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Brugge Style
is dit de oudste handtas ter wereld?
タイトルはベルギーのニュースのヘッドラインでオランダ語。
この文、同系(ジャーマニック)の英語と似ているのが分かりやすい文だと思う。
is dit de oudste handtas ter wereld?
is this the oldest handbag in the world?
(教科書風に)これは世界で一番古いハンドバッグですか?
字面を見るだけでも両言語が似ていることは分かるが、発音してみるとさらに驚くほど似ていると感じる。訛っているだけ? みたいな。東北で話されている言葉と関西で話されている言葉の差、程度。おもしろい。
しかし実際はオランダ語は英語よりも文法も発音もかなり難しいのだ!
...
夫が珍しく、わたしをどうしても連れて行きたい展覧会があると言った。
普通、展覧会の情報に詳しいのは、うちでは断然わたしであり、誘うのもわたしなのに。
ナショナル・ギャラリーのヴェロネーゼ展までにはまだ日がある。
テイト・モダンのリチャード・ハミルトン展に先日駆け込んだことは彼も知っている。
ビクトリア&アルバート美術館のイタリアン・ファッション展? それはわたしはとても見たいが、彼が行きたいと言うはずはない。
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夫が妻をぜひ連れて行きたいとウキウキ言ったのは、世界最古のハンドバッグ(ペルシャ/14世紀初頭)の展示を中心にした「宮廷と工芸/北イラクのマスターピース」という展覧会。
どうも彼はわたしが「ハンドバッグ」というイデアそのものを愛し、それにまつわる歴史もストーリーもすべて何にでも興味があると思っているらしい。
ええあたしゃハンドバッグが好きですよ。しかし、わたしが興味があるのはあのブランド、このブランド、自分が持って歩けるハンドバッグに限られるのだ...飾って眺めて耽美し、履いて気分がいいのはハイヒールだ。
彼のわたしに対する認識は、まあ毎度のように当たらざるといえども遠からず程度だが、ハンドバッグが女性にとって重要な役割を果たす、というのは事実だと思う。
ハンドバッグの中には、わたしたちがそれらなしでは外出できない道具、鏡や口紅や、香水や、レースのハンカチやメモ帳、本、(昨今はもちろんネット端末)が詰まってるのだ。
子供のとき絵を描くのが大好きだったわたしは、自分の分身を描く時には必ずハンドバッグの絵を描きこみ、その中には紙には描ききれない夢と憧れと可能性のすべてが全部詰まっていることにするのを一種の様式にしていた。
近現代でこそ女性が徐々に解放され、外に出て行くようになり、革製などの頑丈なバッグが主流になったが、昔は女性がハンドバッグを持って(小姓に持たせて)外出するというのは、よほど特別な機会だったのだろうと思う。特に宮廷の女性が身の回りのものをまとめるためのハンドバッグを必要とするというのは非日常に違いない。
700年前のペルシャの女性もそうだったのか。
どこに出かけたのだろう。
思い込みと言うのは怖い。
わたしは、この小さな写真からハンドバッグの表面の模様は絹の織り地模様で、クラッチバッグのような小型(底辺がせいぜい18センチほど)、ペルシャの宮廷の女性の所有物だろうと思い込んでいた。
ところが実物のこのバッグは真鍮製で、大きさは底辺が(正確な値が記されていなかった)25センチはあり、まちも最大幅で10センチ以上はある、贅沢な工芸品には違いないが、実用性も十分あるものだった。
絹織物製に見えたのは正にそれを模して制作されたからで、14世紀初頭のモスル(現在のイラクはバグダットから300キロ強、チグリスとユーフラテスの岸辺、古代都市ニネヴェのこと)の金属加工技術の高さを忍ぶことができる。
この時代、モスルはモンゴル帝国の一部で、当地の特産品だった真鍮製品は、東方から来た宮廷人好みのデザインを用いて生産されるようになったらしい。だからこのバッグはおそらくモンゴル帝国の身分の高い女性の所有物。
ということはモンゴル、騎馬民族、このハンドバッグの持ち主だった女性も、騎馬であちこち移動したのだろうか。傷みやすい絹製等ではない耐久性に優れた美しい真鍮のハンドバッグというのは愛されたでしょうな。これはわたしの想像だが。
解説にはハンドバッグの中身は、鏡、ナプキン、香水の類いだっただろうと記してあったから、あながち的外れでもないかもしれない。
もし、日本が元寇に征服されていたとしたらどんなハンドバッグができていたのだろう...
一室のみの展覧会だが、モンゴル帝国のように想像力が広がる主旨だった。
5月18日まで。
(ハンドバッグの写真はコートルード・ギャラリーから)
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