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「母親が息子の子どもを妊娠してしまった」障害者専門の風俗嬢が目の当たりにした“障害者と性”の問題 “障がい者も同じ悩む人間、障害あるから聖人君子ではない”

2023-12-16 00:10:00 | 社会

 健常者にあるように、障害者にも当然、思春期以降は性欲が芽生える。健常者であれば、夜のお店やパートナーを作ることなどで解消するが、それができない障害者もいる。日本では障害者の性の問題は表立って語られない。だが、当たり前にあるはずの問題を「ない」かのように扱われる障害当事者はいったいどうやって性欲を解消しているのか。

 そんなセンシティブな問題に寄り添う、小西理恵さん(30代)に話を聞いた。小西さんは大阪府大阪市で「障がいと性に関するカウンセリング」についての講演を手がける一般社団法人・輝き製作所の所長で、障害者へのデリバリーヘルスサービス事業も行っている。

金額は1時間1万8000円

 輝き製作所では現在、業務委託で事務・広報・風俗店のキャスト(大阪で5人)と契約をして事業を展開している。キャストの中には、今まで風俗経験がなく裸にはならずに手で介助のみの人、本業がある人もいる。月10数件のデリバリーの依頼がある。公的支援は利用できないので、金額は1時間で1万8000円だ。

「障害がある人だからといって料金を安くするのは何か違うと思いました」

 大阪府で生まれ育った小西さんは、幼少期に両親が離婚したことから、父方の祖母・大叔母・2歳下の妹の4人家族だった。家計を支えていたのは、主に祖母で、家計の事情もあり小西さんは高校1年で退学している。

高校を退学して選んだ道

「その時は早く働いて家計を支えたいと思いましたが、今となって考えると高校くらい出ていれば良かったと思います。だけど、高校を卒業していたら今やっているような事業はしなかった。人生は面白いですね」

 高校を退学した小西さんは、飲食店でアルバイトをしていたが、当時の恋人との同棲費用7万円を稼ぎたくて高級ヘルスの世界に入る。だが、好きな人がいるのに、他の人に性サービスをすることがつらくなり、1年ほどで辞めてしまう。

 小西さんが19歳くらいの頃、80代と高齢だった祖母が仕事を辞めたいと言った。当時、月給100万円ほど稼いで、すでに実家にお金を入れていた彼女は、反対しなかった。

祖母がパーキンソン症候群になり葛藤

 だが、それが裏目に出たかのように、祖母は仕事を辞めると、あっという間に身体機能が衰えた。

「当時は知識もなく聞ける人もいなかったので、診断名はついていませんでしたが、パーキンソン症候群のような症状が出ました」

 パーキンソン症候群になると、震えが出たり、転びやすくなったりと体の動きに障害があらわれる。そんな祖母は介護老人保健施設に入所し、福祉の世話になることになった。小西さんはそんな祖母にたまに会いに行っていた。祖母にはだんだんと認知症の症状も現れ、小西さんは葛藤と孤独に苦しんだ。

延命治療を拒否して、祖母を自宅で介護

祖母の介護で悩んだという小西さん
「私の知っている祖母ではなくなっていく感じがしました。産まれたときから一緒にいた祖母のそんな姿に、葛藤や寂しさを感じました。祖母は体が動かなくなっていきました」

 パーキンソン症候群の症状が進行した祖母は、食べ物を飲み込むことが難しくなった。介護施設でのケアが限界となり、病院に転院する。そんな祖母に、胃ろうをつけて延命するか、医療行為をしないかを選択するタイミングが訪れた。

「延命治療するかしないかを決める判断をしたのは私でした。人生であんなにつらい思いをした日々はありません」

 信頼していた知人に「理恵ちゃんが同じ状況だったらどうして欲しいと思う?」と聞かれ、自分だったら延命は絶対にして欲しくないと思った小西さんは、自宅での自然な看取りを選択した。それは元気だったころの祖母の願いでもあった。

運命を変えた訪問看護師との出会い

 祖母の在宅介護のときに、小西さんの運命を変えた訪問看護師との出会いがあった。「理恵ちゃんが一生懸命、決めたことだから、頑張りましょう」 。その言葉でとても救われたという。祖母は3年ほどの介護の後、83歳で亡くなった。

「祖母の死後、どういう目的を持って生きていくのかと考えたとき、その看護師さんとの出会いがあったので、福祉しか考えられませんでした。あの看護師さんのように家族のケア・サポートができるような人になりたい」

 そう思った小西さんは、介護初任者研修の資格を取りに学校へ行く。高齢者介護をするつもりだった彼女だが、障害者向けのグループホームを訪問した際に、全くサポートされていない男性の利用者から「何の楽しみもない」と言われたことをきっかけに障害福祉の道を選んだ。

 その後、好きな人がいるからと中途半端に辞めてしまった風俗業にまた戻る。障害者専門風俗店だった。その翌年、一般社団法人輝き製作所を立ち上げた。

お母さんに「挿れている」

 小西さんはそんな日々の中で、障害者の性の実態について、垣間見た瞬間があった。

「平日は施設・土日だけ家に帰る男性だったのですが、家で何をしているのか聞いたら『挿れている』というんです。お母さんに男性器を“挿れている”という意味です。障害者の中には、肌が過敏でコンドームを嫌がる人もいます。周囲の支援者は『お母さん、それは違うよ』と止めるのですが、そのお母さんは『自分がしなければ息子は性犯罪者になってしまう』と聞かず、妊娠してしまいました。それってお母さんだけで頑張ることじゃないよねと思いました」

 障害者支援の現場を取材すると、支援者に積極的にそういった相談はしないが、父親や男の兄弟がマスターベーションを手伝うケースや母親が性の相手をするといった話はよく出てくる。その逆に、知的障害のある娘が避妊を知らずに妊娠・中絶を繰り返すケースもある。

 相談にも来られない。家の中だけで成り立ってしまっている。そういうリアルはないものとされてしまっている。「そういった障害がある人たちに、分かる表現で、性教育をすることはとても大切なことです」。

 そんな思いから、小西さんは障害者支援者や支援学校のPTAに招かれ、性教育の大切さを講演している。また、重度の知的障害・発達障害がある場合、耳から聞いたことよりも、目から見た情報のほうが理解しやすい場合が多い。本人に分かりやすいように性教育をしなければ、性犯罪などは防げない。

「性」は生きるために必要なことではないのか

 現在、日本では障害者の性に対するサービスは、「余暇」とされ、公的支援の対象にはならない。

「いろいろな自治体に問い合わせたのですが、移動支援(障害福祉サービスのひとつで、ヘルパーが障害者の買い物等に付き添うサービス)で風俗店に障害者の方を連れて行くことはできないんです」

 移動支援はあくまでも「生活に必要なことに使われるサービス」であり、「性」は生きるために必要ではないというのが行政の見解のようだ。だが、体にマヒがあったり、手が不自由だったりする障害者は自分でマスターベーションをすることもできない。

「したい気持ちはあるけれど自分ではできない。家族や支援者にも相談できない当事者の方がたくさんいます」

利用するまでに半年かかる場合も

 障害当事者からは主に、どんなサービスへのニーズがあるのだろうか。

「デリヘルなので射精介助もありますが、女性の裸を見たことがない障害者もたくさんいます。ですので、多くの方が、女性の裸に触れたい、見たい。女性とお出かけしたり、デートコースとして利用する方もいます」

「性」の形は多様だ。必ずしも射精を伴うサービスをするわけではない。裸になって肌の触れあいがしたいという当事者は多い。小西さんのサービスに申し込むルートは、本人から・障害福祉サービスの世界のケアマネージャーである相談支援員から・親からとさまざまだ。

 サービスの前には面談を行うが、当事者の障害の状態や希望を聞くほかにも、相談支援員や他の支援者や親も交えて行うこともある。長い人で、利用するまでに半年ほど時間がかかる場合も。面談でセックスの希望があれば、ソープランドで利用可能か問い合わせを代行することもある。

強度行動障害者へのサービス提供

 重度の知的障害や発達障害で、強度行動障害のある人もいる。強度行動障害は、厚生労働省の定義では「自傷、他傷、こだわり、もの壊し、睡眠の乱れ、異食、多動など本人や周囲の人のくらしに影響を及ぼす行動が、著しく高い頻度で起こるため、特別に配慮された支援が必要になっている状態」を意味する用語だ。

 そういった人には特別なサポートが必要になる。

「強度行動障害がある人に対する関わりについては勉強し、資格取得もしました。その際に発達障害者の方への視覚的支援についても学びました」

 発達障害の人にサービスを提供した時には、小西さんはサービス前に、サービスの流れを紙に書いて、視覚的に分かりやすいように説明するようにした。発達障害の人は、耳から聞いた情報の処理は苦手だが、図や文字を使った視覚からの情報処理が得意な人が多いからだ。そういった支援がないと、先の見通しが立たずにパニックや不安につながる。結果的に小西さんのサービスを受けて、その利用者男性がパニックになることはなかった。

日本の障害者への性サービスの現状

 売春が合法のオランダでは、1980年から、性サービスの提供が行われている。自治体により、性的サービスを受けた人に障害がある場合、条件次第では医療保険の適用を認めるケースもある。デンマークやフランス、ドイツ、スイスが後に続き、WHO(世界保健機関)は、障害者の性の問題について福祉の現場で相談に応じることを推奨している。

 日本の現状はどうなのか。「日本でもやっと同性介助が推奨されるようになり、人権の問題的にはずいぶん救われたと思います」と小西さんは語る。ただ男性ヘルパーは圧倒的に不足しているので、男性の当事者が女性ヘルパーから介助されることも多いとも。

 最後に小西さんの今後の目標を聞いた。

「ご本人たちに分かるように性についてお伝えしたい。性についての学びや情報がないことで、丸裸のまま社会に出ていかれる方が多いです。性犯罪が起こる前にできることがいっぱいある。教育の中で性についての正しい情報や知識が伝わるようにしたいです」

 障害者の性のサービスについては後進国の日本だが、家庭内だけで抱え込める問題ではなく、社会全体で考えていかなければならない問題だろう。

<TEXT/田口ゆう>

【田口ゆう】
ライター。webサイト「あいである広場」の編集長でもあり、社会的マイノリティ(障がい者、ひきこもり、性的マイノリティ、少数民族など)とその支援者や家族たちの生の声を取材し、お役立ち情報を発信している。著書に『認知症が見る世界 現役ヘルパーが描く介護現場の真実』(原作、吉田美紀子・漫画、バンブーコミックス エッセイセレクション)がある。X(旧ツイッター):

感想

 身体不自由だと、自分でオナニーできない人もいます。
そんな時、施設でオナニーをしてくれる人はいません。
たまに男性職員で理解して手伝ってくれる場合もあるようです。
女性にしてほしくてもそれは難しいです。

 この記事にもあったように、オランダでは公的な補助もあります。
障がい者の性に蓋をしてきているのが日本の現状のようです。

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