中国の三中全会というのは、5年に1度開かれる共産党大会の間に通常7回開かれる中央委員会全体会議の3番目の会議です。歴史的に見て、重要な経済政策が発表されたり、中国経済に大きなインパクトを与える決定がなされたりしました。
例えば、1978年に開かれた第11期三中全会では、中国が国策を改革開放へとかじを切らせるきっかけをつくりました。また、1993年に開かれた第14期三中全会では、社会主義市場経済体制の確立を打ち出しました。改革開放と市場経済が提起、実行されなければ、今の中国は全く別の国のままでしたでしょうから、三中全会が果たしてきた歴史的役割がうかがえるでしょう。
そんな三中全会ですが、第20期における開催が遅れてきました。それも、単なる遅れではなく、「異例の遅れ」です。三中全会というのは歴史的に、党大会が行われた翌年の秋に開催されるのが慣例だからです。過去30年の開催時期を振り返ってみると、第14期が1993年11月、第15期が1998年10月、第16期が2003年10月、第17期が2008年10月、第18期が2013年11月です。前回の第19期は2018年2月ということで、通常よりも半年以上早かったですが、それでも党大会の翌年という慣例通りに開催されています。
そんな三中全会が開催されず、2023年は過ぎ、国内外の市場関係者は中国経済への不信を強めていきました。「何かやましいことがあるから開催できないのではないか?」「景気回復が予想以上に遅れているのではないか?」「経済政策を巡って党・政府内でいろいろもめているのではないか?」「共産党指導部内で不協和音が生じているのではないか?」といった疑問が投げかけられるようになりました。
だからこそ、異例の遅れを見せてきた三中全会が、2024年に開催されるのか、どのタイミングなのかに注目が集まっていたのです。
中国の最高意思決定機関である中央政治局(委員は常務委員7名を含む24人)が4月30日に会議を開き、今年7月に第20期三中全会を開催する決定を下しました。これによって、遅れていた三中全会ですが、無事開催時期が決まり、中国経済の行方を懸念してきた市場関係者も、胸をなで下ろしたというところでしょう。 先延ばしにされてきた三中全会の日程が発表されたのは中国経済にとっては朗報ですが・・
人口統計を筆頭に、国家発表の数値に信頼を欠き出した中国指導部の発表を世界がどうとらえるか分かりません。
それに先立ち、中国国家統計局が4月30日に発表した4月のPMI(購買担当者景気指数)は、製造業が50.4、サービス業が51.2で、3月の50.8、53.0と比べると拡大ペースが鈍化しています。政治局会議は、1兆元(約20兆円)の超長期国債を一刻も早く発行し、有効活用するなどして、積極的な財政政策を含めたマクロ政策で景気を下支えすべく躍起になっているように見受けられますが、対ロシア制裁の対象となる金融機関、国内不動産のバブル崩壊、大量閉店の飲食業界、6月に1000万人の大学新卒を抱える中国経済、問題が山積みで依然として「迷走状態」が続いていくものと思われます。