英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『福家警部補の挨拶』 第1話「失われた灯」

2014-01-15 21:45:44 | ドラマ・映画
古畑任三郎、コロンボタイプの推理ドラマ
犯行をあらかじめ視聴者に見せておき、犯人の工作の矛盾を突き、追いつめていく、言わば逆算型推理ドラマ


 実は、苦手なタイプのドラマである。
・逆算型なので、犯人のトリックを考える楽しみがない
・犯人のミス、犯行の証拠を見つけるのが、逆算型の醍醐味だが、考える間もなく、主人公の刑事が指摘してしまう。後出しジャンケン的なものがあったり、視聴者に提示されていても、ドラマ序盤にさっと流してしまう見せ方なので、≪そう言えば、そうだな≫と思うだけのことが多い
・犯行を見せられるため、私の場合、犯人に感情移入してしまい、刑事によって追い詰められていく感情を抱いてしまう
・しかも、その刑事はたいがい変人で、意識的、あるいは無意識に、犯人の気持ちを逆なでるような行為や発言をし、ジワジワいたぶるように疑問や質問をぶつけてくる
・その変人ぶりや無頓着さや自分勝手な行動は、犯人だけでなく、同僚の刑事や上司までも被害を受けることが多い


 なので、私にとって、逆算型推理ドラマの大きな要素として、
Ⅰ主人公の魅力度
Ⅱ犯人を追いつめる決定打(証拠、推理)の鮮やかさ

となってくる。
 Ⅱさえ鮮やかならば、それまでのフラストレーションも一気に晴れる(けっこう単純である)


さて、このドラマの主人公・福家警部補はどうなのか?

番組サイトの紹介文によると……
福家警部補は完全にまわりからは浮いている人間ながら、推理する能力は並外れていて、鋭い観察力で他の人間は気づかない事件解決の糸口を見つけることが出来ます。疑問を感じたら上司の言うことも聞かず、トコトン追求。特徴は「あともう一つだけ聞きたいことが…」としつこく相手に詰め寄ること。そんな不思議な美女
………………らしい。『鍵のかかった部屋』の芹沢だと「はっきり訊けよ!さっさと訊けよ!一度に訊けよ!」と叫ぶのではないだろうか?
 やはり、古畑タイプの洞察力としつこさを持っているらしい(まあ、これがないと、「逆算型推理ドラマ」は成立しない)
 さらに、引っ掛かりを感じるのが、「疑問を感じたら上司の言うことも聞かず」という点。嫌いなタイプだ。

 実際にドラマを観た印象は、
 紹介文通りの推理、洞察力の持ち主で、上司の言うことを聞かず、同僚を振り回すキャラ。会話の「あと一つだけ聞きたいことが」はもちろん、コロンボ、古畑タイプだが、話し方(犯人への突っ込み方)は、NHKの『実験刑事トトリ』の都鳥を思い出す。
 他の特徴は、美人だが自分の身なりや持ち物には無頓着。警察手帳を提示するのにも、バッグの中を引っ掻き回さないと出てこない(これを何回も見せられるのは嫌かな)。
 今のところ、推理力・洞察力以外には魅力を感じない。


その洞察力・推理力は?
なかなか鋭く、細かいことまで突っ込んでくる。
①ノートパソコンのバッテリーに関する疑問(外でノートパソコンを使用することが多いので、毎日充電する習慣があるのに、拉致監禁されていたのに、バッテリー切れ寸前だった)
②藤堂が事件担当でない自分(福家)のことを、最初から意識し、名前も覚えていたこと
③藤堂は拳銃を突きつけられ別荘に入ったはずなのに、誘拐犯である三室の靴の後ろに藤堂の靴がある
④車の泥跳ねが多すぎる
⑤留守電メッセージが消されていたのに、消去ボタンに指紋がなかった
⑥殺される前の三室の不可解な行動(誘拐をテーマにしたドラマをレンタルしたり、勝負服を調達しようとした)
⑦袖が長い服を着ていた三室の手首に血痕がたくさん付いていた(三室は腕を上げ、命乞いをしていたのでは)

 これらの疑問から、藤堂が2つの殺人事件の犯人だと睨み、
 旧友であり親友であった曽根のことを調べ、「藤堂のデビュー作は曽根の作品で盗作だった」という事実、また、そのことで辻が藤堂を脅迫していたということを突き止める。
 しかし、決定的な証拠はない……

 上記の洞察、推理は面白かった。特に、⑦は感心した。しかし、三室が棒のような凶器を振り上げた瞬間に撃ったという仮定も成り立つ。
 藤堂が実行した完全犯罪もなかなかよく出来ていた。
 さらに、決定的な証拠を提示できずに、一旦引き上げるのも、メリハリがあってよい。

 そして、決定的な証拠
「辻が酒を飲むに使っていたと証言したカップ(杯)は、実は燭台の一部で殺害される30分前には燭台として存在しており、そのカップが単独で存在していたのを見ることができるのは、辻と彼を殺した犯人しかいない」
というモノだった。かなり爽快感のある決定的証拠だと思った。


 しかし、それに至る経過に無理がある。
 焼け残ったものの写真を見せ、「見覚えのあるものはあるか」と訊くのは、少し唐突に思えた。
 なので、藤堂に「どうしてそんなことを訊くのか?」と尋ねさせ、「あなたが辻と話していたことを確認したかった」とか納得させてほしかった。
 さらに、「決定的な証拠となる壊れた燭台がなぜか金庫に入っていた」という重大ポイントをぼやかし過ぎ(隠していた)のは、フェアじゃない。
 それと、この決定的な証拠を唐突に思いついたのかと思ったが、藤堂の所から去る際に動揺した秘書がカップを割ってしまったことがヒントになったみたいだが、分かりにくい。カップを落として割るのがあまりにもわざとらしいうえ、「あぁ割れちゃった」という台詞もさらにわざとらしかったので、それに気を取られてしまった。

【その他の感想】
・冒頭の導入部、リンドバーグの息子の誘拐が、狂言云々という件は要らない 
・殺された辻は、骨董品で酒を飲んだり、骨董品のある場所でたばこを吸うのは、骨董屋としてどうなのか?
 (まあ、ろくでもない奴なので)


 推理ドラマとしては面白いと思う。
 しかし、やはり「逆算推理タイプ」ゆえのストレスを感じる。
 それを払拭する「決定的証拠」ではあったが、若干、強引。
 ヒロインがもっと魅力的だと助かる。う~ん、微妙なところだ。
 この際、魅力的ではないが千秋に主人公をやってもらって、ちんちくりんな風体で「ぷー」や「ぷんぷん」とか、とぼけた演技をしてはどうか?


【ストーリー】番組サイトより
 人気脚本家、藤堂昌也(反町隆史)は、三室勘司(小林且弥)を呼び出して自分の別荘へ。三室は、藤堂に頼まれた拳銃とロープを用意していた。藤堂は三室に誘拐犯の役を与えると役作りを始める。しかし、しばらくすると、藤堂は三室に睡眠薬を飲ませて眠らせてしまう。三室が眠っている間に、藤堂は自分の事務所に電話。事務員の大城加奈子(水崎綾女)が出ると、三室に読ませて録音した脅迫文を再生した。

 次に藤堂は骨董商の辻伸彦(有薗芳記)の家へ。藤堂は辻から古い原稿の取引を持ちかけられていた。原稿は藤堂の脚本家としてのキャリアを脅かすもの。藤堂は応じるそぶりをして辻を殺し、家に火をつけて別荘に戻る。
 その頃、藤堂の事務所には石松和夫警部(稲垣吾郎)ら警官たちが詰めていた。そこに、また脅迫電話が入る。大城は声の主が三室だと気づいた。

 電話を終えた藤堂は三室を起こす。全ては辻殺害を完全犯罪にするための策略だった。仕上げは三室を消すこと。それを知った三室は逆上して藤堂に襲いかかった。もみ合いの中、藤堂の撃った銃弾が三室を貫く。直後、警官たちが突入するが、傷だらけの藤堂が誘拐されていたことを疑うものはいなかった。

 ただ1人、福家警部補(檀れい)を除いては…。福家は石松から辻の放火殺人事件の担当を命じられていたのだが、なぜか藤堂の誘拐事件を調べ始める。福家は鑑識係の二岡友成(柄本時生)に車を出させて、藤堂の別荘へと向かった。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする