2023年棋王戦第4局① 渡辺棋王ー藤井五冠 (2022年度)の続きです。
渡辺棋王の秘手▲8三桂に対して藤井五冠は△6五歩。
渡辺棋王の研究は、この前に△8六歩▲同歩と突き捨てを入れられていた局面で▲8三桂を掘り下げていたとのこと。突き捨ては後手飛車が当たりになった時に8六に走る手や△8八歩と先手陣を乱す下準備だが、反面、先手に歩を与えることとなり、一長一短(人間は歩の突き捨ては“入れておきたい”という感覚だが、AIは歩の価値を重視し、“相手に歩を与えない”ようにすることが多い気がする)。
渡辺王将が何を本戦に研究していたのかは不明だが、△6五歩は意外だったよう。でも、打たれてみると、意外と難しいと感じたようだ。
普通は▲6五同桂だが、以下△9三香(△8三飛だと▲5三桂左成の飛車素抜きの筋がある)▲5三桂右成△同角(△同角以外だと▲4五歩)▲同桂成△同銀で、角と桂桂の2枚替えと打った8三の桂が空振り気味で「なんとなく成算がない」と。
しかし、ここで▲8四角と打つ手があったように思う。単純な香取りだが、▲6二角成△同銀▲7二金もあるので、意外に受けが難しい。
実戦は、▲9一桂成△同飛に▲6五角!。
▲6五角は勝負手だろう。7七での銀桂交換、9一での桂香交換、更に角銀交換で、香と角の交換となったが、△6五同銀▲同桂で2枚桂が5三を睨む。駒損を代償にして5三地点の攻撃に懸けた。
対する藤井五冠は△4一桂と受け、▲6四銀の増援に一転△3一玉と身をひるがえす。こうしておけば、5三に攻め込まれても手抜きもできるし、△同※と応じて▲同※成とされた時も王手にならないので、反撃に移れる。
なので、渡辺棋王も踏み込みにくく、更に▲5六香と駒を足すが、3一に玉を引かれているので、今一つ4枚の攻め駒が重複し空回りしているように感じる。
やはり、▲5六香では、どの駒から5三になるかは非常に難しいが、直ちに5三に攻め込む方が良かったようだ(少なくとも、中継の解説でははっきり結論が出なかった)
本譜は▲5六香以下、△5四歩▲同香に藤井五冠は△5二歩と歩を下げる手筋で受ける。
ただし、△3一玉を活かして△4七銀(▲同金なら△3八角)と強襲する方が良かったようだ。△5四歩▲同香と歩が切れたので5筋に歩が打てるし、角を3八に打った時、5六の香が5四に移動しているので、角筋が9二まで利いている。
第8図以下、▲7三桂成△同金▲同銀成と進む。先手の攻めはソッポに行く感が強いが、後手の△4七銀からの攻めは強力だが、手抜きで▲5二香成が早そうだ。(先の△5二歩で歩切れになったのが大きく、△7七歩がなくなったのも大きい)。そこで、後手も受けに回る。
この△5三歩が先手の攻めの要の4五の桂を解消する好手。
△5三歩以下▲同桂不成△同桂▲同香成△同角▲6三成桂△4四角▲5四金(打っておかないと△7四角の両取りがある)△3三角▲4五桂。
これで後手の角が詰んでいるが、ここで△4二桂が強い受け。(きっと、第9図の△5三歩~△4二角は一目なのだろう)
△4二桂以下、▲3三桂成△同銀▲2四歩△同歩▲2三歩△8六歩▲同歩△7四桂▲6四角△8一飛▲5二成銀△5一香▲同成銀△同飛▲5三金△4四角(第12図)第11図がないのは気にしないでください
上記の手順、先手の攻めが続くか、後手が受けきるかの攻防が続く。
図の△4四角の評判が良い(ただ、中継の評価値は藤井有利から互角になったような気が…)
私にはよくわからないので、【棋譜解説で記された感想戦の様子を引用】
渡辺は「(本譜の)角成りはさすがに軟弱だったかな。第一感は香(☗5六香)だったんだけど、☖6一飛のときがわからなかった。香で飛車は注文通りだからなあ」と話した。一例として☗5六香☖6一飛☗4五歩☖6四飛☗4四歩☖同飛で自信が持てなかったが、歩が足りて☗4五歩☖同飛☗4六歩☖同飛☗4七歩の連打が利く。改良案は☗5六香☖6一飛☗4五歩☖6六桂☗4四歩☖7八桂成☗同玉☖6四飛☗4三歩成☖8七角☗6八玉☖6六歩で「なるほど、これは手がないか。負けっぽいですね」と渡辺。藤井は「こちらもこれはできるかどうか」。後手玉も危ない形だが、際どく届かないようだ。【引用・終】
渡辺棋王は「(本譜の)角成りはさすがに軟弱だったか」と述べたが、評価値的には最善だった記憶が……攻めの要の金を取らせても7四の桂を抜くのも大きいらしい。
……とにかく、難解。
▲7三角成以下、△5三飛▲7四馬△5五桂▲5六銀△2三金と進み、本譜は▲8八玉と攻められたとき7七に金気を打たれる手を避けたが、▲4五歩(変化図2)があったかもしれない。
棋譜中継では、「一見すると☗4五歩で角を取られるのでまずいようだが、☖6七銀☗同銀☖同桂成☗同金☖6六角の強襲筋がある。以下☗同金は☖7七銀でいきなり必至。」という解説だったが、▲4五歩△6七銀には▲6八香で耐えているように思う。(△6七銀が最善手かどうかは不明)
本譜は▲8八玉に△5四桂。
10図で渡辺棋王の5四の金を攻めるために打った桂(一応、守りの手)が、勇躍、5四に跳ね先手陣を攻める!
渡辺棋王は、この手を見て負けを覚悟した。取りあえず▲4五桂と打ち、△5一飛に▲6四馬ともたれて指したものの、藤井五冠の怒涛の攻めに抗することはできなかった。
感想戦で……
【以下、棋譜中継より引用】
藤井が☖6六桂を示すと、渡辺は「わからないですけど、こっちはこれ(☗5三桂成か☗5三桂不成か)も指運です」。
一直線の☖6六桂☗5三桂不成☖6七桂成(変化図3)が並べられて「あー、これ寄るんだ」と渡辺、「ちょっとわからなかったです」と藤井。しかし、以下☗同金☖7八銀(変化図4)となると先手玉は受けにくい。藤井は「意外と受けづらい可能性はあるかな、と」。渡辺は「思わず我慢できずに(☗4五桂)打っちゃったんですけど。寄ったら負けの精神で。寄るんだ」と意外な様子だった【引用・終】
10図の△5四桂に▲4五桂と打った時、飛車を逃げずに△6六桂と跳ねればはっきり勝ちだったというのだ。以下▲5三桂不成(変化図3)に……
△7八桂成と銀を取らずに△6七桂成(変化図4)と捨てるのが妙手!
▲6七同金に△7八銀(変化図5)で受けなし。
渡辺棋王の秘手▲8三桂はやや空振りに終わった者の、そこから渡辺棋王も離されずについていくぎりぎりの攻防が続いた。
しかし、最後に力尽きた……王将戦もこんな感じ……
藤井くん、六冠、おめでとう!
渡辺棋王の秘手▲8三桂に対して藤井五冠は△6五歩。
渡辺棋王の研究は、この前に△8六歩▲同歩と突き捨てを入れられていた局面で▲8三桂を掘り下げていたとのこと。突き捨ては後手飛車が当たりになった時に8六に走る手や△8八歩と先手陣を乱す下準備だが、反面、先手に歩を与えることとなり、一長一短(人間は歩の突き捨ては“入れておきたい”という感覚だが、AIは歩の価値を重視し、“相手に歩を与えない”ようにすることが多い気がする)。
渡辺王将が何を本戦に研究していたのかは不明だが、△6五歩は意外だったよう。でも、打たれてみると、意外と難しいと感じたようだ。
普通は▲6五同桂だが、以下△9三香(△8三飛だと▲5三桂左成の飛車素抜きの筋がある)▲5三桂右成△同角(△同角以外だと▲4五歩)▲同桂成△同銀で、角と桂桂の2枚替えと打った8三の桂が空振り気味で「なんとなく成算がない」と。
しかし、ここで▲8四角と打つ手があったように思う。単純な香取りだが、▲6二角成△同銀▲7二金もあるので、意外に受けが難しい。
実戦は、▲9一桂成△同飛に▲6五角!。
▲6五角は勝負手だろう。7七での銀桂交換、9一での桂香交換、更に角銀交換で、香と角の交換となったが、△6五同銀▲同桂で2枚桂が5三を睨む。駒損を代償にして5三地点の攻撃に懸けた。
対する藤井五冠は△4一桂と受け、▲6四銀の増援に一転△3一玉と身をひるがえす。こうしておけば、5三に攻め込まれても手抜きもできるし、△同※と応じて▲同※成とされた時も王手にならないので、反撃に移れる。
なので、渡辺棋王も踏み込みにくく、更に▲5六香と駒を足すが、3一に玉を引かれているので、今一つ4枚の攻め駒が重複し空回りしているように感じる。
やはり、▲5六香では、どの駒から5三になるかは非常に難しいが、直ちに5三に攻め込む方が良かったようだ(少なくとも、中継の解説でははっきり結論が出なかった)
本譜は▲5六香以下、△5四歩▲同香に藤井五冠は△5二歩と歩を下げる手筋で受ける。
ただし、△3一玉を活かして△4七銀(▲同金なら△3八角)と強襲する方が良かったようだ。△5四歩▲同香と歩が切れたので5筋に歩が打てるし、角を3八に打った時、5六の香が5四に移動しているので、角筋が9二まで利いている。
第8図以下、▲7三桂成△同金▲同銀成と進む。先手の攻めはソッポに行く感が強いが、後手の△4七銀からの攻めは強力だが、手抜きで▲5二香成が早そうだ。(先の△5二歩で歩切れになったのが大きく、△7七歩がなくなったのも大きい)。そこで、後手も受けに回る。
この△5三歩が先手の攻めの要の4五の桂を解消する好手。
△5三歩以下▲同桂不成△同桂▲同香成△同角▲6三成桂△4四角▲5四金(打っておかないと△7四角の両取りがある)△3三角▲4五桂。
これで後手の角が詰んでいるが、ここで△4二桂が強い受け。(きっと、第9図の△5三歩~△4二角は一目なのだろう)
△4二桂以下、▲3三桂成△同銀▲2四歩△同歩▲2三歩△8六歩▲同歩△7四桂▲6四角△8一飛▲5二成銀△5一香▲同成銀△同飛▲5三金△4四角(第12図)第11図がないのは気にしないでください
上記の手順、先手の攻めが続くか、後手が受けきるかの攻防が続く。
図の△4四角の評判が良い(ただ、中継の評価値は藤井有利から互角になったような気が…)
私にはよくわからないので、【棋譜解説で記された感想戦の様子を引用】
渡辺は「(本譜の)角成りはさすがに軟弱だったかな。第一感は香(☗5六香)だったんだけど、☖6一飛のときがわからなかった。香で飛車は注文通りだからなあ」と話した。一例として☗5六香☖6一飛☗4五歩☖6四飛☗4四歩☖同飛で自信が持てなかったが、歩が足りて☗4五歩☖同飛☗4六歩☖同飛☗4七歩の連打が利く。改良案は☗5六香☖6一飛☗4五歩☖6六桂☗4四歩☖7八桂成☗同玉☖6四飛☗4三歩成☖8七角☗6八玉☖6六歩で「なるほど、これは手がないか。負けっぽいですね」と渡辺。藤井は「こちらもこれはできるかどうか」。後手玉も危ない形だが、際どく届かないようだ。【引用・終】
渡辺棋王は「(本譜の)角成りはさすがに軟弱だったか」と述べたが、評価値的には最善だった記憶が……攻めの要の金を取らせても7四の桂を抜くのも大きいらしい。
……とにかく、難解。
▲7三角成以下、△5三飛▲7四馬△5五桂▲5六銀△2三金と進み、本譜は▲8八玉と攻められたとき7七に金気を打たれる手を避けたが、▲4五歩(変化図2)があったかもしれない。
棋譜中継では、「一見すると☗4五歩で角を取られるのでまずいようだが、☖6七銀☗同銀☖同桂成☗同金☖6六角の強襲筋がある。以下☗同金は☖7七銀でいきなり必至。」という解説だったが、▲4五歩△6七銀には▲6八香で耐えているように思う。(△6七銀が最善手かどうかは不明)
本譜は▲8八玉に△5四桂。
10図で渡辺棋王の5四の金を攻めるために打った桂(一応、守りの手)が、勇躍、5四に跳ね先手陣を攻める!
渡辺棋王は、この手を見て負けを覚悟した。取りあえず▲4五桂と打ち、△5一飛に▲6四馬ともたれて指したものの、藤井五冠の怒涛の攻めに抗することはできなかった。
感想戦で……
【以下、棋譜中継より引用】
藤井が☖6六桂を示すと、渡辺は「わからないですけど、こっちはこれ(☗5三桂成か☗5三桂不成か)も指運です」。
一直線の☖6六桂☗5三桂不成☖6七桂成(変化図3)が並べられて「あー、これ寄るんだ」と渡辺、「ちょっとわからなかったです」と藤井。しかし、以下☗同金☖7八銀(変化図4)となると先手玉は受けにくい。藤井は「意外と受けづらい可能性はあるかな、と」。渡辺は「思わず我慢できずに(☗4五桂)打っちゃったんですけど。寄ったら負けの精神で。寄るんだ」と意外な様子だった【引用・終】
10図の△5四桂に▲4五桂と打った時、飛車を逃げずに△6六桂と跳ねればはっきり勝ちだったというのだ。以下▲5三桂不成(変化図3)に……
△7八桂成と銀を取らずに△6七桂成(変化図4)と捨てるのが妙手!
▲6七同金に△7八銀(変化図5)で受けなし。
渡辺棋王の秘手▲8三桂はやや空振りに終わった者の、そこから渡辺棋王も離されずについていくぎりぎりの攻防が続いた。
しかし、最後に力尽きた……王将戦もこんな感じ……
藤井くん、六冠、おめでとう!
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