2世代に渡り、首相の靖国神社参拝を告発した
台湾タイヤル族のお母さんと娘さん。
お母さんは小泉靖国裁判の原告でした。
今回、安倍靖国裁判で大阪地裁の証言台に立った娘ヤユトウ・インカさんは、
どう見ても30歳前後で、敗戦から遥か時を隔てて誕生したお嬢さんです。
その彼女がお母さんから引き継いだものは何だったのでしょうか。
陳述書を読みすすめていきたいと思います。
ーーー前回からの続き
2005年大阪地裁の判決(小泉靖国裁判)は、母たちの敗訴でしたが、
母は上訴しませんでした。
首相の靖国神社参拝が憲法違反だということは
裁判により認定されましたが、
合祀取り消しは拒否されたままで、大叔父たちの霊魂を台湾に帰すことは
まだできていませんでした。
2009年、私と妹の雲雅舜は、私の夫が付き添って「還我祖霊代表団」に参加し、
靖国神社に行きました。
台湾原住民の各族の代表は靖国神社の大殿前で、
私たち民族の伝統儀式に則り、
合祀されている高砂義勇隊犠牲者の霊魂を台湾に持ち帰り、
「還我祖霊」の使命を完成させました。
母のインカ=メビン(張雲琴華)は前回の裁判における原告の一人でした。
母はかつて私にこう話しました。
「2005年9月の大阪高裁判決は、
『日本首相の靖国神社参拝行為は平和憲法に違反する』というものでした。
あの判決は、日本の法律と社会の、
侵略戦争に対する反省と、平和を擁護するという良心の表れです。」
また、「平和を擁護し、原住民族を戦争の脅威から遠ざけることは、
高砂義勇隊犠牲者遺族の代々にわたる責任である」
とも言いました。
2013年12月26日、現在の首相である安倍氏が靖国神社に参拝しました。
私はそのニュースを新聞で読みました。
私はたいへん驚きました。
なぜこんなことが起こったのかと思いました。
台湾に帰省したときに、母にこのことを話しました。
母も驚きを通り越して唖然として、こう言いました。
「憲法は日本の国の最高法規であるはずで、
首相の靖国神社参拝は憲法違反だと認定しているのに、
なぜこのようなことが再び起こるのか、全く理解できない。」
母は深く憤るとともに、私にこう申し送りました。
「(これからは)あなた方が、
平和を守るという家族の責任を担わなければならない。」と。
平和はいつも野心を持つ政客によって破壊されます。
「首相の参拝は憲法違反」という判決から、まだ10年も経たない今日、
安倍首相はこの判決を顧みず、
2013年12月26日、公然と靖国神社を参拝しました。
この愚行は日本の憲法と世界人権公約に違反するばかりか、
台湾原住民族とアジア、世界人民の平和を愛する願望に逆行するものです。
また、今日の日本政府が侵略戦争の罪行への反省を拒絶し、
さらには歴史の真相さえ歪曲しようとする態度を体現するものです。
こうした行為は、アジアの平和に著しい脅威を与えるものです。
私たち民族は、日本の残酷な植民統治を受けたものです。
安倍の参拝は、私たち若い世代に著しい危機感をもたらしました。
私の夫は日本人です。
私たちは民族対立を挑発する如何なる言論、行為にも断固反対します。
一昨年末、安倍首相は「首相参拝違憲判決」を顧みず、
公然と靖国神社に参拝しました。
今年、安倍首相は一連の「戦争煽動法」を推進し、
日本を戦争の道に導こうとしています。
将来、日本が戦争を始めれば、日本籍である私の夫が徴兵されることを、
私は非常に心配しています。
このことはまた、
私たち夫婦の平和な生活を送ろうとする願いを著しく踏みにじるばかりか、
夫婦間の対立さえ生みかねないものでもあるのです。
私の学業や現在の仕事の関係で、
私たち夫婦には多くのアジアの友人や同窓生がいます。
それぞれ違った国籍を持った若者たちと私たちは共に学び、共に働いています。
安倍首相の靖国参拝に始まる一連の非理性的行為が戦争を招き、
アジアの若い世代間の感情に亀裂を生じさせないかと、
私たちは非常に恐れています。
私たちの生活を守るため、アジアの若い世代の感情を守るため、
そして、台湾原住民族とアジア、世界人民の平和への願望を守るため、
私は勇気を振りしぼって、安倍首相を告発します。
左がヤユトウ・インカさん。右は通訳さん。(7/31裁判報告会で)