monologue
夜明けに向けて
 



 毎年12月8日には太平洋戦争が勃発したので開戦関連番組が制作される。
今年もNHKが「その時歴史が動いた」で「山本五十六」を特集していた。
戦争の悲惨さ虚しさについて人々に考えさせ意味がある企画である。
1980年のこの日には、ジョン・レノンが射殺されたことで以来世界のファンが集会を開いて平和を祈る。
これも素晴らしいことだ。
人類は過去を振り返り反省し明日の糧として生きている。
失敗をしても繰り返さなければ前進できるのだ。

 そして1995年のこの日には、高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故が発生しているのだが
その失敗がどのように生かされたのかというと現在再開に向けての工事が進められているという。
世界が原子力発電からの脱却を優先している時代に驚かされる。時代錯誤も甚だしい。
ドイツのメルケル首相は原発政策についての新政府の対応を迫られていたが就任後、これまで通り原発からの脱却の方針を堅持することを表明した。

 液体ナトリウムは水に触れると爆発的に反応するので高速増殖炉を手がけた世界各国でもナトリウム漏れ火災事故が問題になった。
一般の原発では低速中性子を使用するのだが高速増殖炉では制御が難しい高速中性子を使うので
燃料溶融や暴走しやすいのだ。
高速増殖炉を稼働すると原爆の材料になる核兵器に適した超高純度のプルトニウムが大量に生成されるので
日本も核兵器を保有したいという勢力が推進していると陰で噂されてきた。
はたしてこのまま工事をつづけて再開することになるのだろうか。

 わたしは首の骨を折って回復期にリハビリ施設に移ったとき、毎日顔を合わせる老人がいた。
一見威厳があって怖そうで近寄りたがったが毎日毎日黙々と苦しいリハビリに取り組む姿勢に感心して声をかけた。
するとその方は長年電力会社の中枢で働いておられたという。
わたしはおそるおそる原子力発電について訊いてみた。すると「早く代替エネルギーに切り替えなければいけないのですがね」とおっしゃった。
意外だった。電力会社の人は原子力発電推進派と勝手に思いこんでいたのだった。
そうだったのだ。電力会社の幹部の方たちは事実をまっすぐ直視しておられるのだ。
わが国の原子力行政に問題があったのである。そんなことに初めて気が付いたのであった。
一日も早く原発を廃止してしまわないと地球が危ない。代替エネルギーがまだないという理由で絶滅しては
意味がない。温暖化防止、化石エネルギーの枯渇、様々な難問がつきつけられるがそれをクリアしてこそ未来がある。人類にはもちろんそのすべてをクリアする鍵が足元に与えられている。
その鍵に気づいた時わたしたちはもう一段階上がることができるのである。
12月8日は「もんじゅ事故記念日」として原発のことを真摯に考え核廃絶を祈りたい。
fumio



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