知事選の投票日まで残り、1週間となった。台風来襲のために、十分な活動ができないが、沖縄平和市民連絡会は、風雨の中でも朝夕のスタンディング活動等を続けている。
9月11日、那覇では知事選だけではなく、那覇市長選、県議会補欠選挙もあわせて行われる。
佐喜真氏が知事となれば、昨秋のデニー知事の辺野古・変更申請不承認をただちに取消し、大浦湾側での工事が始まってしまうだろう。なんとしても、デニー知事の再選を勝ち取らなければならない。
そして重要なのは、県議会の補欠選挙である。翁長雄治氏が那覇市長選に立候補するために県議を辞職したので、現在、県議会は知事与党23と野党23、中立2という構成になっている。補欠選挙で自民党公認候補が当選すれば、デニー知事が当選しても、知事を支える勢力は少数派となり、知事の政策を実現させることは難しくなってしまう。県政は大混乱するだろう。
知事与党が議会で少数派になれば、辺野古新基地建設事業については当面、2つの問題が発生する。
1.設計変更申請不承認に関する抗告訴訟が提訴できなくなる
まず、知事の設計変更申請不承認に対して、国交相の取消し裁決、「是正の指示」を違法として抗告訴訟を提訴することが難しくなる。現在、県は、これらの2件について国地方係争処理委員会の裁決の取消を求めて福岡高裁那覇支部に「関与取消し」訴訟を提訴している。この提訴にあたっては議会の議決は必要がなかった。
しかし今後、これらについて抗告訴訟を提訴しようとする場合、地方自治法に基づき議会の議決が必要となる。与党が少数派となれば、知事の提訴提案が議会で否決される可能性が高くなってしまうのだ。
2.県外からの土砂搬入の際に特定外来生物の侵入を阻止するための土砂条例が廃止される可能性
沖縄県議会は、2014年、「公有水面埋立事業における埋立用材に係る外来生物の侵入防止に関する条例」(以下、「土砂条例」)を議員提案で可決した。
県外から埋立土砂を搬入しようとする場合、ヒアリやアルゼンチンアリ等の特定外来生物の侵入を阻止するために、事前に県への届出を必要とする条例である。必要な場合、県は現地の土砂採取地等に立入調査を行う。
今までに、那覇空港第滑走路埋立事業の際、奄美大島から石材を搬入するとして土砂条例が適用された。業者の申請書では、「事前調査の結果、特定外来生物は見つからなかった」とされていたが、県の立入調査の結果、3ヵ所の採取地や3ヵ所の土砂搬出港の全てで特例外来生物が確認された。県は最終的に搬入を許可したが、石材をダンプトラックに積んだ状態で大量のシャワーで洗浄する等の条件をつけた。
那覇空港の場合は石材だったから、ていねいに洗浄すれば特定外来生物は一応、除去できただろう。しかし、今回、辺野古埋立に使われるのは大量の土砂である。土砂の場合、シャワーをかけるとほとんどが流れてしまうので洗浄という手法はとれない。そのため、防衛局は過熱処理等の実験をしているが、大量の土砂を加熱することなど不可能である。
そのため、防衛局は設計変更申請では、「県内で全量調達可能」として、沖縄南部地区等からの土砂を搬入する計画を打ち出した。しかし、南部地区の土砂には、大戦当時の戦没者の遺骨が今も残っているとして、強い批判が集中している。
今回の補欠選挙で県議会の構成が変われば、自民党県議らの間で辺野古を促進するために土砂条例を廃止しようとする動きが始まる可能性がある。そこで彼らは、土砂条例廃止の理由として、「遺骨混りの南部の土砂を使用しないため」と言いだすかもしれないのだ。
デニー知事の再選を勝ち取ることはもちろんだが、県議補欠選挙で絶対に自民党の候補者を勝たせてはならない。