「リテールメディア」が登場し、広告主、小売業者の双方にメリットもあることから脚光を集め、急速に広まりつつあるようです。
※)インターネット広告では、サードパーティ・クッキーの利用がインターネット利用者のプライバシーを侵害するおそれがあるとして、2020年前後から欧米において、その利用を制限する動きが起こっていました。そのため、Googleなど大手の広告事業者や広告主などは、サードパーティ・クッキーを利用しない広告配信、広告掲載への軌道修正に迫られることとなりました。この辺りのことは、例えば、以下の文献を参照。
”インターネット広告手法(広告掲載の仕組み)の進展と今後の展望”、流通経済大学流通情報学部紀要 25 (2), 55-73, 2021-03-10
関連ブログ(“ネット広告におけるターゲティング手法の変更(グーグル)”とは、2021.3.6)は、https://blog.goo.ne.jp/blspruce/e/c23385a6e12ee851b4bfbf08f84e8d01です。