なにはがた おふるたまもを かりそめの あまとぞわれは なりぬべらなる
難波潟 おふる玉藻を かりそめの あまとぞわれは なりぬべらなる
紀貫之
難波潟に生えている玉藻を刈ると、ほんの一時、私は海人になったような気持ちになることだ。
第三句の「かり」が「(玉藻を)刈り」と「仮(そめ)」の掛詞になっています。序詞と言ってしまって良いのかわかりませんが、冒頭二句が「刈り」を導き、同音で始まる「かりそめ」に繋げる技法ですね。なので、貫之が実際に藻を刈ったというより、難波潟を訪れた貫之がその広大な自然の風景に自分を投影した想像の歌ということのように思えます。