セルフカバーであるこのCDは2009年の録音で2013年リリース。ビル・チャンプリンが脱退した頃なので彼のボーカルはない。かわりにリー・ロックネインが第三のボーカリストとして頑張っている。
これらの選曲には賛否両論あるだろうが、シカゴの初期のベストアルバムにかなり近い。ほとんどの曲(全部かもしれない)がテリー・カス在籍時のもので、彼が不慮の事故で亡くなって30周年になるのを記念して録音されたかのようにも思える。
Remember Terry Kathってところだろうか。そういえば現在はロバート・ラムがバンド・リーダーであるが70年代後半までの初期のシカゴは完全にテリー・カスが引っ張るバンドだった。
オリジナル曲が出てから40年前後過ぎても、当時とほとんど変わらない演奏ができているのは、ずっとステージで何百、何千回と目をつむっていても演奏できるくらいライブを続けてきたからであろう。
1. 原曲を忠実に再現した1曲目からいきなりぶっとんでしまう。現在のギタリストであるキース・ホーランドによるテリーのギター・ソロの完コピ。ソロだけでなく音色までテリー・カスを再現。多分、このアルバムでも一番の出来である。
2. ライブではよく頭に演奏されているのでイントロはオリジナル通りにしてほしかったが、ここではシングル版用のショート・バージョン。ライブではフルの組曲でも演奏されているのだが、ここで望むのは無理だったのだろうか。ライブではビル・チャンプリンが歌うことが多かったが、彼の脱退後はロバート・ラムかビルの後任のルー・パルディーニが受け継いでいる。しかし、ここではなんとリー・ロックネインがボーカルだ。しかもオリジナル曲で歌ったテリー・カスそっくりに歌っているのだ。
4. 初期はロバート・ラムも才能を最大限に出した時期であり、出し尽くした感もあるが、この曲は大好きなナンバーだ。しかし、何故かこの曲だけオリジナルよりも短縮されてしまっている。聴いていてものすごく不完全燃焼の気分にさせられてしまうのが残念。
5. これも大好きなロバート・ラムの曲。小学校高学年のころラジオの深夜番組でこの曲を聴いたのが最初のシカゴとの出会い。ロバートの声もあれから40年過ぎてもほとんど衰えていない。
6. Make me smileに引き続き、ここでもリー・ロックネインが原曲に忠実なボーカル。
ライブではほとんどの場合、ロバート・ラムが歌っていたが、あえてリーのボーカルにしたのはテリー・カスへの想いからだろうか。
7. 初期のロバートの傑作のひとつ。 昔はこんないい曲を書いてたのにその後はどうしてしまったのだろうか。 バック・コーラスの歌う"I don't care all the time"というところがたまらなくいい。 この演奏も原曲に限りなく近い。
8. 初期のシカゴはこのような骨のある曲があった。売れなくなって軟弱なラブソング路線に進まされていくのはちょっと哀しかった。日本公演ではこの曲は日本語で歌われていたが、その詩を担当したのが北山修だったというのには驚いた。キース・ホーランドはここでもテリー・カスのギター・ソロの完コピ。
個人的に思い入れがある曲はここまでだが、初期のセルフ・カバーというのであればIntroductionやFreeなども含めて欲しかった。ライブでも演奏し続けているので問題なくできたはず。
このアルバムは基本的には大満足。ただジェイソン・シェフのボーカルはピーター・セテラに似せられるものの、本家を超えることはできていない。伸びのあるクリアなハイトーンはピーター・セテラの右に出るものはいないし、比べるのも酷かもしれない。それでもここではジェイソンは原音を忠実に再生することに徹している。 普通なら前任と同じ歌い方はせず、自分の個性を出すものであり、ステージでもそうしているがここでは別。実際、ピーターとそっくりのところもある。ギターのキースもそうで、テリー・カスの音の再現に徹している。 加えてホーン・セクションの演奏、それにロバートやリーのボーカルはそれを補って余りある。
オリジナル・メンバーは4人だけになり、しかも全員そろうことも難しくなり、ステージではホーン・セクションの誰かはトラが入っているが、ここでは孫のいるおじいちゃん年代ながら老体に鞭を打って頑張っているのが嬉しい。
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〜アマゾンのコメント欄から引用させていただきました!〜