9/16(日)
168
魂と肉体の谷間に白い靄たちこめて知らずこれからの道(た)
169
引っ越しが3つ重なる退職期仕事の方が楽だと思う(ま)
9/17(月)
170
薬効は見える数値を残せども薬害は見えない心をむしばんでゆく(た)
171
友人の如(ごと)付き合うと言いつつもときには病と絶交したい(ま)
9/18(火)
172
好きな道好きな食べ物好きな色退院帰りの秋のドライブ(た)
173
真夜中にふと目が覚める時もあるトイレでもなく悩みでもなく(ま)
9/19(水)
174
通勤日残り数日に驚きぬ大学時代にワープとは夫の言(た)
9/20(木)
175
秋らしい晴天に洗濯物なびきけり憂いの湿り残さず乾け(た)
176
退職後の仕事は庭の草刈りとゴミ出し洗濯掃除に食事作り(ま)
168治療によって逆に苦しめられるという抗がん剤の副作用に対して、妻はいつも違和感を抱いていたようだ。加えて、病気と治療の行方が分からないもどかしさは、当然ながら精神的な負担だ。
再発卵巣癌は標準的治療としては化学療法以外に選択肢がなく、しかも明細胞腺癌は化学療法が効きにくいと言われる。その前提の中で、もちろんやってみなければ分からないにしても、体力と気力、どちらも限界まで治療を続けていかねばならないのか……という疑問は、通奏低音のように私たちの心のすみに響いている。常時そんなことをかんがえているわけではないのだが。
169、息子が妻の実家から隠居所へ、妻が姉の家から隠居所へ、母が施設へ、そして私の(中途)退職と、いろいろな動きが病気によって引き起こされてくる。
妻の病勢があまり良くない中で様々な準備が必要で、今から考えると、結構なストレスがこのあたり掛かっていたかもしれない。
当時は夢中で毎日をすごしていたけれど。
170,175は鬱々として晴れない気持ちを詠んだもの。抽象的な抗がん剤治療に対する違和感が素直に出ている。その上腫瘍マーカーは目安に過ぎないから一喜一憂しないように、と言われても、何を頼りに治療を続けていけばいいのか。そういった精神的な不安は、次第に治療と本人の気持ちとの間の乖離を生んでいく。
それが単に個人的な問題ではなく、構造的な問題だということに思い当たるためは、もっと先まで待たねばならないのだが。
172は、ドライブ好きの彼女らしい一首。好きだったのは
植田→遠野→湯本→渡辺町→植田という一時間弱の周回コース。
色はだから季節ごとに変わる山の緑のことだったろうか。
168
魂と肉体の谷間に白い靄たちこめて知らずこれからの道(た)
169
引っ越しが3つ重なる退職期仕事の方が楽だと思う(ま)
9/17(月)
170
薬効は見える数値を残せども薬害は見えない心をむしばんでゆく(た)
171
友人の如(ごと)付き合うと言いつつもときには病と絶交したい(ま)
9/18(火)
172
好きな道好きな食べ物好きな色退院帰りの秋のドライブ(た)
173
真夜中にふと目が覚める時もあるトイレでもなく悩みでもなく(ま)
9/19(水)
174
通勤日残り数日に驚きぬ大学時代にワープとは夫の言(た)
9/20(木)
175
秋らしい晴天に洗濯物なびきけり憂いの湿り残さず乾け(た)
176
退職後の仕事は庭の草刈りとゴミ出し洗濯掃除に食事作り(ま)
168治療によって逆に苦しめられるという抗がん剤の副作用に対して、妻はいつも違和感を抱いていたようだ。加えて、病気と治療の行方が分からないもどかしさは、当然ながら精神的な負担だ。
再発卵巣癌は標準的治療としては化学療法以外に選択肢がなく、しかも明細胞腺癌は化学療法が効きにくいと言われる。その前提の中で、もちろんやってみなければ分からないにしても、体力と気力、どちらも限界まで治療を続けていかねばならないのか……という疑問は、通奏低音のように私たちの心のすみに響いている。常時そんなことをかんがえているわけではないのだが。
169、息子が妻の実家から隠居所へ、妻が姉の家から隠居所へ、母が施設へ、そして私の(中途)退職と、いろいろな動きが病気によって引き起こされてくる。
妻の病勢があまり良くない中で様々な準備が必要で、今から考えると、結構なストレスがこのあたり掛かっていたかもしれない。
当時は夢中で毎日をすごしていたけれど。
170,175は鬱々として晴れない気持ちを詠んだもの。抽象的な抗がん剤治療に対する違和感が素直に出ている。その上腫瘍マーカーは目安に過ぎないから一喜一憂しないように、と言われても、何を頼りに治療を続けていけばいいのか。そういった精神的な不安は、次第に治療と本人の気持ちとの間の乖離を生んでいく。
それが単に個人的な問題ではなく、構造的な問題だということに思い当たるためは、もっと先まで待たねばならないのだが。
172は、ドライブ好きの彼女らしい一首。好きだったのは
植田→遠野→湯本→渡辺町→植田という一時間弱の周回コース。
色はだから季節ごとに変わる山の緑のことだったろうか。