英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2016年棋王戦 佐藤天八段-渡辺棋王 その2

2016-04-12 22:41:42 | 将棋
「2016年棋王戦 佐藤天八段-渡辺棋王 その1」の続きです。


 ▲6四角(第1図)に対して、前例の△9二飛ではなく△7三角を合わせ、▲6五歩に△6四角▲同歩と角を消して(交換して)△7三桂(第2図)と跳ねたところ。
 手順に先手の歩が伸びてくるので抵抗を感じるが、渡辺棋王用意の策だと思われる(ほとんど時間を使わず着手していた)。
 これに対する佐藤天八段の指し手が注目されたが、将棋世界・観戦記を引用すると
『棋王の真意を探り、どう打開していくのか。47分の考慮の後、大方の予想通り▲6三歩成。△同銀にノータイムで▲4五歩と突いた。控室で検討されていた手順だ。4六の空間に角を打ち込めば、相手の攻めをかなり牽制できる。好点の角打ちは約束されたようなもの。それで悪いはずがない、と見るのが普通なのだが………。ここで昼食休憩に入った。』
 また、中継解説では
『控室の継ぎ盤には▲6三歩成△同銀▲4五歩が並ぶ。谷川九段は「本来は▲2九飛や▲4一角で、6四の歩を生かした組み立てをしたいのですが。▲6三歩成から▲4五歩は、妥協した順ではありますね。▲4五歩と突いて▲4六角と打てば、後手の攻めは止まります」と話す。』
 さらに、その数手後、久保九段
「先手は▲6三歩成と成るしかなかったのなら、後手番としてはまずまずの進行に思えます」と解説している。


 以上をまとめると、控室の大方の評価は「▲6三歩成△同銀▲4五歩が当然の指し手」、谷川九段、久保九段は「妥協、不本意」と考えている。
 “渡辺世代の思想”(といって良いかは自信がないが)は「自分だけが攻めたい」……今回の場合、≪相手がくれた6四の歩を利用して(成り捨てる)、ゼロ手で相手の攻め駒の5四の銀を後退させ、▲4五歩と先攻できるのはかなりの利である。しかも、4六に角を置ければ後手の攻めを牽制できる≫
 “谷川世代の思想”(今回、久保九段は谷川思想に近かったようだが、羽生世代の考え方は不明)……≪せっかくの拠点を成り捨てるのは、勿体ない≫
 私も後者。≪▲4一角と打ちたいところだが、諸々の含みを持たせて、▲2九飛と自陣を整えておけば、後手は歩切れなので強烈な攻めはないはず≫と思うのだが、どうなのだろうか?
 ちなみに、局後の佐藤天八段の感想では
「▲6三歩成に代えて▲2九飛△7五歩▲6三歩成は△同銀で、つまらないと思いました」と。


 ……▲2九飛は“つまらない”そうだ。
 それはともかく、佐藤天八段の思考の土台は、▲2九飛を指すにしても▲6三歩成と成り捨てるものらしい。

 実戦は、▲6三歩成△同銀▲4五歩に△6四銀と再び銀を前線に繰り出す(▲6三角には△6五銀で7四をカバーしながら攻勢に出る)。
 これに対し、佐藤天八段は予定通り▲4六角と角を据える。

 これで後手の攻め足が止まるはずだったが……

「その1」「その3」「その4」
コメント (2)
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