「その1」、「その2」、「その3」、「その4」の続きです。
第11図以下△6六飛成に▲1八玉、さらに△2六歩と重しを乗せられて▲3八桂を強いられる辛抱の指し手が続く。
しかし、次の木村九段の△6七角成(第12図)が緩手で羽生九段にチャンスが巡ってきた(木村九段もこの手に最後の1分を使い、1分将棋に)。
ここ(第12図)で、▲2六桂が有力だった。
(以下棋譜中継解説)
対して(1)△2六同竜は以下▲2七歩△6六竜▲6三歩△4四歩▲6二歩成△4三玉▲5二と△3一金▲3五桂△3四玉▲4二とが予想される進行で、先手がやれそう。
後手は自玉を広くする(2)△5四歩がよく、以下▲5四同馬△6三金▲2七馬△4五桂の進行は後手有望のようだ。
ただし、(2)の変化の解説は疑問。
△5四歩に対しては▲同馬の一手ではなく、▲6四歩(変化図5)や▲6一とで先手良しのようだ。
変化図5の▲6四歩に△同龍なら先手の2六の馬の取りが消えるので、▲6三歩や▲6一となどジワリと迫ればいいようだ。また、早逃げの△5三玉や王手で攻防に馬を利かす△4五馬など油断できない手があるが、変化図4は先手優勢のようだ。
ちなみに(1)の△2六同竜には▲6四歩でも先手が良さそう(ただし、▲6三歩は馬の利きを遮断してしまうので先手玉が詰んでしまう)。
実戦では、羽生九段は▲6一と。△6一同玉と下段に落とし、寄せを目指した一手だ。
ところが、一転▲2七歩と自陣に手を戻す。
……おそらく予定は▲6三歩(変化図6)。
しかし、▲6三歩は馬の利きを止めることになり、先手玉に詰みが生じてしまう。
変化図6以下△2七金▲同銀△同歩成▲同玉に△4五馬▲3六金△同馬▲同歩△同龍▲同玉△4五銀以下詰み。(△4五馬のところ△2六歩と打って清算し、△2五銀以下の詰みもある)
一転の▲2七歩は秒読みの中の予定変更だったと思われる。
いや、もしかすると、玉を下段に落としておいて自陣に手を戻すというのは、緩急自在の羽生マジックだったのかもしれない………が。
▲2七歩以下、△同歩成▲同銀と進んだ次の一手が、木村九段らしい一着。好手だった。
△7三金打!(第13図)
この金打ちは、▲6三歩や▲7二馬(飛成)に備えた手だが、もう一つの狙いがあった(後述)。
ならばと羽生九段は▲7二歩。
……しかし、この手は良くなかった。
飛車と馬の利きの焦点の歩だが、相手の飛車と馬の利きではなく、味方の飛車と馬である。自ら強力であるはずの2枚の大駒を無力化させてしまった。
しかも、木村九段にパスしてもらって▲7一歩成と指したとしても、このと金、少し前に捨てた7一のと金を再生しただけである。
実際、▲7二歩に△5二玉とかわされると、先手の飛・馬・歩の“置き去り感”が強い。
7二歩のままでは歩を打った意味がないので、▲7一歩成(第15図)は何をおいてもの指し手。
第15図は部分的に“▲6一と”と“と金”を捨てる前(第12図)と同じ。
この両図を見比べると、▲2七歩からの折衝による後手の1歩の増加を差し引くと、後手の1歩と1手の得(後手番になっている)と、7三に金が配置されている点。
この7三の金が後手が打たされ負担となり、加えて攻め駒の不足に繋がるのなら、先手の1手パスも救われるのだが、金は守りに働くのみならず、先手を窮地に追いやる布石となっていたのである。
ちなみに、棋譜中継解説で紹介された局後の感想は
「ここで(▲7二歩に代えて)もうちょっといい手がなかったかなあ?」と羽生。まず調べられた(1)▲9一馬は、以下△5二玉▲8一飛成△6三金で後手がよい。
有力とされたのは(2)▲6三歩。以下△同金▲7二飛成△5二玉▲6三竜△同竜▲5一金△同玉▲6三馬△5二金▲6四歩に(2-ア)△6八飛は▲7一飛△6一歩▲7二馬、(2-イ)△6一歩は▲7一飛△6六飛▲7三歩△6三金▲同歩成△同飛▲7二歩成で、いずれも先手が悪くなかったようだ。
この▲6三歩は攻めるとしたら第一感の手だ。この手が見えなかったのは不思議で仕方がない。
想像力の働かせすぎかもしれないが、▲6三歩と打つと先手玉が詰んでしまうことによる予定変更が、▲6三歩を視界から除外してしまったのかもしれない。
第11図以下△6六飛成に▲1八玉、さらに△2六歩と重しを乗せられて▲3八桂を強いられる辛抱の指し手が続く。
しかし、次の木村九段の△6七角成(第12図)が緩手で羽生九段にチャンスが巡ってきた(木村九段もこの手に最後の1分を使い、1分将棋に)。
ここ(第12図)で、▲2六桂が有力だった。
(以下棋譜中継解説)
対して(1)△2六同竜は以下▲2七歩△6六竜▲6三歩△4四歩▲6二歩成△4三玉▲5二と△3一金▲3五桂△3四玉▲4二とが予想される進行で、先手がやれそう。
後手は自玉を広くする(2)△5四歩がよく、以下▲5四同馬△6三金▲2七馬△4五桂の進行は後手有望のようだ。
ただし、(2)の変化の解説は疑問。
△5四歩に対しては▲同馬の一手ではなく、▲6四歩(変化図5)や▲6一とで先手良しのようだ。
変化図5の▲6四歩に△同龍なら先手の2六の馬の取りが消えるので、▲6三歩や▲6一となどジワリと迫ればいいようだ。また、早逃げの△5三玉や王手で攻防に馬を利かす△4五馬など油断できない手があるが、変化図4は先手優勢のようだ。
ちなみに(1)の△2六同竜には▲6四歩でも先手が良さそう(ただし、▲6三歩は馬の利きを遮断してしまうので先手玉が詰んでしまう)。
実戦では、羽生九段は▲6一と。△6一同玉と下段に落とし、寄せを目指した一手だ。
ところが、一転▲2七歩と自陣に手を戻す。
……おそらく予定は▲6三歩(変化図6)。
しかし、▲6三歩は馬の利きを止めることになり、先手玉に詰みが生じてしまう。
変化図6以下△2七金▲同銀△同歩成▲同玉に△4五馬▲3六金△同馬▲同歩△同龍▲同玉△4五銀以下詰み。(△4五馬のところ△2六歩と打って清算し、△2五銀以下の詰みもある)
一転の▲2七歩は秒読みの中の予定変更だったと思われる。
いや、もしかすると、玉を下段に落としておいて自陣に手を戻すというのは、緩急自在の羽生マジックだったのかもしれない………が。
▲2七歩以下、△同歩成▲同銀と進んだ次の一手が、木村九段らしい一着。好手だった。
△7三金打!(第13図)
この金打ちは、▲6三歩や▲7二馬(飛成)に備えた手だが、もう一つの狙いがあった(後述)。
ならばと羽生九段は▲7二歩。
……しかし、この手は良くなかった。
飛車と馬の利きの焦点の歩だが、相手の飛車と馬の利きではなく、味方の飛車と馬である。自ら強力であるはずの2枚の大駒を無力化させてしまった。
しかも、木村九段にパスしてもらって▲7一歩成と指したとしても、このと金、少し前に捨てた7一のと金を再生しただけである。
実際、▲7二歩に△5二玉とかわされると、先手の飛・馬・歩の“置き去り感”が強い。
7二歩のままでは歩を打った意味がないので、▲7一歩成(第15図)は何をおいてもの指し手。
第15図は部分的に“▲6一と”と“と金”を捨てる前(第12図)と同じ。
この両図を見比べると、▲2七歩からの折衝による後手の1歩の増加を差し引くと、後手の1歩と1手の得(後手番になっている)と、7三に金が配置されている点。
この7三の金が後手が打たされ負担となり、加えて攻め駒の不足に繋がるのなら、先手の1手パスも救われるのだが、金は守りに働くのみならず、先手を窮地に追いやる布石となっていたのである。
ちなみに、棋譜中継解説で紹介された局後の感想は
「ここで(▲7二歩に代えて)もうちょっといい手がなかったかなあ?」と羽生。まず調べられた(1)▲9一馬は、以下△5二玉▲8一飛成△6三金で後手がよい。
有力とされたのは(2)▲6三歩。以下△同金▲7二飛成△5二玉▲6三竜△同竜▲5一金△同玉▲6三馬△5二金▲6四歩に(2-ア)△6八飛は▲7一飛△6一歩▲7二馬、(2-イ)△6一歩は▲7一飛△6六飛▲7三歩△6三金▲同歩成△同飛▲7二歩成で、いずれも先手が悪くなかったようだ。
この▲6三歩は攻めるとしたら第一感の手だ。この手が見えなかったのは不思議で仕方がない。
想像力の働かせすぎかもしれないが、▲6三歩と打つと先手玉が詰んでしまうことによる予定変更が、▲6三歩を視界から除外してしまったのかもしれない。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます