玫瑰の実

玫瑰の実や波音の聞えさう



　



バラ科の落葉低木。

北海道、本州北部の海岸に群生し、庭木ともされる。







六～七月頃、枝の先に紅色の五弁花をつける。

八月、果実となり、赤黄色で扁球形。

梨に似た味がする。







玫瑰が真っ赤な実をつけていた。

この実を見ていると、海の波音が聞えてくるようであった。






実玫瑰利尻礼文を訪ひしこと



　

秋の蟬

近づくも鳴きやまずゐて秋の蝉



　



蜩や法師蝉のように秋に鳴く蝉もいるが、夏から引き続き

鳴く蝉をも含む。







秋に入ると、蝉の鳴き方もどこか淋し気に聞える。







秋の蝉は空気と同じように澄んだ響きのある鳴き声となる。







秋の蝉が目の高さで鳴いていた。

近づいてみたが鳴きやまず、短い命を目一杯鳴いていた。






秋蝉や林の径に踏み入りて



　

藪からし

自転車の専用道や藪からし



　



ブドウ科の多年生蔓草。







他の草木に絡みつき、生い茂る。

藪や山林を枯らして繁茂するのでこの名がある。

「貧乏蔓」とも呼ばれる。







夏、黄赤色を帯びた小花を群がり咲かせ、秋に小さな漿果を

結ぶ。







公園には貸自転車があり、自転車専用道があった。

歩道と自転車専用道の間の垣根に藪からしが繁茂し、花を

つけていた。

、




藪からし煩悩払ひ難くして



　

鷺草

鷺草の羽搏く先に未来あり



　



ラン科の多年草。







本州以西の日当りのよい湿地に自生する。

絶滅危急種。







七～八月、茎の先に三センチほどの白い花をつける。

花が白鷺が翼を広げて飛翔している姿に似ているところから

この名がある。







鷺草は夏の季語となっているが、昭和記念公園では八月十

一日から鷺草祭で、この辺りでは初秋の花となっている。







鷺草が天空を羽搏くように咲いていた。

その飛んで行く先には未来が待っているように感じられた。






鷺草の乱舞といふもありにけり



　

木槿

天空の日輪高し花木槿



　



アオイ科の落葉低木。







中国、インド原産とされる。

平安時代以前に日本に渡来していたと考えられている。







観賞用として庭などに植えられる。

茶道では、秋の代表的な茶花として使われている。

一日で萎れてしまうので、「槿花（きんか）一日の栄」と栄華

のはかなさにたとえられてきた。







八～九月頃、五弁花を枝先につける。

花色は淡紅色、淡紫色、白色などがある。







天空を渡る日輪が高いところへきた。

木槿の花がその方向を向いて咲いていた。






井戸水を使ふをんなや木槿垣