けふひとを こふるこころは おおいがは ながるるみずに おとらざりけり
今日人を 恋ふる心は 大井河 流るる水に 劣らざりけり
よみ人知らず
今日あの人を恋い慕う心は、大井河を流れる水の激しさにも劣らないのであるよ。
巻第十一「恋歌一」に記載されていた墨滅歌で、詞書には「奥山の菅の根しのぎ降る雪下」とあります。「奥山の菅の根しのぎ降る雪」は 0551 の冒頭のフレーズ。「恋歌一」の最後に記され、墨滅にされていたということですね。「大井河」は「大堰川」とも書く京都嵐山を流れる川で、堰が設けられ流れが速いことで知られる川を指します。