きのこの山からの帰り道、道の脇に獺祭の幟が並んでいた。獺祭はこのところの贔屓のお酒の銘柄のひとつだが、自宅周辺の山田錦の田圃と契約しているのだ。去年は随分早くから幟を立てていたが今年はポツリポツリと立っているだけで、どうしたのかなと思っていたのだが、収穫の時期になってそこら中に立て始めたようだ。
早くから立てると色褪せるし、台風で倒れもするからちょっと賢くなったのかもしれない。幟の間から田圃を撮る。
自宅の周りは一面、酒米の田なのでこういう景色は毎年のことなのだが、黄金色の田が夕陽に照らされて輝いているとどうしても写したくなってしまう。去年も、今年も。
いろいろ、考えて撮るのだが後で観ればどれも似たようなもので、進歩なし。
どうも獺祭の宣伝をしているみたいだ。
車を停めてカメラだけ持って歩いて廻る。車道を歩くと車に轢かれそうにそうになるので田の畔道を歩いていると、稲の間から子狸が顔を出して車道を渡ろうとしていた。様子を伺っている。
立ち止まって様子を見ていたが、子狸と目が合った。そこで、「やめときな。」と声を掛けると、慌てて稲の中に戻って行った。畔を進んで行くが狸の姿はもう見えず、稲穂が不自然に動くこともなかった。
来週は秋祭りだ。神社の入口には幟が立って、準備が始まっている。
車に戻り自宅に向って少しばかり走った。自宅から少し坂を下った辺りにも田圃が広がっているのだが、その田は剣菱酒造が契約している。最近まで知らなかったのだが、剣菱が契約して栽培している酒米は愛山(あいやま)という品種だ。
愛山の方が少々、色付きが遅いようだ。
そして、丈が山田錦よりも少し低いような気がする。
愛山という品種は幻の酒米とも言われるているらしいが実際はそんなことはない。愛山は大粒で酒造りに適した米だが、背が高くて倒れやすいので農家にとっては作りにくい米だ。そこで剣菱酒造は自社の契約田で40年間、愛山を保護して作ってきたらしい。それが、あの阪神大震災で剣菱酒造が被害にあって、その年の酒造りを断念してから他の蔵に広まってしまい、今では多くの蔵が使っているということだ。
剣菱酒造 愛山契約田
陽が沈もうとしている。
車に戻り、今度こそ自宅も帰ろう。ここから自宅まで500mくらいかな。畔焼きが始まった。
長い一日のおわり。