旨味の足をひっぱるのは（BAの）誰だ

英国航空が悪名高き英国料理の恥辱をそそぐため、コミカルなほどの企業努力をしていると知り（ウォールストリート・ジャーナル日本版１１月１４日の記事「味気ない機内食との闘い―BAは旨味で勝負」）、「旨味はBAを救う」という記事を書いた。

その約一ヶ月後、ロングホールで英国航空（以下、BA）を利用する機会があったので、その機内食がどう変化しているのか、普段は少しも期待していない機内食を食べてみるのが楽しみだったのだ。

．．．

搭乗し、ウェルカムドリンクのサービスが始まるや、ほどなくメニューが配布される。シャンパンを飲みながらなんとはなしにページを開くと、いきなり "UMAMI"「うま味」の文字がベツレヘムの星のように輝いて目に飛び込んで来た。
まるでわたしからの挑戦を受けて立ったかのようではないか（笑）。
右はメニュー（クリックで拡大）。

「上空でのグルメ
畿内にいながら最高の味覚をお楽しみいただける新メニュー「上空でのグルメ」をご紹介いたします。私共は、機内でお召し上がりいただくお食事やお飲物について念入りに調査を重ね、シェフのチームは３０，０００フィートの高度でも、シンプルかつ本物のお料理と味わいを皆様にお届けできるよう取り組んでおります。
私共は、最も新鮮な季節感あふれる食材を厳選し、レシピにはうま味の多い材料を使い．．．」（太字はモエ）

この瞬間からわたしが食事をわくわくしながら待ったことはご理解いただけるだろう。

確かに鯛の南蛮焼きにはしょうがが上手く使われていて塩気は強くないのに味わい深く、味噌汁にいたっては「この出汁、誰がとったの？」と笑顔になるほど鰹の風味が効いていて、ミソを薄めただけの英国でありがちな味噌汁とは別ものだった（誉め過ぎ？）。

「シェフのチーム」、なかなかやりますね！


まあ、これぞBAという失態もあった。
エレガントなメニューの何種類もの前菜／メインの中から自分の好みでチョイスができるようになっているにもかかわらず、前菜が一種類しかないとか、メインの数が足らないとか。
旨味うんぬん以前の問題やないか！　と。

企業が経費削減をしようとするのは理解できるし、食べ物は無駄にすべきではない。しかし最初からどうしようもなく数が足りないのならば、あたかも豊富なチョイスがあるかのように「Cクラスのサービスはワンランク上のサービス」のように謳うのは誇大広告めいている。すてきなメニューを作成する必要もない。しかも往路も復路もCクラスのお客さんの数は１０人程度だったのに。

こういう状況を避けるために、例えばCクラスの客には（Fクラスにはさすがに全サービスが揃っているだろうから）事前に希望のメニューをネットで選ばせるとか。それが無理ならせめてジャンルだけでも洋食か和食か、魚か肉かくらい選ばせてくれたら．．．

さらに行きも帰りも同じ状態（数と種類不足）だったので、ある機会に夫がやんわり皮肉を言ったところ、行きの次点で客室乗務員から「ひどすぎる」と本部に報告がされていたという返事が来た。

旨味が会社を救う救世主のように活躍しようとしても、他が足を引っ張っては元も子もないし、そういうところが非常にBAらしい。


しかし夫はなんで性懲りもなくBAと付き合っているのか。

わたしたち夫婦間のようなものか（笑）。