桂損を代償に攻勢を取り、広瀬八段の疑問手に乗じ、激しく攻め、2筋を突破、その後も過激に攻め続ける。しかし、徐々に羽生竜王の攻めが心細くなっていく。
それでも、なおも攻め続け、≪何とか勝てそうだなぁ≫と思った局面で、味良く攻めを溜めた▲7五同歩が緩手(悪手に近い)で、立て直すこともできずに、急転直下の敗局となった。
連休前の金曜日で忙しく、しかも、生産性の低い労働ばかりで、ストレスが満杯で、羽生竜王の勝利が疲労回復剤となるはずだったのに…………
後手広瀬八段の△6五歩と動いた手に対し、▲2五桂と撥ね、△2二銀に▲6五歩と手を戻す。△2二銀は△2四歩から桂を取る含みの手だが、大丈夫なのだろうか?
実戦も広瀬八段が桂を取りに行ったが、羽生竜王は悠々▲6四歩。
さらに△2五歩にじっと▲同歩。桂は取られたが、歩を伸ばしていけば、歩切れの後手は2筋と6筋が負担となると見ている。
そのプレッシャーに広瀬八段は△7二桂。手に入れた桂を投入し、6四歩の排除を図る。しかし、おそらく疑問手で、羽生竜王に▲3七角(▲4六角の方が普通)と6四の歩を維持されると、投入の効果は薄かった(形勢は互角らしい)。
この後、広瀬八段の△3三桂~△4五桂に対し、
羽生竜王は▲4五同銀と切って落とす(これで桂損から銀損に昇格?)。
以下△4五同銀▲6三歩成△同金▲5五桂△6二金。
歩を成捨てることで0手で5五に桂を設置。更に、▲4三桂成とその桂を4三に成り捨て、△4三同金と金を上ずらせ、▲2三歩成と2筋を突破!
さらに、△2三同銀▲同飛成と飛車を成り込み、△3二銀の受けに▲4四歩を際どく利かす。
この時の棋譜中継の解説欄の実況が面白かった。
「後手は駒得を頼みにして受けに回る(△3二銀)。先手は竜を逃げて悪くないだろう。「しかし、羽生さんは踏み込むのが好きだからなあ」と中村修九段。そう話している最中に羽生は駒台の歩を持った。「うわああ、踏み込む、踏み込む!」と中村修九段が声を上げる。
▲4四歩に△2三銀と龍を取るのは、▲4三歩成で持ちこたえられないので、△4二金と我慢。
先手は成果に満足し▲2五龍と一旦引き上げる。
気分が良い先手だが、後手は桂得を維持しており、形勢は微差。
長引くと駒得している方に利があるので、一旦、龍を引き上げたものの、先手は攻め立て続ける………
………▲4四歩△4二金▲2五龍以下、△5四銀▲2三歩△2一歩▲7三角成(桂角交換の駒損)△同金▲4六桂△3三桂(龍取りを掛ける)▲2二銀(歩頭に銀打ち。後手は取れないが)△4一玉▲3三銀成(桂銀交換の駒損、龍当たりを解消)△同銀▲2二歩成△同歩▲5四桂(これは銀桂交換の駒得)△同歩▲4五桂△4四銀(拠点の歩を払われる)▲4三歩△同金▲2二龍△3二銀▲2一銀△同銀▲同龍△3一桂▲3二銀△5二玉▲4三銀成△同玉▲2二龍△4五銀(第8図)………
手順が長くなってしまったので、下記に概略です。
厳しく攻め立てているが、クリーンヒットせず、寄せをぐずっている感が強い。玉を上部(3段目)に逃がし、駒損が大きくなり、先手の攻めが心細くなってきている。第8図の△4五銀も桂を取り、先手の拠点を解消した手である。
流れは後手だが、まだ先手が残しているようで、第8図で▲4四歩と打てば△5三玉に▲3三龍から自然な攻めが続いていたように思う。
本譜は▲4二金!
以下△5三玉▲5二金と超筋悪の寄せ。以下6四玉に▲4二龍で、一応、上下挟み撃ちの形を作りつつ4五の銀取りになっている。
しかし、ここで△2六角と打てば若干後手が良しのようだが、広瀬八段は△7五歩。
玉の8筋への脱出を図った手だが、▲4五龍が銀の補充と7五まで利きを伸ばしていて、玉の逃走スピードを上回っている。おまけに、▲4五龍は詰めろにもなっている。
もちろん▲4五龍で先手が勝勢ではなく、「先手有利~先手優勢」ぐらいで、まだ先が長そうだが、大きなチャンスだったのは間違いない。
しかし、実戦は▲7五同歩。7四からの逃走を阻み、さらに後手玉の包囲網を確固たるものにした攻めを溜めた落ち着いたに見えたが、そうではなかった。
△5八角に継続手とばかり▲4五龍と銀を取りつつ五段目を勢力下にしたが、構わず△6九銀と先手玉に詰めろを掛けられて見ると……
………後手玉に詰みはない。▲6五銀と打つと玉の逃走を阻んだはずの7五の歩を取られて逃げられてしまう。
先手は▲7五同歩、▲4五龍と2手かけたが詰めろにならず(▲7五同歩とせず単に▲4五龍と銀を取れば詰めろだったのに)、後手は△5八角、△6九銀の2手で詰めろになった(しかも、詰めろを外しにくい。詰めろを外しても、二の矢が来て、振り解きにくい)。▲7五同歩△5八角の後の▲4五龍では▲6六銀の方が勝負のアヤがあったかもしれない。
後手はずっと受け続け、攻めの手はこの2手のみといって良い。急転直下の先手の敗勢。
第10図以下、▲5三銀△6三玉▲6五竜と攻めたが△6四金がぴったり。やむなく▲6九龍△同角成▲同玉と詰みを回避したが、△2九飛と打たれて後手の勝勢がはっきりし、いくばくもなく羽生竜王の投了となった。
ずっと攻め続け、押し切れそうな将棋をものにできなかったのは非常に残念。
第2局、第3局と、タメがなく攻め急いでいる感が強いのが気がかりだが、第4局まで間があるので、立て直してくると信じたい。
それでも、なおも攻め続け、≪何とか勝てそうだなぁ≫と思った局面で、味良く攻めを溜めた▲7五同歩が緩手(悪手に近い)で、立て直すこともできずに、急転直下の敗局となった。
連休前の金曜日で忙しく、しかも、生産性の低い労働ばかりで、ストレスが満杯で、羽生竜王の勝利が疲労回復剤となるはずだったのに…………
後手広瀬八段の△6五歩と動いた手に対し、▲2五桂と撥ね、△2二銀に▲6五歩と手を戻す。△2二銀は△2四歩から桂を取る含みの手だが、大丈夫なのだろうか?
実戦も広瀬八段が桂を取りに行ったが、羽生竜王は悠々▲6四歩。
さらに△2五歩にじっと▲同歩。桂は取られたが、歩を伸ばしていけば、歩切れの後手は2筋と6筋が負担となると見ている。
そのプレッシャーに広瀬八段は△7二桂。手に入れた桂を投入し、6四歩の排除を図る。しかし、おそらく疑問手で、羽生竜王に▲3七角(▲4六角の方が普通)と6四の歩を維持されると、投入の効果は薄かった(形勢は互角らしい)。
この後、広瀬八段の△3三桂~△4五桂に対し、
羽生竜王は▲4五同銀と切って落とす(これで桂損から銀損に昇格?)。
以下△4五同銀▲6三歩成△同金▲5五桂△6二金。
歩を成捨てることで0手で5五に桂を設置。更に、▲4三桂成とその桂を4三に成り捨て、△4三同金と金を上ずらせ、▲2三歩成と2筋を突破!
さらに、△2三同銀▲同飛成と飛車を成り込み、△3二銀の受けに▲4四歩を際どく利かす。
この時の棋譜中継の解説欄の実況が面白かった。
「後手は駒得を頼みにして受けに回る(△3二銀)。先手は竜を逃げて悪くないだろう。「しかし、羽生さんは踏み込むのが好きだからなあ」と中村修九段。そう話している最中に羽生は駒台の歩を持った。「うわああ、踏み込む、踏み込む!」と中村修九段が声を上げる。
▲4四歩に△2三銀と龍を取るのは、▲4三歩成で持ちこたえられないので、△4二金と我慢。
先手は成果に満足し▲2五龍と一旦引き上げる。
気分が良い先手だが、後手は桂得を維持しており、形勢は微差。
長引くと駒得している方に利があるので、一旦、龍を引き上げたものの、先手は攻め立て続ける………
………▲4四歩△4二金▲2五龍以下、△5四銀▲2三歩△2一歩▲7三角成(桂角交換の駒損)△同金▲4六桂△3三桂(龍取りを掛ける)▲2二銀(歩頭に銀打ち。後手は取れないが)△4一玉▲3三銀成(桂銀交換の駒損、龍当たりを解消)△同銀▲2二歩成△同歩▲5四桂(これは銀桂交換の駒得)△同歩▲4五桂△4四銀(拠点の歩を払われる)▲4三歩△同金▲2二龍△3二銀▲2一銀△同銀▲同龍△3一桂▲3二銀△5二玉▲4三銀成△同玉▲2二龍△4五銀(第8図)………
手順が長くなってしまったので、下記に概略です。
厳しく攻め立てているが、クリーンヒットせず、寄せをぐずっている感が強い。玉を上部(3段目)に逃がし、駒損が大きくなり、先手の攻めが心細くなってきている。第8図の△4五銀も桂を取り、先手の拠点を解消した手である。
流れは後手だが、まだ先手が残しているようで、第8図で▲4四歩と打てば△5三玉に▲3三龍から自然な攻めが続いていたように思う。
本譜は▲4二金!
以下△5三玉▲5二金と超筋悪の寄せ。以下6四玉に▲4二龍で、一応、上下挟み撃ちの形を作りつつ4五の銀取りになっている。
しかし、ここで△2六角と打てば若干後手が良しのようだが、広瀬八段は△7五歩。
玉の8筋への脱出を図った手だが、▲4五龍が銀の補充と7五まで利きを伸ばしていて、玉の逃走スピードを上回っている。おまけに、▲4五龍は詰めろにもなっている。
もちろん▲4五龍で先手が勝勢ではなく、「先手有利~先手優勢」ぐらいで、まだ先が長そうだが、大きなチャンスだったのは間違いない。
しかし、実戦は▲7五同歩。7四からの逃走を阻み、さらに後手玉の包囲網を確固たるものにした攻めを溜めた落ち着いたに見えたが、そうではなかった。
△5八角に継続手とばかり▲4五龍と銀を取りつつ五段目を勢力下にしたが、構わず△6九銀と先手玉に詰めろを掛けられて見ると……
………後手玉に詰みはない。▲6五銀と打つと玉の逃走を阻んだはずの7五の歩を取られて逃げられてしまう。
先手は▲7五同歩、▲4五龍と2手かけたが詰めろにならず(▲7五同歩とせず単に▲4五龍と銀を取れば詰めろだったのに)、後手は△5八角、△6九銀の2手で詰めろになった(しかも、詰めろを外しにくい。詰めろを外しても、二の矢が来て、振り解きにくい)。▲7五同歩△5八角の後の▲4五龍では▲6六銀の方が勝負のアヤがあったかもしれない。
後手はずっと受け続け、攻めの手はこの2手のみといって良い。急転直下の先手の敗勢。
第10図以下、▲5三銀△6三玉▲6五竜と攻めたが△6四金がぴったり。やむなく▲6九龍△同角成▲同玉と詰みを回避したが、△2九飛と打たれて後手の勝勢がはっきりし、いくばくもなく羽生竜王の投了となった。
ずっと攻め続け、押し切れそうな将棋をものにできなかったのは非常に残念。
第2局、第3局と、タメがなく攻め急いでいる感が強いのが気がかりだが、第4局まで間があるので、立て直してくると信じたい。
金の後ろききだけの、何とももったいない5三金や取れる銀を取らずに7五同歩、よくわからないことが多い羽生将棋ですが、羽生竜王の指した手なんだからなと、、一応思ってはみたものの、5八角~簡単にからまれてしまうと、見落としがあったのかなあと思わざるおえません。私のようなヘボが言うのは畏れ多いのですが、相手の手をつぶすのがプロの読み筋なんではないかとかんがえさせられてしまいます。
お気持ちお察しいたします。何故かこの日は細々の用でわたしも店から戻るのが遅くなり、ようやく戻ったら羽生竜王敗勢の局面でした。勝てると思っていましたので、ショックはおおきいです。
こんどこそためのあるクリーンヒットを期待しています。おじゃましました
>見落としがあったのかなあと思わざるおえません
ええ、▲7五同歩は読み違いがあったような気がします。この将棋に関しては、広瀬八段の腰を割らない受けが見事だったと思うしかないです。
ただ、羽生竜王、もう少し終盤に時間を残してほしいです。
>勝てると思っていましたので、ショックはおおきいです
ええ、残念な負け方です。
確か、昨年度も2連勝の後、先手番の第3局を落としました。昨年と同じ流れと考えることにします。