ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

北海道が「分県」?

2016年08月11日 13時21分52秒 | 国際・政治

 たまたま、Yahoo! Newsを見たら、北海道新聞社が配信したという「北海道は分県を 自民道議が案」という記事(11時付。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160811-00010001-doshin-hok)を見つけました。北海道新聞社のサイトでは「北海道を3県か2県に 自民道議が分県案 『知事1人では限界』」(8月11日10時44分付。http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/politics/politics/1-0303196-s.html)となっていますが、IDとパスワードを入れないと全文を読むことができません。そこで、今回はYahoo! Newsのほうを頼りにしつつ、見ていくこととします。

 都道府県と一言で表現しても、人口、面積などについて大小様々です。陸地の面積という点では北海道が最大、香川県が最小で、たしかに北海道の広大さ、市町村数の多さでは、様々な政策について適切な対応を採るのが難しいかもしれません。

 今回の「分県」という案は、自民党の北海道議会議員の研究会がまとめた報告書(案)によるものです。北海道新聞社は「都道府県の枠組みや道内の自治の仕組みを根本から変える提案」と書いていますが、後者はともあれ、前者については、それほど大げさなものなのかという疑問は湧きます。歴史を見ても、北海道が最初から単一の地方公共団体であった訳ではなく、旧国名をあげるならば石狩国、渡島国などと分かれ、廃藩置県の後には函館県、札幌県、根室県が存在していた時期もあります。北海道にまとめられたのは、ひとえに人口の少なさによるものでした。広大な領域のために、渡島支庁、石狩支庁などの支庁制度が存在し、現在は振興局または総合振興局が置かれています。

 昨今の道州制の議論、市町村合併の流れからすると、北海道の「分県」には違和感を覚えるという方もおられるでしょう。都道府県の合併による道または州の設置という方向性とは逆になっているからです。ただ、北海道新聞社の記事には、「報告書案は『人口減少対策で個々の市町村が成果を求められている』と強調している。また、市町村数が179に上るため『道知事は個別の案件で国への要請を行えない』と訴えた。複数の知事の連携で国から大型事業の予算を引っ張ってきた九州、四国の例にも言及した」とあります。九州と言えば、かなり前から九州知事会が道州制を積極的に提唱してきた所です。その意味では、道州制の議論と無関係、または道州制と矛盾するものではないことがうかがえます。北海道一道のみか九州7県かという視点なのです。

 勿論、「広大な北海道に知事が1人だけでは、政治力で他の地域に見劣りし、市町村へのきめ細やかな対応ができないと問題視」という観点を忘れてはいけません。ただ、問題は札幌市への一極集中が顕著であることで、分け方によっては経済力に極端な格差が生じかねません。

 報告書(案)は、①「道央・道南」、「道北」および「道東」の三つに分ける、②「道央・道南・道北」と「道東」の二つに分ける、という案を出しています。他にも「道南」、「道央」、「道北」および「道東」の四つに分ける案と、「道東」をさらに三分割し、全体を六分割する案もあったようですが、「道南」(具体的にどこを指すかは明示されていません)は人口、域内総生産のいずれについても全都道府県を下回ってしまうので「道央」と一緒にするしかないようです。また、「道東」は、産業構造が大規模農業を中心となっていることから、「道央」などの地域とは別とする、といいます。

 なお、いずれについても、分割後のそれぞれの県庁または道庁の所在都市は示されていません。

 仮に上のいずれかの案が推されるとして、今後、様々な手続が必要とされ、実現は容易でないと思われます。報告書(案)もその点を指摘しています。また、分割しないとしても、かつての支庁制度を復活させた上で権限を支庁に配分する、などの手もあるでしょう。今後に注目しておきたいと考えております。

 それにしても、他の政党がこのような案を出さないのは、現在の北海道という地方公共団体に何の問題も感じていないからでしょうか、または政策策定能力がないからでしょうか。これでは「対案を出せ」と言われても仕方のないところでしょう。


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