師走です。
また北国にとっては厳しい冬の到来。そこで今の時期にお似合いの牧歌的色合いできめてくれる渋い1曲を紹介しましょう。
ブラスロック・ブーム真っ盛りの1970年前半、シカゴとは何かにつけて比較対象として取り上げられていたBLOOD SWEAT&TEARS。
シカゴよりも一足先の1968年2月にデビューしていた彼らは、カントリー界の大御所、ジョニー・キャッシュのアルバムタイトル名をそのまま拝借したバンド名で登場。
ブルース・プロジェクトとしての活動を一段落させたアル・クーパーがあのランディ・ブレッカーらを率いてのデビュー作「子供は人類の父である(CHILD IS FATHER TO THE MAN)」は期待通りの成績を残すことができませんでした(全米ビルボード誌最高ランキング第47位)。
そこでさっそく、大幅なメンバーチェンジを行い(この時点で早くもアル、ランディ―は脱退。1968年4月31日付)カナダ出身のデヴィッド・クレイトン・トーマスという逸材を発掘、加入に成功。
またセカンド・アルバムのプロデューサーにはバッキンガムスによるブラスサウンドの導入による大胆な革新的ロックサウンドで話題を集め、次いではシカゴのデビューに向けて奔走していたジェームス・ウィリアム・ガルシオが担当。(彼はBS&Tのファースト・プロデュースも依頼されたのですがシカゴにかかりっきりだったために断ったそうです)
そして、ここにBS&Tにとってもブラスロックにとっても、またロック史上においても輝かしき金字塔ともいうべき傑作の誕生となったわけであります。
バンド名をそのままアルバム・タイトルに冠した「BLOOD SWEAT&TEARS」(邦題:血と汗と涙)は1969年1月リリース。実に連続7週にわたって№1に輝き、第12回グラミー賞にて、アルバム・オブ・ザ・イヤ―、ベスト・コンテンポラリー・インストウルメンタル・パフォーマンスまでも獲得。シングルカット曲も3作がミリオンを記録しました。
まさに彼らにとっての黄金期。まあ、ガルシオいわく「十分に殺菌されたレコード(the most antiseptic record)」だとのこと。
いずれにしても取り上げられたカバーも秀逸、アレンジ、テクニックと申し分のないほどの手ごたえを感じさせる名盤!と言いきっても過言ではないでしょう。捨て曲なし!!写真の帯付きLPは4チャンネル仕様盤。左の輸入盤は見開きジャケットです。
さて、タイトルの「サムタイムス・イン・ウィンター」はシングルにはなっていないのですが、初期BS&Tにとっては忘れることのできない名曲の1つとして数えられています(アルバム3曲目に収録。計測タイム3:07)。
珍しくボーカルはデヴィッドではなく、作者でもあるギター担当のステーブ・カッツが味わい深くも説得力のある声を聞かせてくれます。ある冬に芽生えた恋、出会いと別れを詩情豊かに表現。
美しくも切ない物悲しい曲の流れ・・・・繊細なフルートの音色、そしてミュートのかけられたトランペット、抑え気味のワイヤーブラシ、ドラマティックな展開は珠玉のラブストーリー名画を観ているようでもあります。この曲の前後に演奏されるハードに疾走して吹き荒れるブラスロック達との対比も絶品です。
その後のBS&Tは来日公演も大成功、3作目も第1位に輝きましたが、例によってメンバーの脱退が相次ぎ、一時の勢いは失速する一方・・・・現在もオリジナルメンバー不在のままに地道に活動を続行しています。
各メンバー達は多方面において活躍中、一度は生のライブを観てみたいバンドです。シカゴとのジョイントなんて企画はいかがでしょう!?もちろんトリはシカゴ・・・最後にビル歌唱の曲をデヴィッドが歌うとか・・・・実現はちょっと難しいかな・・・・。