久しぶりに面白くて一気読み!
稲垣潤一初の自伝本「ハコバン70's」
しかも直筆サイン入り。
スィートボイスで酔わせるJ-ポップシンガーのイメージを軽く凌駕してしまうほどの熱い一冊。
内容は稲垣潤一という遅咲きのミュージシャンが、高校生アマチュアバンド結成してからプロデビューのチャンスを得るまでの10年間にスポットを当てています。
いつも自転車に乗ってアルバイトの日々、夢を抱きつつ上京して米軍基地で過酷なバンドプレイ。あっけなく挫折して故郷の仙台に戻り、鬱屈した気持ちのまま実家へ。就職しても1日で退職!昔のバンド仲間からの誘いにのってライブハウス、キャバレー、ビヤガーデン、ディスコでハコバンとしてボーカル、ドラムの腕を着々と磨きます。
稲垣潤一さんの10代から20代の青春にリンクして世の中のあらゆる流行話題を絡め「あゝ、あの頃だね〜」と勝手にこちらまで体験共有している気分に浸れます。
ジャズ喫茶やお世話になっているカワイ楽器の店長、居酒屋、ライブイベントの企画、トラの仕事などリアルな音楽ライフ満載。
そして稲垣潤一さんのルーツとも言えるバンド名や曲名にも思わずニンマリ(*´◒`*)。スティービーワンダー、ビリージョエル、ディープパープル、スタッフ、ジェフベック、スライストーン、ブラジョン、ジョージベンソン、キャロルキング、KC&サンシャインバンド、カーペンターズ、CCR、クリーム、ジミヘン、ディラン、サム&ディブ、レイチャールズ…と続々。もちろんビートルズもね。
本のタイトルどおり70年代をハコバンとして汗して涙して頑張り続ける稲垣青年!(耳と喉を傷めてミュージシャン生命の危機におちいる章あり)。
彼を取り巻く人々がこれまた魅力的。理解ある両親、個性豊かなバンド仲間達。
稲垣青年の才能を信じてずっと応援してくれた地元のファン達などなど。
最終ページはプロデビューの為に東京を目指す稲垣青年。彼を暖かく見送る仲間達。
感動的なエンディング。バンド仲間のギタリストが「これから稲垣にとって新しいステージの幕開けだな!」すかさず稲垣青年「バーカ、おまえ達とこの街でハコバンはじめた時からずっと幕は開きっぱなしなんだよ!」
バンドやライブ経験ある方ならば誰でも自分に重ね合わせて読んじゃいますよ。
稲垣さんは、決して順風満帆なミュージシャン人生ではなかったのです。近年は女性シンガーとのデュエットアルバムシリーズが大ヒットしていますが、最初の奥様を亡くしているのですね…。プライベートライフの露出は全くと言っていいほどないので知りませんでしたが。
そして稲垣青年もブラスロックに憧れて一時大編成のバンドも結成していたのです。シカゴの長い夜や、チェイスの黒い炎、そしてBS&Tなんかの文字が4箇所に出てきます。
結局はジャズあがりのホーンセクションと、ロック志向の稲垣サイドとの考え方のズレであっけなく分裂してしまうのですが。
シカゴが18枚目のアルバムを引っさげて来日。フジテレビ「夜のヒットスタジオ」に出演したことがあります。その時、稲垣潤一さんも出演していて、もうその時の彼は純粋なロック少年そのもの。ロバートラムに質問して「どうしたらシカゴのように長年最前線で活動し続けられるのですか?」。
回答は「メンバー全員が同じように音楽を愛し、ライブを楽しむ事だよ」との事。