王将戦挑戦者決定リーグ最終局で、羽生九段が豊島九段を破り、6勝0敗で挑戦権獲得を決めた
5戦目で永瀬王座に勝って5勝0敗とした時点で、1敗以内の挑戦権圏内にいるのが2勝1敗の豊島九段のみとなっていた(他のメンバーは2敗以上)。1敗とは言え2勝しかしていない豊島九段はリーグ戦残り3局を全勝しなければ、羽生九段と同率となり、プレーオフに持ち込めない。さらにそこで勝たないと、挑戦権を獲得できないという状況。豊島九段にとっては、4連勝が必要。羽生九段からすると最終局とプレーオフに連敗しなければ良い。
単純に勝ち負けが半々(50%9だとすると、豊島九段4連勝の確率は6.25%。つまり、羽生九段挑戦権獲得の確率は93.75%。しかも、豊島九段の残る対戦相手が、新進気鋭の服部五段と渡辺名人。羽生九段の直接対局までに豊島九段が星を落とす可能性は低くない。できれば、最終局にドキドキしたくない。(詳しくは「羽生九段5連勝とし挑戦権目前」(11月1日記事))
しかし、服部五段、渡辺名人を連破してしまい、直接対局に持ち込まれてしまった。……羽生九段は連敗しなければよく、まだ優位な立場であるが、両者の直近の対戦成績は羽生九段の1勝9敗。豊島九段が連勝して“しまう”確率は81%!……
まあ、羽生九段も復調してきているので、勝つ可能性は40%ぐらいはあるはず。連敗する可能性は36%なので大丈夫?……でも、1局目(リーグ最終戦)で負けると……駄目かも……
将棋は、角換わり相掛かり系?で、互いに早めに桂を3七(7三)に跳ねる好戦的な構え。(棋譜は速報ページをご参照ください)さらに、羽生九段は居玉のまま、3筋の歩を突き捨てて桂を4五に跳ね、後手銀を4四に誘い、2筋の飛先歩を交換するという積極策。対する豊島九段も3筋の突き捨てを逆用し3六に歩を突き出し飛車を3筋に呼び込んだ。そして、その飛車の頭(3五の地点)に銀をグイと出た。3五には後手の駒の利きがないので、タダ。只捨ての銀!
当然取りたいが、取ると△2六角の王手飛車取りがある(居玉が祟ったか?)。この王手飛車には▲3七飛と受ければ、飛車角交換で済みそうだが(先に銀をもらっているので。先手の大きな駒得)、△3六歩の厳しい追撃がある。この一連の銀捨てから飛頭の歩打ちの筋は、『将棋世界』の「初段コース」問題に出てきそうだ。
△3六歩に対して取ることも逃げることも出来ない(玉が取られてしまう)ので、飛車が助からない。となると、銀と飛車の交換になってしまい、先手が大損となってしまう……はずだが、そうはならないようだ。
△3六歩に対しては▲1七角の反撃があり、以下△3七歩成には▲2六角が絶好となる。後手も△3八とと銀を取る手があるが、ここで▲5三角成と王手で角が成れるのがあまりにも大きく、△5一玉に▲3八金と手を戻せば、飛車角交換打にはなるが「銀得+角成(馬)」の利があるので、先手が大優勢。
▲3五同飛にほぼノータイム(133秒)で△2六角と打った豊島九段は、▲3七飛に3062秒(約51分、持ち時間は4時間)の長考に沈み、△3六歩と打たず△4四歩と辛抱。しかし、▲3三歩から桂交換に持ち込まれた後、▲5八玉と玉飛の金縛り状態を解消され、結局ほぼ銀損状態が残り、先手の大優勢となった。
大技直前の△3六歩に1861秒(約31分)、大技勝負手の△3五銀に1567秒(約26分)を掛けていたのに、大ポカに近い読み落とし……。そう言えば、昨年の王位戦▲藤井王位ー△豊島竜王戦(称号は当時)で、銀損を甘んじる大辛抱……やはり直前に読み落とし……思い出す。読みを深く掘り下げる豊島九段ならではの落手か……
そこから、豊島九段も懸命に頑張り、羽生玉の両側に飛車と龍で挟撃。羽生九段にとっては嫌な筋がちらつき、それに注意を払わなければならないので、迂闊に後手玉に攻め込めない。2六に銀、3八に角と攻めに使いたい駒を投入。歩や桂を駆使して攻めを進めるしかない。評価値上は大優勢であるが、豊島九段を相手に勝ち切るのは容易ではない。評価値で1000点、いや2000点プラスでも、1手で逆転してしまうのが将棋。
大優勢を自覚してから、おそらく6時間……ようやく勝利。この6時間、長かった……。棋譜速報はかなり頻繁に更新してくれるが、それでもリアルタイムではない。何度クリックしたことか!
七番勝負は年が明けてから。藤井五冠相手に七局で4勝する画が見えないが、好勝負を期待したい。
なお、この羽生九段が挑戦権獲得した記事、『日刊スポーツ』の「羽生善治九段と藤井聡太王将との頂上対決実現 豊島九段を破り竜王戦以来のタイトル戦」は、勝負の背景や状況が詳細で的確に記されていると思う。
その記事の中で……
『藤井が18年2月の朝日杯で15歳6カ月の史上最年少での公式戦初優勝を果たした時、準決勝の相手は羽生だった。終局後の会見で、「藤井さんは将来必ずタイトル戦に出てくる方。ただ、私がそこにいるかは分かりませんが。そこが問題です」と語った。』(引用)
“そこにいなかった”羽生九段であるが、この両者の七番勝負が実現して、本当に良かった。
1渡辺名人 1勝5敗 ●近藤 ●服部 ○永瀬 ●羽生 ●豊島 ●糸谷
2永瀬王座 3勝3敗 ○糸谷 ●渡辺 ○豊島 ●羽生 ○近藤 ●服部 残留
3羽生九段 6勝0敗 ○服部 ○糸谷 ○近藤 ○渡辺 ○永瀬 ○豊島 挑戦
4近藤七段 3勝3敗 ○渡辺 ●豊島 ●羽生 ○服部 ●永瀬 ○糸谷 残留
5豊島九段 4勝2敗 ○近藤 ●永瀬 ○糸谷 ○渡辺 ○服部 ●羽生 残留
5糸谷八段 2勝4敗 ●永瀬 ●羽生 ●豊島 ○服部 ○渡辺 ●近藤
5服部五段 2勝4敗 ●羽生 ○渡辺 ●近藤 ●糸谷 ●豊島 ○永瀬
5戦目で永瀬王座に勝って5勝0敗とした時点で、1敗以内の挑戦権圏内にいるのが2勝1敗の豊島九段のみとなっていた(他のメンバーは2敗以上)。1敗とは言え2勝しかしていない豊島九段はリーグ戦残り3局を全勝しなければ、羽生九段と同率となり、プレーオフに持ち込めない。さらにそこで勝たないと、挑戦権を獲得できないという状況。豊島九段にとっては、4連勝が必要。羽生九段からすると最終局とプレーオフに連敗しなければ良い。
単純に勝ち負けが半々(50%9だとすると、豊島九段4連勝の確率は6.25%。つまり、羽生九段挑戦権獲得の確率は93.75%。しかも、豊島九段の残る対戦相手が、新進気鋭の服部五段と渡辺名人。羽生九段の直接対局までに豊島九段が星を落とす可能性は低くない。できれば、最終局にドキドキしたくない。(詳しくは「羽生九段5連勝とし挑戦権目前」(11月1日記事))
しかし、服部五段、渡辺名人を連破してしまい、直接対局に持ち込まれてしまった。……羽生九段は連敗しなければよく、まだ優位な立場であるが、両者の直近の対戦成績は羽生九段の1勝9敗。豊島九段が連勝して“しまう”確率は81%!……
まあ、羽生九段も復調してきているので、勝つ可能性は40%ぐらいはあるはず。連敗する可能性は36%なので大丈夫?……でも、1局目(リーグ最終戦)で負けると……駄目かも……
将棋は、角換わり相掛かり系?で、互いに早めに桂を3七(7三)に跳ねる好戦的な構え。(棋譜は速報ページをご参照ください)さらに、羽生九段は居玉のまま、3筋の歩を突き捨てて桂を4五に跳ね、後手銀を4四に誘い、2筋の飛先歩を交換するという積極策。対する豊島九段も3筋の突き捨てを逆用し3六に歩を突き出し飛車を3筋に呼び込んだ。そして、その飛車の頭(3五の地点)に銀をグイと出た。3五には後手の駒の利きがないので、タダ。只捨ての銀!
当然取りたいが、取ると△2六角の王手飛車取りがある(居玉が祟ったか?)。この王手飛車には▲3七飛と受ければ、飛車角交換で済みそうだが(先に銀をもらっているので。先手の大きな駒得)、△3六歩の厳しい追撃がある。この一連の銀捨てから飛頭の歩打ちの筋は、『将棋世界』の「初段コース」問題に出てきそうだ。
△3六歩に対して取ることも逃げることも出来ない(玉が取られてしまう)ので、飛車が助からない。となると、銀と飛車の交換になってしまい、先手が大損となってしまう……はずだが、そうはならないようだ。
△3六歩に対しては▲1七角の反撃があり、以下△3七歩成には▲2六角が絶好となる。後手も△3八とと銀を取る手があるが、ここで▲5三角成と王手で角が成れるのがあまりにも大きく、△5一玉に▲3八金と手を戻せば、飛車角交換打にはなるが「銀得+角成(馬)」の利があるので、先手が大優勢。
▲3五同飛にほぼノータイム(133秒)で△2六角と打った豊島九段は、▲3七飛に3062秒(約51分、持ち時間は4時間)の長考に沈み、△3六歩と打たず△4四歩と辛抱。しかし、▲3三歩から桂交換に持ち込まれた後、▲5八玉と玉飛の金縛り状態を解消され、結局ほぼ銀損状態が残り、先手の大優勢となった。
大技直前の△3六歩に1861秒(約31分)、大技勝負手の△3五銀に1567秒(約26分)を掛けていたのに、大ポカに近い読み落とし……。そう言えば、昨年の王位戦▲藤井王位ー△豊島竜王戦(称号は当時)で、銀損を甘んじる大辛抱……やはり直前に読み落とし……思い出す。読みを深く掘り下げる豊島九段ならではの落手か……
そこから、豊島九段も懸命に頑張り、羽生玉の両側に飛車と龍で挟撃。羽生九段にとっては嫌な筋がちらつき、それに注意を払わなければならないので、迂闊に後手玉に攻め込めない。2六に銀、3八に角と攻めに使いたい駒を投入。歩や桂を駆使して攻めを進めるしかない。評価値上は大優勢であるが、豊島九段を相手に勝ち切るのは容易ではない。評価値で1000点、いや2000点プラスでも、1手で逆転してしまうのが将棋。
大優勢を自覚してから、おそらく6時間……ようやく勝利。この6時間、長かった……。棋譜速報はかなり頻繁に更新してくれるが、それでもリアルタイムではない。何度クリックしたことか!
七番勝負は年が明けてから。藤井五冠相手に七局で4勝する画が見えないが、好勝負を期待したい。
なお、この羽生九段が挑戦権獲得した記事、『日刊スポーツ』の「羽生善治九段と藤井聡太王将との頂上対決実現 豊島九段を破り竜王戦以来のタイトル戦」は、勝負の背景や状況が詳細で的確に記されていると思う。
その記事の中で……
『藤井が18年2月の朝日杯で15歳6カ月の史上最年少での公式戦初優勝を果たした時、準決勝の相手は羽生だった。終局後の会見で、「藤井さんは将来必ずタイトル戦に出てくる方。ただ、私がそこにいるかは分かりませんが。そこが問題です」と語った。』(引用)
“そこにいなかった”羽生九段であるが、この両者の七番勝負が実現して、本当に良かった。
1渡辺名人 1勝5敗 ●近藤 ●服部 ○永瀬 ●羽生 ●豊島 ●糸谷
2永瀬王座 3勝3敗 ○糸谷 ●渡辺 ○豊島 ●羽生 ○近藤 ●服部 残留
3羽生九段 6勝0敗 ○服部 ○糸谷 ○近藤 ○渡辺 ○永瀬 ○豊島 挑戦
4近藤七段 3勝3敗 ○渡辺 ●豊島 ●羽生 ○服部 ●永瀬 ○糸谷 残留
5豊島九段 4勝2敗 ○近藤 ●永瀬 ○糸谷 ○渡辺 ○服部 ●羽生 残留
5糸谷八段 2勝4敗 ●永瀬 ●羽生 ●豊島 ○服部 ○渡辺 ●近藤
5服部五段 2勝4敗 ●羽生 ○渡辺 ●近藤 ●糸谷 ●豊島 ○永瀬
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