「長い夜」に続く日本独自のヒットシングルが「流血の日」(2:48)。写真は見本盤も並べています。白レーベルがそれ。
穴は三叉式。そして「長い夜」の大ヒットでこのEPより見開きジャケットに昇格、出世しました。メンバー達のフォトではなくはじめて「シカゴの軌跡」がそのままジャケット・デザインに使用されています。
歌詞と対訳、解説、ディスコグラフィー付き(LP&EP&コンパクト盤)。
とにかくこの頃のシカゴは急激に人気上昇。そこに便乗して、世界中で改めてデビュー・アルバムからシングルを数枚カットしています。(この時点でアメリカでは「ビギニングス」もカット。でも日本ではその曲はまだ未発売)
で、このシングルですがタイトルからもわかるとおり、甘ったるいラブソングではなくシカゴ民主党大会におけるデモ行進とそれに相対する警官隊との激突シーン、シュプレヒコール「世界中が見ているんだ」を曲の2箇所に導入して恐ろしいほどの効果を生んでいます。
ストレートに反戦を歌っていますが、この強烈なイメージが焼きついてロック界全般から「シカゴは反体制グループ」という烙印を押されるキッカケを生んでいます。
本人達は別に戦争や政治云々を取り立ててバンドの主題に置いている意識はなく「若者、世間一般が感じている事を我々が音楽というフィルターを通して代弁しているだけ」とのこと。
アルバム・バージョンは前奏部分の「シカゴ民主党大会」デモ隊VS機動隊との攻防から幕開け。ある警官の「ここから出て行け(GET OUT HERE!!)なる罵声もしっかりと聞き取れます。
テープ編集の繋ぎでシュプレヒコールが延々と続きそれが一定のリズムに変化した時点で不気味にシンバル、ベース、ピアノ、ギター・フィードバックが重苦しく覆いかぶさってきます。
迫力在るブラス隊が登場した時点で力強いリズムに変身。軽快なるボーカルが開始されます。
作者はジェームス・パンコウ&ロバート・ラム。
メイン・ボーカルはボビー。サビ部分はピーター・セテラ。
よくよく聞いてみるとコーラスにも凝った演出があります。
中間部分で再びイントロのシュプレヒコールがフィードバックに乗って再登場。
エンディングも独特の重厚なるかっこよさでいきなりドラマチックに畳み掛けます。ミツ大のお気に入りソング。
一切の無駄がない極上の硬派ブラスロック。初期にはこのような切れ味鋭い楽曲がたくさん生み出されていました。
ところがですね・・・・このシングルは「ぼくらに微笑みを」に負けないくらいの大編集が施されています。
まず、いきなりの掟破りでエンディングがイントロに飛び出してくるのですよ。ビックリ。
徐々に盛り上げていくやり方だと時間の問題でいただけないとのことで、スパッと本題突入。
実のところ、私はこのシングルを最初に聞いていたので逆にアルバム・バージョンを後追いで聞いて衝撃を受けた口です。そういう人っているでしょう、けっこう。
なんといってもシカゴは2枚組アルバムばっかりだから、当時のロック少年達は金銭的事情を考慮して泣く泣くシングル先行で聞きあさっていたのです。
しかしこれは大胆な手法。よくこうやり方を思いついたものですね。感心しちゃいます。
ミュージシャンを取り巻くスタッフなどにも熱気溢れる人たちがいっぱいいたんだろうなあ。
最初にも書いたとおり日本独自のシングルゆえに未だにこのバージョンはCD化されていません。祈!初CD化!!
STAはSEとしてデモ行進から流血の日までをそのままライブで再現。ミキサー・スタッフにも照明含めて協力してもらいました。
マニアは大喜び。知らない若者達は訳もわからず凍りついていました(笑)
B面は「一体、現実を把握している者はいるだろうか?(3:19)」
前回紹介したボビー作&VOのヒット曲。
つまり両面ともにメッセージ色濃厚なるヒット曲ですな。
ちなみに「流血の日」、初期段階では純粋なるラブ・ソングだったのでした。